ダメンズ好きには堪らないセリフね (4~5ヶ月目)
「……おかえりー、その顔は上手くいったみたいね」
「ふへへっ…… ミッション達成だよね、そーくん?」
「は、はい……」
唇が触れるだけのキスだったはず、なのに晴海さんはさっきからデレデレとした顔をしたままだ。
「そーくん『晴海さんと美海がいないと生きていけない』だって…… うふふっ」
「そう…… 仕方ないわね、総一は」
止めて! あれはちょっと口が滑っただけで、本意ではなく…… 俺だってしっかりとした頼りがいがある男になりたいんだ! ……あれ? 美海までニヤニヤとだらしない顔になってるぞ? 何で?
「ダメンズ好きには堪らないセリフね……」
「ダメンズ好きなら死ぬまでに一度は言われたいセリフ、ナンバーワンよね」
「「ねーっ? うふふっ」」
シンクロ率百パーセントじゃないか…… はぁ、もう言ってしまった言葉は取り消せないか。
「さて…… 指令をクリアした二人には新たな指令を出さないとね」
「えっ!? まだやるのかよ……」
「当たり前よ! 赤ちゃんが産まれるまでにもっとラブラブなパパとママにならなきゃいけないのよ? そうなると今のままじゃ時間が足りないわ! じゃあ…… 家で毎日最低三回はキスしなきゃ駄目っていうのはどうかしら? あっ、戦闘中はノーカンよ? あと…… ついでに私にも三回ね?」
えぇっ!? ……さっきの一回ですらまだ思い出しただけでドキドキするのに! 美海には…… 大丈夫だけど。
「えぇーっ!? あ、あれを三回も!? ママ、幸せ過ぎて死んじゃうわぁ…… うふふっ」
「まっ、三回くらい余裕よね? 私達だって付き合い始めは毎日チュッチュチュッチュしてたし」
「いや、それは…… してたけどさ」
状況が違うだろ、美海と晴海さんだったら。
それに付き合い始めは美海が『キスっていいわね、またしたい』って何度もおねだりするから…… 俺もしたかったけど…… んんっ! 美海、いきなりキスするなよ! ビックリするだろ?
「ふふっ、まずは私に一回ね、ママ、頑張って」
「う、うん! ……そーくん?」
うっ! そんな上目遣いでキスして欲しそうな顔をしないで下さい! ……可愛いから。
でも美海の前でキスしなきゃいけないっていうのは…… 緊張するな。
「んー……」
晴海さんが待っている……
「…………」
美海にジーッと見られている……
「……手! 手洗いうがいをしなきゃ! 大切だからね! 手洗いうがい!」
「あっ…… 逃げた」
「あーん、もう! せっかく待ってたのにぃ」
「本当に…… 総一はダメダメなんだから」
「そこが可愛いところなんだけどね? うふふっ」
バイ菌で病気になって、赤ちゃんに何かあったら大変だ! だから…… べ、別に逃げたわけじゃないんだからね!
その後……
「んーっ」
「そーくん」
目が合うたびにキスを迫ってくる晴海さん。
嬉しいよ? 嬉しいけど……
「…………」
美海の視線がどうしても気になってしまうんだ。
だって、最初に付き合っていたのは美海で、母娘とはいえ晴海さんは次なわけで…… 俺が悪いんだけどね!
「はぁっ…… 孕ませといてキスぐらいで、情けない……」
聞こえてるよ!? その通りだけど、いざ『恋人』の晴海さんに、ということを意識すると…… 恥ずかしくて。
「まあ、総一にそんな度胸があったらダメンズになんてならなかったんだけどね、仕方ないわね……」
「美海…… 許してくれるのか?」
「今夜は…… お仕置きよ」
ひっ、ひぃぃぃーっ!!
そして、夜の海戦中…… 巨大戦艦によるお仕置きという名の圧倒的火力による蹂躙。
隣では揚陸艦が控え、ヘロヘロになった潜水艦を癒す……
「んっ…… ちゅっ」
戦闘中のキスはチュウチュウ出来るのに、何で普通の時は出来ないんだー!
「んっ、総一、つまらないわよ…… お仕置きね」
なんで! ああもう! 白旗! 白旗を掲げてるから! 攻撃の手を止めて!
「ダーメ、ふふっ、見てよママ、この情けない顔…… 可愛いでしょ?」
「やぁん、可愛いけど、かわいそうよ…… ちゅっ」
これがアメとムチってやつかぁ…… また白旗を掲げちゃうっ!!
「ふふっ、大好きよ、総一」
「私も大好き、そーくん」
は、はひぃ…… おりぇも、らいしゅき、れすぅ……
◇
妊娠五ヶ月目になり、病院に定期検診に行った帰りに手を繋いで歩いていると、お腹の子供の性別が分かったらしく、晴海さんが笑顔で話しかけてきた。
「そーくん、男の子だって! うふふっ、名前を考えないとね」
「本当ですか!? ……名前かぁ、どうしましょうね」
「美海にも考えてもらわなきゃ! そーくんとの大切な赤ちゃんだもん」
お腹に手を当てながら幸せそうに微笑む晴海さん。
お腹も日に日に大きくなって、服を着ていてもぽっこりと目立つようになってきた。
「それと…… 激しくなかったら戦闘してもいいんだって、うふふっ、どうしよっか? そーくん」
戦闘…… ちょっと心配になるが、晴海さんがしたいならぜひ手合わせしようかな。
「美海ばっかりズルいもん、私だって戦闘を我慢してるのに」
そう言って頬を膨らませる晴海さんを見て、可愛いと思いながらも、そんなに戦闘狂だったか? とも思う。
……間近で俺と美海の戦闘を見ていたら戦いたくもなるか、晴海さんには攻撃禁止だったし。
「ははっ、美海と相談しなきゃ、ですね」
「うん! うふふっ…… 男の子かぁー、どんなダメンズになるのかな?」
「いや、ダメンズとは限らないじゃないですか!」
「でも、そーくんの子よ? きっと立派なダメンズになるわ、うふふっ」
立派なダメンズって聞いたことないですよ…… でも、人様に迷惑をかけるようなダメンズにはなって欲しくはないなぁ。
「……迷惑ダメンズにはしないわ、絶対、私のような目に合う子がいたら可哀想だもん」
「そうですね、でも…… それがなければ俺は晴海さんと美海に出会えなかったんですよね」
「そうなのよね…… もし美海がいなければこの子だって授からなかった訳だし…… ダメンズ道は難しいわね」
晴海さん、そんな道はないですよ。
そして家に帰り、手洗いうがい。
それが終わると決まって晴海さんは……
「んっ!」
唇を突きだし、指でチョンチョンと自分の唇を触りアピールしてくる。
今までは恥ずかしさでやんわりと断って逃げていたのだが、今日は何となくだけど、お腹の子供に『パパ、ママの事を嫌いなの?』って言われているような気がして…… 男の子って分かったからかな?
「晴海さん、大好きですよ」
だから安心してママのお腹で育ってね……
「んっ!? んんっ…… ぷはっ、そ、そーくん?」
「何ですか?」
「い、今…… んっ! もう一回!」
「分かりました……」
一回してしまえば恥ずかしさも軽減されて続けて二回もキスをしてしまった…… 美海にも見られてないし、いいよね?
「やったわ! 美海」
「ママ、ミッション達成まであと一回だよ?」
「み、美海!? いつからそこに…… むぐっ!」
「んんーっ、ちゅっ、うふっ、そーくん、大好き、うふふっ」
「おめでとう、二人とも」
少し強引に三回目のキスをした晴海さん。
俺達を見守った後、なぜか拍手をする美海。
そしてこれがきっかけで、三人の間で毎日キスをするのが当たり前になりつつあった。
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