見事命中しちゃったね? (2ヶ月目)

「えっ……」


「何となーく身体が怠いなぁと思って、この感じは…… って、病院行ったらデキてたの、うふふっ」


 うふふっ、じゃないですよ! ……えっ? デキちゃったって…… 妊娠ですよね!? ……心当たりがありすぎて困る!!


 だって『大丈夫だから』って、毎回、母なる海に魚雷を発射して……


「見事命中しちゃったね? ……うふふっ、でも大丈夫よ? 責任取れなんて言わないから」


「で、でも……」


「責任取るなら美海の時にとっておいてあげて? 大丈夫、私一人でもちゃんと立派に育てるから、美海もちゃんと育ったでしょ? 私に任せておいて!」


 そんな…… あっけらかんと言われると、俺もどう反応していいのか…… 


 でも今は分からないがいずれ美海に妊娠していることはバレてしまう、そうなれば父親は誰だと言う話になるはず…… 


「大丈夫、大丈夫! 父親は分からないって言っておくから…… それよりもそーくんと対戦出来なくなっちゃったね…… 残念、あっ、模擬戦くらいなら出来るかな? うふふっ」


 どうしてそんなに明るく振る舞ってるんだよ…… 妊娠だぞ? しかも…… 一人で育てるって……


 俺はどうすれば…… 美海と別れたくないが、俺の責任だし……  ああ! どうすればいいんだぁぁぁー!!


「ママー、ご飯まだー? って、総一、来てたの? 声を掛けてくれれば良かったのに」


 み、美海!? ……い、今の会話聞かれてないよな? いきなり現れたからビックリしたぁ。


 俺の彼女で晴海さんの娘の美海、黒髪を後ろで束ねポニーテールにし、眼鏡をかけた、身長高めな一見クールな印象の女の子。

 ただ顔は少し童顔で、なのに胸部と臀部の装甲は厚め、ちなみに晴海さんと美海はそっくりで、美海が眼鏡を取り、髪を肩までの長さにして、胸部と臀部の装甲を更に厚くして色気を足せば、晴海さんと双子と言われても不思議ではないくらいそっくりだ。


 そんな彼女の美海が俺達が二人でいるのを不思議そうな顔で見ている。


「二人で何を話して ……って、ママ? 何だかとても機嫌が良さそうだけど」


 確かに晴海さんはずっとニコニコしているが、今はそれどころじゃない状況なんだ、美海…… お願いだからそっとしといてあげ……


「美海、ママ…… 実は赤ちゃんデキちゃったのー! うふふっ」


 は、晴海さぁぁぁぁん!! すぐ言うー! すぐ言っちゃったよ!! えっ、どうすんの? 


「へぇー! 良かったねママ、産むんでしょ?」


「うん、父親は分からないけど、ちゃんと産んでママが立派に育てるわ、美海にもちょっと協力してもらうかもしれないけど」


 それもすぐ言うー!! えっ、本当に分からないで通すつもりなんですか?


「あははっ、父親が分からないって、一人しかいないじゃん、ねっ、総一?」


 バ、バレてる!! 晴海さん、バレてますよー!


「えっ、あっ、うっ……」


「あははっ、総一狼狽えてる…… でも良かったじゃんママ、ずっともう一人産みたそうにしてたもんね?」


 ……ずっと?


「私達の海戦を覗いては、一人で水遊びして…… 羨ましそうにしてたもんね」


「み、美海、い、いつから気付いてたの?」


「んー? 初めて総一と対戦した時からかなぁ? それから家で対戦する時は必ず覗いてたもんね? ママ」


「いやぁーん、恥ずかしいわぁ……」


 えっ? えっ? 今日一日で捌ききれないくらいの情報量なんですけど、バレてた上に覗かれてた? 美海との初陣は…… 確か中○生の時。


「でもママだってまだ三十四歳だし、まだまだ対戦したい年頃だもん、仕方ないよ、私は気にしてなかったから」


 美海はそうでも俺は気にするから! じゃあ、あんなことやこんなこといっぱいあったけど…… みんなみんな見られてたってことかぁー!? 美海の巨大戦艦で蹂躙されている俺の姿を…… えっ、晴海さんて三十四歳なの!? 若っ、えっ、じゃあ十四歳で美海を……


「でも、そっかぁ、ママ、赤ちゃんデキたんだぁ…… ちゃんと責任取ってあげてね総一」


「えっ!?」


「ダ、ダメよ美海! それじゃああなた達が……」


「えっ? 私は絶対総一と別れないよ? だから、ママの事も私くらいちゃんと大切にしてあげてって話!」


 あ、頭が追い付かないんだが…… 美海と別れず、晴海さんとも責任を取るために……


「ママがもう一人産みたそうにしてたっていうのは知ってたけど、ママはきっとダメンズ好きだから、変な男に引っ掛からないか心配してたのよ、その点総一なら安心、ダメンズはダメンズでもエリートなダメンズだから」


 お、俺がダメンズ!? いや、そんなつもりは……


「情けないし」


 ……うっ。


「ナヨナヨしてるし」


 ……うっ!


「優柔不断だし」


 ……うぅっ!


「不器用だけど」


 ……うがぁぁっ!!


「ダメンズなりに一生懸命だし、私達に対して誠実だからエリートよ、そこら辺のあちこちだらしないダメンズとは大違い」


 そ、そんな風に言わなくても…… 俺だって頑張ってるんだ、ようやくスーパーでアルバイトから正社員になったのに…… って、晴海さんも凄く頷いてるけど、俺の事をそう思ってたの!?


「そう! 情けなくて頼りなくて、私がいないとこの人はダメになっちゃう! っていうのが良いのよねー」


「「ねーっ?」」


 母娘で意気投合してないでさぁ…… こっちのライフはゼロだよ? もう沈没してるから。


「さーて、これから忙しくなるねー? 弟かな? 妹かな?」


「うふふっ、美海はどっちがいい? 私は男の子が欲しいかなぁ?」


「うーん、どっちも?」


「えぇー!? じゃあまた対戦頑張らないといけないわね」


「その前にママがおばあちゃんになるかもね」


「孫…… この子は産まれてすぐ叔父か叔母って言われちゃうのー?」


 あのー、盛り上がってますけど俺は…… 二人と子供まで養っていく生活力はないんですが。


「大丈夫、私が稼ぐから、また株で儲ければいいだけ、貯金も贅沢しなければ子供四、五人分は育てられるくらいあるし」


 そうだ…… 美海は凄腕のトレーダーらしいからな。

 俺には株とかさっぱり分からないし、美海には『総一はコツコツ稼ぐのが一番』と言われ続けていたからな。

 コツコツ頑張って美海に買い与えられた安めのおしゃれな服装で毎日アルバイトに行ってたらすぐに正社員になれたし。

『見た目を綺麗にしておけば中身が多少アレでもバレない』とか失礼な事をついでに言われたけど。


 とにかく俺は彼女がいるにも関わらず、成り行きで彼女の母親を孕ませて、二人同時に大切にしなきゃいけなくなった。


 どうすればいいのか分からない、けど


「そーくんはそのままでいいからね」


「私達がずーっと面倒見てあげるから」


 そういうことらしい。


 皆さん、俺は俺なりに頑張ってるつもりなんだけど…… ダメンズだと思いますか?

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