余命が一年だと言われたので、どうせなら残りの寿命は好きに生きようと魔王に寝返ったら何故か魔王の娘に気に入られてしまった話
シャルねる
魔王との謁見
「良くぞここまで来たな。貴様が今代の勇者か」
ふてぶてしく玉座に座る男が俺を見下ろしながら、自分の牙を見せつけるように嗤い、そう言ってくる。
その牙を見て俺は思った。
そうか、今代の魔王は吸血鬼だったのか。
……まぁ、なんでもいい。俺のすべきことは一つだ。
「魔王様、貴重なお時間を取ってしまい申し訳ありません。この度は、この私めを貴方様の配下にして頂きたく、参上致しましたか」
そう思って、俺は片膝をつき、頭を下げながら、そう言った。
「………………は?」
すると、さっきまでの威厳が一気に消えうせて、思わず漏れ出てしまったと言ったような声が魔王から聞こえてきた。
「……貴様は、何を言っている? 勇者なのだろう? よもや、くだらない策で我を騙そうとしている訳ではあるまい?」
「魔王様、それは勘違いであります。そもそもの話、私は勇者などではありません」
「…………は?」
魔王から二度目の毒気を抜かれたような声が聞こえてきた。
「……勇者じゃ、無い?」
「はい」
「なのに、四天王達をボコボコにして、ここまで来たのか?」
「魔王様の配下になるために魔王様に会いたいと正直に言ったにもかかわらず、私の言葉を嘘だと決めつけ、あのもの達から襲いかかってきたのですよ。もちろん殺してはいません。これから同僚となる方たちですからね」
「……ちなみになんだが、勇者は貴様より強いのか?」
「いえ、弱いですね」
「………………何故貴様が勇者じゃ無いんだ?」
「それは分かりません。……あぁ、強いて理由をあげるとするならば、こうして魔王様の配下になろうとしているからではないでしょうか?」
「………………何故、貴様は我の配下になりに来たんだ?」
「私の余命が残り一年だからです」
「……ふ、ふむ。なるほど。そうか。つまり、貴様は我に助けてもらう為に、我の配下になりに来たのだな?」
魔王は突然自信満々にそんなことを言ってきた。
「? いえ、違いますけど」
「…………」
「普通に、残り一年しか時間が無いのなら、好きに生きたいと思って魔王様の配下になりに来たんです」
「…………」
不味い。魔王の反応が薄い。
これじゃ配下にして貰えない。
「自分で言うのもなんですが、私は強いです。それこそ、四天王の皆様を一方的にボコボコにできるくらいには、強いです!」
そう思った俺は、少しでも自分をアピールするために、そう言った。
「…………わ、分かった。認めよう。貴様が我の配下になることを認めよう。……ただし、監視はつけさせてもらうからな!」
「はい! もちろんでございます! これから魔王様のために身を粉にして働かせて頂きます!」
「う、うむ。……取り敢えず、後で部屋を用意させる。今は一度外に出ろ」
「分かりました!」
そう言われた俺は、直ぐに魔王に一礼をして、その場から立ち去った。
「なんなんだあいつはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
そして、俺が立ち去った魔王城にはそんな声が響き渡ったとか渡らなかったとか。
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