第8話

その日の授業が終わり、下校時間になった。


私、紗菜、佳菜子、舞衣の4人は自然と一緒に帰る流れになった。


4人ともチラリと園田さんの方を見る。


園田さんは朝からずっと機嫌が悪そうだったので、授業中も休み時間も給食の時も、私達は園田さんには話かけていなかった。


“でも帰りは誘った方が良いのかな?昨日までは紗菜達、園田さんと一緒に帰っていたんだもんね…。”


私がそう思っていると、紗菜達3人が「園田さんも帰ろう。」と言って園田さんを誘った。


園田さんは相変わらず不機嫌そうに無言で頷いた。


通学路を歩いている間も、私達4人が楽しく会話をしている中、園田さんだけは無言で歩いていた。


そして、十字路に到着した。


この十字路まで来ると、私と舞衣が真っ直ぐ直進、佳菜子が右、紗菜は左へと別れてそれぞれの家に帰宅する。


私はいつものように舞衣と一緒に真っ直ぐに歩くつもりでいたのだが、何故か舞衣は右の道に曲がって歩いてしまった。


舞衣だけはなく、いつもなら左に曲がる紗菜まで右に曲がって歩いていた。


そして園田さんも。


私以外の全員が十字路を右に曲がり、私はかなり混乱して思わず皆に付いていってしまった。


「あ、あれ? 舞衣真っ直ぐじゃなかったっけ???いつも私と真っ直ぐ進んでたよね???」


私がそう聞くと、舞衣は気まずそうに「…う、うん。」と返事をした。


私がなおも混乱しながら皆に付いて行くと、ある場所の前で皆の足が止まった。


そこはなんと、園田さんの家の前だった。

1階が店舗で2階に居住スペースがあるようだ。


私が言葉を失ってあると、園田さんはキツい口調でこう言った。


「今日は佳菜子ちゃん、舞衣ちゃん、紗菜ちゃんと約束してたの!家に遊びに来るって!」


「え、そうなんだ…。じゃあ、もし良かったら私も一緒にお邪魔しても良い?」


私は園田さんのキツい言い方に戸惑いながらも、また仲間外れにされるのが怖くてつい「私も一緒に…」と言ってしまった。


すると園田さんは怒りをあらわにし、


「はあっ!?何図々しい事を言ってるの!?私はこの3人と約束してたの!!その予定だったから、ママが4人分のケーキを焼いて待っててくれてるんだから来ないで!!佐々木さんの分は用意してないんだから!!」


と言った。


私はあまりのショックに頭が真っ白になった。


今までの人生で、ここまでキツい断られ方をした事が無く、今にも泣き出しそうだった。


「…そ、そうだったんだ。知らなくて、変な事を言っちゃってゴメンね。また今度………」


私が最後まで言い終わる前に、園田さんはさらに荒々しい口調でこう言った。


「今度って何よ!?家に来るつもりなの!?冗談じゃないわよ!!あなた、近所のあのボロくてダッサいパン屋の子なんでしょ? ママがお客さんから聞いたって言ってた。家のお店に入ってスパイでもするつもり!?あんたなんて絶っっ対に入れてやらないんだから!!2度とここに近付かないで!!!」


私は途中で意識を失いかけてしまった。


まさか園田さんにここまで嫌われていたなんて…。


私が放心状態のまま無言で立っていると、園田さんは3人に向かって「さ、入りましょう。」と言い、4人は園田さんの家のパン屋の中に入って行った…。


4人がお店の中に入り、中での会話が小さく聞こえてきた。


「あら、ひかりちゃん、お帰りなさい。待ってたわよ。さっき外にもう1人居なかった?」


「ママただいま。ああ、外に居た子は全然関係ないの。なんか勝手に付いてきちゃっただけ。追い返したから心配しないで。」


私は涙をこらえきれず、ボロボロと泣きながらその会話を聞いていた。


“私を邪魔者扱い…。元々紗菜達と仲が良かったのは私なのに。パン屋さんもウチの方がずっと前からあるのに…。スパイをしようなんて、これっぽっちも考えた事無かったのに…。”


そして、『あなた、近所のあのボロくてダッサいパン屋の子なんでしょ?』という暴言が頭の中で何度もリピートされる…。


私は静かに怒りが込み上げてきた。


そして放心状態のまま、小夜子さんのお店へと向かった。


“ダメだ。ダメだ、こんなに弱くちゃ。戦わないと…。”

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