第6話
それからの約一週間、私にとって地獄のようだった。
園田さん家のパン屋さんがオープンして以来、ウチのパン屋にお客さんが来る事は殆ど無かった。
家族の雰囲気もギクシャクしてしまって空気が重い…。
さらに学校でも、相変わらず私は紗菜、佳菜子、舞衣にかまってもらえず、ずっと1人で過ごしていた。
騒がしい教室に1人で居ると、なんだかソワソワしてくる。
“私も誰かとお喋りしたいな。思いきって今の席に近い子と仲良くなろうかな…?”
時々そんな迷いも出てきたけど、私はグッと堪えて我慢した。
“あともう何日かすれば、小夜子さんの力の効果が発揮されるはず!そうしたらまた紗菜、佳菜子、舞衣と一緒に楽しく過ごせる。それまでは我慢我慢…”
1日、また1日と過ぎていき、小夜子さんに願い事を依頼してから丁度一週間が経った日、事態は大きく動きだした。
学校では相変わらず1人ぼっちで過ごしたものの、家に帰ると何日ぶりかの明るい表情を浮かべた両親の姿があったのだ。
「優花お帰りなさい!今日はお客さん、沢山来てくれたわよ~!良かったわ~!」
お母さんが嬉しそうにそう言った。
「や~、やっぱりな、お客さんたちもウチのパン屋の味が恋しくなってきたんだろう!新しい店が出来た時は物珍しさに食い付いたんだろうけどなっ。結局は慣れ親しんだ味が一番なんだよ。」
お父さんも凄く嬉しそうだった。
聞くと、今日になっていきなり、以前と同じくらいのお客さんが来てくれたそうだ。
ついに小夜子さんの力が発揮してきたのだ。
まさに奇跡のようだった。
「今日はとっても良い日だったし、晩ごはんはすき焼きにしましょうか♪」
「わーい、すき焼き!」
この一週間ずっと売れ残りのパンばかり食べてきたので、久しぶりに白いご飯が食卓に並んだ。
「美味しい!幸せ!」
私は泣きそうになりながらすき焼きを食べた。
“大丈夫、小夜子さんの力があれば、学校でも友達と前みたいに楽しくお喋りできる!きっともうすぐ叶う!”
私は大きな希望を胸に抱いた。
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