第4話
「…ふむふむ。なるほどですね~…。」
小夜子さんは私から聞いた話を細かくメモしながらそう言った。
「じゃあ、優花さんとしては、今まで通りお店にお客さんが来てほしいし、お友達とも以前のように仲良くしたいわけね。…じゃあ、この園田さんっていう娘の家を引っ越しさせて、遠くにある別の学校に転校させちゃおうか?☆」
小夜子さんはウインクをしながら笑顔でそう言った。
「………う~ん…。」
「あれ?そういう感じじゃなくて??」
私がすぐに返答せずに少し考えていると、小夜子さんは目を丸くしながらそう言った。
「園田さん、まだ転校してきたばかりだし、また別の学校に転校させちゃうのは可哀想かなって思って…。園田さんも居て良いんだけど、学校でも帰りの時間でも私も仲間に入れてほしいだけなんです。園田さんとはお互いパン屋さんだけど、そういうのは抜きにして気にせず仲良くできないかなって…。」
私がそう言うと、小夜子さんは驚いて言葉を失っていた。
「優花さん、あなたって頭の中がお花畑っていうか何というか………。ずいぶんとボーっとしてるわね。そんなんだからお友達を取られちゃうのよ。」
小夜子さんは呆れた顔をしながらサラリとそう言った。
「え~…?でも今仲間外れになっちゃってるのは席変えで席が離れちゃったりとか、色々な要素があるわけだから…。」
私がうろたえながらそう言うと、小夜子さんは一つため息をついてから少し考え、レジが乗っている棚の引き出しから名刺を取り出し、その裏にペンで何かを書き始めた。
静かな店内にキュッキュッとペンを走らせる音が響く。
そして書き終えると「できたー☆」と言って、それを私に差し出した。
名刺の裏には『サービス券☆一回無料』と書いてあった。
「分かったわ。とりあえず優花さんが言った通り、お家のパン屋さんに今まで通りお客さんが来てくれるようにしてあげるし、学校に居る時や下校の時にお友達や園田さんと一緒に居てお喋りできるようにしてあげる。でも、もしそれだけじゃ足りないって感じたら、特別に一回だけタダで追加の願い事を叶えてあげるわ☆」
「あ、ありがとうございます…。」
私はお礼をいってサービス券を受け取った。
“…それだけじゃ足りないって思う事なんてあるのかなぁ…?”
私はそう思いつつ、“もしかすると、大人の女性から見たら私の頭の中はお花畑過ぎるのかもしれない…”とちょっと不安になってしまった。
“まぁ、もし万が一願い事が不十分でも、このサービス券があればもう1度チャンスがあるって事だもんね”
私は前向きに考える事にし、料金を支払ってから改めてお礼を伝え、お店を後にした。
“これで全て上手くいくはず…”
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