第2話
それから3ヶ月後、近所の新しいパン屋さんのオープン日が近付いてきた頃、私のクラスに転校生がやってきた。
『園田ひかり』という、お嬢様風な女の子。
美人で堂々としていて、人を引き付ける魅力のある子だった。
「園田さんの席はあそこの空いている席よ。一番窓側の列の前から3番目。」
先生がそう言って指さした先は舞衣の席の隣。
紗菜の後ろの席でもあるし、紗菜の隣には佳菜子も居る。
私にとっては凄く羨ましい席だった。
舞衣、紗菜、佳菜子の3人は、着席した園田さんに「よろしくね。」と笑顔で話しかけていた。
授業中も3人は園田さんに時々話しかけてあげていて、その日の下校時間にはすっかり仲良しになっていた。
私は休憩時間にちょっとだけ4人の所へ行ってみたけど、話題に入っていけなくて途中で自分の席に戻ってしまった…。
帰りはいつも舞衣、紗菜、佳菜子と一緒に帰っていたので今日も一緒に帰るつもりだったけど、3人は私には声をかけずに園田さんと一緒に教室から出て行ってしまった。
「ウソでしょ~…。」私は半分泣きそうになりながら1人で家に帰った。
“何だか3人ともすっかり園田さんに夢中だったなぁ。話の中心が園田さんだったもん。確かに園田さんは美人で魅力的だけど、私を置いて行っちゃうなんて…。”
私は3人に裏切られた気分になった。
翌日も、さらにその翌日も、3人は私の事なんてすっかり忘れて園田さんとばかり話していた。
4人の所へ行って話しかけても、仲間に入れてくれる事は無かった…。
数日後、もうすっかり一人ぼっちになっている私の所へ小走りになりながらコッソリ来てくれたのは紗菜だった。
「優花、ごめんね。園田さん転校生だし、優しくしてあげなきゃと思って3人で話しかけてたんだけどさ、園田さんって今度新しくできるパン屋さんの娘なんだって!優花のお家もパン屋さんでしょ?だから優花の事を紹介しにくくて…。席が近いから園田さんと話さないわけにもいかないしさぁ。本当にごめんね!」
紗菜は小声でそう言って、また3人の所へと戻って行った。
“園田さんがあの新しいパン屋さんの娘…。そういう事だったのか…。”
私は驚きと絶望で頭がクラクラしてきた。
“確かに、園田さんに私の家もパン屋さんだとは言いにくい…。でもいずれは知られる事になると思うんだよねぇ…。お互いパン屋さんでも仲良くできないかな?私も一緒にお喋りしたいなぁ…。”
私は頭の中でグルグル考えながら1人で歩いていると、いつの間にか知らない場所に来てしまっていた。
“どこかで曲がる所を間違えちゃったのかな???”
私はかなり焦った。
“どうしよう。全然何処だか分からない。このままじゃ家に帰れなくなっちゃう…!”
私は心臓をバクバク鳴らしながら辺りを見渡した。
見慣れない住宅街。
人通りがなく、道をたずねる事もできない…。
“どうしよう…”
キョロキョロしながら少し歩いてみると、ようやく民家ではない建物を1軒見つけた。
とても丸みのある可愛らしい建物…。
何かのお店だろうか?
お庭に樹木や花壇があり、うさぎや妖精の置物が飾られていてとてもメルヘンチックな外観だった。
さらに近付いて見てみると、木でできた看板がある事に気付いた。
『ミラクルショップ小夜子』
看板にはそう書かれていた。
“やっぱりお店なんだ!ここが何処なのか、店員さんに聞いてみよう。”
優花は少しホッとしながらお店のドアを開けた。
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