ねがいごと~小夜子のお店~CASE2
琴塔子
第1話
「ったく、ふざけやがって!なんだよこの小洒落た店は!!」
ある朝、学校に行く準備を整え階段を降りていると、お父さんの不機嫌そうな声が聞こえてきた。
居間に入ってみると、イライラとして鼻息を荒くしているお父さんの姿があった。
「あら優花、おはよう。」
お母さんはいつものように優しく私を迎えてくれた。
「お母さんおはよう。お父さんの機嫌が悪いみたいだけど何かあったの?」
私がそう尋ねると、お母さんは「そうなのよ。見てよコレ。」と言って、一枚のチラシを私に見せてくれた。
「ん?新しいパン屋さん…?うわっウチの近所じゃん!!この前まで工事してた場所だ。ライバル店ができちゃうってこと?!」
私が青ざめた顔でそう言うと、お母さんは黙って頷いた。
「しかもこのお店、めっっっちゃ可愛くてお洒落!!こんなお店が近所にできちゃったら、お客さん取られちゃうよ…。」
私はとても不安になってきた。
ウチのお店は、お洒落とは程遠い昔ながらのパン屋さん。
はっきり言って、お店の見た目は結構ダサい。
でも、素朴な味とお求め易い価格で、近所に住む人達は頻繁にウチのパンを買いに来てくれている。
地味に地元に愛されているパン屋さんなのだ。
これまでずっと平和にやってきた。
それなのに、まさかこんなに急に危機感を感じる時が訪れるなんて…。
私はドンヨリとした気分で学校へと向かった。
**********************************************
2年B組。
ここが私のクラス。
私は教室に入ってカバンを机の横に引っかけると、すぐさま紗菜、佳菜子、舞衣の3人の所へ行った。
2年生になってからずっと、席が近くて同じグループだったこの3人と仲良くしているのんだけど、この前の席変えのせいで私だけ3人と席が離れてしまった。
「あ、おはよう優花!」
「おはよう~。ギリギリ間に合った~。」
私がそう言い終わると同時に先生が教室に入ってきた。
「はい、皆席に着いて~」
私は殆ど3人とお喋りする事なく、自分の席に戻って行った。
“こんなに席が離れてちゃって本当に不便だなぁ~。席変えする前は4人とも席が近くて授業中でもお喋りできたのに…。くじ引きだから仕方ないんだけどさ…。”
授業中でも自習の時間などのちょっとした時間になると、3人は楽しそうにお喋りしている。
そんな3人の姿を見ていると、私は少し寂しかった。
でも、この時はまだ知らなかった。
今後、私はさら本格的に仲間はずれになってしまう事を…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます