第60話 仕事嫌いは今日も遊び惚けるよね

今日も今日とて、自分で作った銭湯ペンギンの湯で熱唱したりマッサージチェアでほぐされたりと二週間以上滞在し。当初の、国内を周るという目的を最初の街で忘れて現在舞台の上で熱唱しているのが我らが主人公ササラちゃん。



「毎日が自宅警備だったらいいのに、毎日が日曜だったらいいのにぃぃぃぃ~」


下から黄金の光が舞い上がり、歌を聞いていなければ非常に幻想的なセットなのだが。


「子供には聞かせられない歌だな……」「でも、元スラムの子供達すっげーニコニコ笑顔で働きながらその歌を口ずさんでますけど?」「おぃぃぃぃぃ!」


思わず突っ込みを入れるカイウェルに、苦笑いの鈴がササラが歌う舞台の客席でそんな事を話しながら。



「物覚えが良すぎだろ」「だよねー」「それはそうと、お惣菜屋揚げ物が人気っぽいな」「人気が出てくれたら何でもいいわ、だって一生懸命作って。一生懸命売って、それがちゃんと周りに評価されて。行政に税金だのなんだのって努力ごと搾取されないなら、やって良かったって本人もお客さんも思うじゃない」「行政側の俺としては耳が痛い話だな」「少しずつでもいいから、ちゃんとなおして強くて明るい国にしなきゃ」


カイウェルは一つ頷くと、遠い眼をしながら。「あぁ、頑張るさ。俺は目の前で働きたくねぇとかバカやってる君の姉さん程才能はない。だから、出来ないなりに頑張っていくしかない。そうだろ?鈴さん」「うん、やっぱりカイ君はそういう所が良いとこなのよね」「あのー、二人の世界作ってるとこ悪いのだけど。次も私が曲いれていい?」


「おう」「姉さん、ホントカラオケ好きよね」「はたらきたくな~い、はたらきた~くな~い、働きたくないから~明日もに~とぉぉぉぉ」



「「「「「「明日もにぃ~とぉぉぉぉ」」」」」」



その様子を見ながら、鈴とカイと領主がニコニコとしていて。


「あれで、あの調子っぱずれな歌が広まったらどうすんだ……」


「手後れよ、カイ君」それでも、この場にいる全員が幸せそうで。


それは、アウトローや元スラムの子供達や家族も変わらず。




「皆ではたらきたくな~いって歌うたいながら、あんなに幸せそうに働いてたら何とも言えない気持ちにしかならないだろうが」


ふっと、鈴が微笑んでカイの方を見て言った。


「今に始まった事じゃないわ」「そうだな、異世界来る前から師匠はずっとあんな感じだもんな」



「俺ごときが、何処までいけるかなぁ……」それは、カイの心からの言葉だった。


「お兄様は、もうちょっと自信を持つべきだと思います」


その声を聴いて、二人が眼を見開いた。


「「モナ(姫)なんで、ここに」」


「何やら、お姉さまが素晴らしいモノをお作りになったと聴いて馬車で来てしまいましたわ」


(確かに、素晴らしいモノだけど)


「そうか、色んなものがあるから楽しんでいけよ」「そうさせて頂きますわ、お兄様」


そういうと、すすすっと行ってしまった。


「ほむ、堪能した~。ん?あれモナ姫じゃん、何でここにいんの?」


「師匠が作った銭湯を楽しみに来たんだと」「ほーん、じゃ湯舟の幻想蝶風呂の濃度少しあげとくか。そうすると、妖精が飛んでるみたいで実に綺麗だし」


「それだけの美術センスしていながら、なんでG風呂を作るんだよぉ」

「普通の作ったって私が楽しくないじゃん、私は入らないけど」


「自分で入れるのを作りましょうね」鈴がそういって、ササラのほっぺを引っ張る。


「すいまひぇん」



「お姉さま~」「いまいひゅ」


鈴が手を放し、ササラがほっぺをさすりながらモナの後を追っていった。

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