第57話 作り直した銭湯は大好評だったよね
「まったくも~、みんなしてあれはダメだこれはダメだと文句言いくさってからにぃ」
そんな事を言いながらも、きっちり仕事をやり遂げ銭湯の前で仁王立ちしていた。
「おう、師匠。あれからちゃんとなおしたか?」「妹の鈴がG風呂はダメですって、凄い剣幕で怒るのです」「ったりめーだ」「G風呂無くした変わりに、赤白幻想蝶風呂に変えました」「また、違う意味で問題になりそうなものを……」
「私はもうつくりなおさないぞー!メンドイし疲れたし」「男風呂はシシオドシにかえてくれたんだろうな」「女風呂だけなおして、男風呂そのままだったらカイ君怒るじゃん」
「当然だ、バカタレ」「なので、男風呂も赤白幻想蝶風呂に変えておきました」
「確か、疲れ以外の全てが治るんだよな」「はい、ばれないように水で薄めてから出す様に工夫してありますから普段はただ透明な赤と白の蝶がお湯の上にそっと止まっているように見えるだけのお風呂になってます」
(そういう配慮は出来るのになんでG風呂で行こうと思ったんだよ)
「このまま私は、ペンギンで遊んでくる」「アンタ、成人してるんですよねぇ?!」
そういって、ずかずかと女と書かれた暖簾をくぐって行ってしまう。
「俺も、チェックがてら入るか」そういって潜ろうとした矢先、お惣菜屋を手伝ってくれた子供達とアウトローの連中がやってきた。もともと向こうはスラムとはいえ、地元住民でぶっ壊した跡地にこの銭湯があるのだから当然と言えば当然だが。
「よぉ、お前らも入りに来たのか?銅貨三枚今日の番台のシエルに渡したら洗面器と石鹸とタオルのセットが受け取れるから入る奴は受け取ってから入れよ」
後、中に書いてあるルールを守らねぇと恐ろしい事になるからちゃんと守れよ。
そういうと、自分はさっさと男と書かれた暖簾をくぐって行ってしまう。
「そんな、セット配ってたら赤字じゃねぇのかよ……」と誰かが呟く。
その声に、答えたのはシエルだった。
「この箱に三銅貨入れると、自動でお風呂セットが出てくるらしいぞ。外に持ち出せない変わりに、一人一セット必ず新品が出てくる魔道具だそうだ。つか、モノが無限に出てくる魔導具ってふざけてんだろ」
ごくりと、誰かの喉が鳴る。
「ルールを誰かが破ると大暴れしたあれが出てきて、街ごと吹っ飛ばすらしいから妙な気は起こすなよ」
そのシエルの言葉に、全員の眼がゴマ塩の様になって首をゆっくりと縦に振った。
お惣菜屋を手伝った子供だって、当事者のアウトローだっていきなり空中に鋼鉄の拳が出てきて色んなものをぶっ壊したのを思い出した。
「ルール守って、あと建築センスにゃ目をつぶればここは最高だぞ。てなわけで働くなら裏まわれ、風呂はいるなら銅貨三枚だしな」
そういって、ペンギンのイラストが描かれた平たい皿をすっと出した。
「俺は入ってく、商業ギルマスから確認してくれって言われてるしな。王子様肝いりの銭湯って名の風呂屋がどんなもんかな……」
そういって、本部をぶっ壊されたアウトローが苦笑い。
「ぼろかったとはいえ、建物をあんな簡単に吹っ飛ばしやがって……」
「そういや、領主の奴はどうしたんだよ」「もう、来てんぞ」
「はぁ?!」「朝一で来て、ずっとここにいるよ」
「ここ、風呂屋だろ?」「正面から番台までの室内スペースは、出店やら遊ぶとこやらいっぱいあったろ。そこら辺を、探してみろ」
「あっ居た」特徴的過ぎる、白い髪を丁度ソフトクリームを頭の上にのせた様に巻いている。もみあげの部分にも吊りバネの様にカールをえがいてみょいんみょいんと動いていた。
「ホアマスさーん、何してるんすか?」「おぉ、来たかキグナス」
二人は、お互いを見つけると走り出してガッチリと握手した。
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