第52話 風呂屋なんて存在しなかったよね
「たのもー」そういって木の扉を開けてはいっていくが本来そこにあるはずの番台も衣服を入れるロッカーも何なら壁もそこには存在していなかった。
かろうじて、そこが本当は風呂屋だった名残として瓦礫になった湯舟はそこにあったが。
思わず、ぽとりとお風呂セット(ペンギンの玩具入り)を落とすササラ。
「なんでないんじゃー!」「アンタが何とかで吹っ飛ばしたんだろうがっ!」
ん?と首を傾げるササラ、シエルはあきれ顔だ。
「これでは、ペンギンで遊べないじゃない」
「仮にあってもボロイし古いしで、遊ぶ気にはなれなかったなぁ。掃除も行き届いてるとは言い難かったし」
「今日は流石に、創造魔法でお風呂出す訳にもいかないし……」「出せるんかい」「創造魔法で出せないのは私が作れないものとか私が理解してないものに限るから」
「ん?ちょっとまてよ。って事はさっきドラゴン相手にガチバトルやってたあれもその気になったら作れるって事かよ」
「そだよ、やる気はないけど」「やんなよ?!」「鈴とカイ君にもよく言われる~♪」
(こいつ、マジで歩く危険物じゃねぇか)
「にしても、どうしよっかな。妹に出してもらうとしても、壁とか更衣室は必要だし」
足をぱたぱたとやりながら、腕を組んで考える。
「シエルさん、この辺に木材売ってるとこってない?釘とかもあると嬉しいんだけど」
「仮に売ってても、街はこんなんだから建材屋は足元見たりするんじゃね?」
「そこは、説得(物理)するから大丈夫よ♪」「今、物理ってきこえたんやが?!」
「私相手に、売らないってならそれはそれでいい根性してて商売人として褒められるレベルだと思うます」
「そら……そうだな」「所でシエルさんや、ここは女側なんですが」「俺は女だよ!その男が入って来たみたいなリアクション誤解がありそうだからやめてもらえませんかね」
とりあえず、ササラが股をパンパンして胸をふにふにして一つ頷く。
「うそん」「俺を何だと思ってたんだアンタは」「クソ生意気な用心棒(モブ)かな」
「誰が(モブだ)」「カイ君より弱いじゃん」ウッとなるシエル。
「言うほど、弱くはねぇだろあのバカ王子。さっきも生身であれだけの大群止めてたしな」「それしか取り柄がないんだから、それ位できて当然だと思うけど?」
「あれを、出来て当然とか冗談だろ……」シエルはあきれ顔でそう思った。
そんな会話をしながら、場所を移動して建材屋の前にたどり着いた。
「オヤジー居るか?」「なんだ、放蕩娘が何しにきおったかっ!」
その瞬間、ジト目になるササラ。「あんたの実家かYO」「ここが一番面倒がねぇからな……」
「客を連れて来たんだ、木材が欲しいんだと」「どこに客がおるって御嬢ちゃんが客って訳じゃ……」「私が客だけど?」「うちは駄菓子屋じゃねぇ!!」「お金はあるけど?あと身元保証ならこれがあるけど??」そっとカイから預かっている王家の短剣と財布を見せる。
眼を細めてそれらを確認し一言「あんた種族は小人かドーワーフか何かか?ドワーフにしちゃ痩せてるし髭も無いようだが……」
「人間よ! チビで悪かったわね!!」「いや、すまんすまん」そういうと頭をぼりぼりやって「後は運び手だが、御嬢ちゃんとうちのズボラじゃ建材運ぶのはきついだろうよ」
それなら、心配いらないわ。と手元でアイテムボックスから杖を出し入れして見せた。
「お前さん、アイテムボックス持ちかい。羨ましいねぇ。良し判った、ついてきな」
そういって、奥に向かって歩き出すオヤジ。
二人は、その後について店の奥へ入っていった。
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