第50話 酷すぎて草ってなるよね

二人で雄たけびをあげ、コクピットの火花や炎が嘘の様に鎮火し新品同様に。

更に、さっき潰された腕が一瞬で元通りになり確認するようにぐーぱーと二回繰り返す。


「全ギャラルシステムフル稼働を確認、レッドモード:フォールンデットエンド」


コクピットにその声が響いた瞬間、メーターと計器が消え。


さっきまで敬礼していた、猫がトランペットを吹き鳴らしているではないか。



「一体、何が起こってるんですこれ?」「ついに来たぜ!」両手でカイとササラがハイタッチを決めて凄まじく邪悪な顔でニヤリと笑った。


「あぁ、青のサイフォンで吸った魔物のステータス全部足したのがこの最終モードのステータスになるんだよ。のってる俺らの装備品扱いで、俺らのスキルや魔法全部使える状態で。更にレッド専用武装も解禁になって、残弾の制限が無くなる。こいつは酷いぜ?」



そういうと、カイが剣技の技名を叫ぶと黒い逆足ゴーレムがカイと同じ速度同じ技を繰り出し。竜が振り下ろした爪とぶつかるが、先ほどまでの苦戦が嘘の様に爪がまるで豆腐でも斬ってるかのようにすんなりと切断され遠くの地面に回転して突き刺さった。


それを、見て龍が眼を剥く。


「フハハハハ」「くっくっく、よくもまぁあれだけ恥かかせてくれたなぁ」

仁王立ちで、これ以上無い程邪悪な顔の二人。


「あれ、これ俺達が悪みたいになってね?」「カイ様……」



さっきまでガトリングガンで防御していたそれが、同数の弾でミサイルのハープーンに変わって体のあちこちから撃ちまくり。しかもさっきまで実弾だったのが、ミサイルの弾頭についてるのは全部神級魔法。あっという間に龍の翼膜がスポンジケーキの様に穴だらけになっていく。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


しかも、それがカイと同じ技を使い。ステータスが吸収したモンスターの合計値ともなれば、全く捉える事ができない。


更に酷い事に、ササラと同じ創造魔法で変わり身の術やら粉塵爆発を起こす前の粉と同じレベルの魔法を同時展開しながら。時空を切り裂き、時間を操る。戦闘機でいうドックファイトの様に巴戦等を用い簡単にドラゴンの死角に回り込んでしまうのだ。



急に地面に穴が空いて、翼を失った龍の体勢が崩れた所に腹パンの様な体勢で拳を繰り出し。殴った手から、特型駆逐艦の舟艇が寸鉄の様に飛び出してくる。


親指の位置から朝霧、夕霧、天霧、挟霧がそれぞれ指の間から飛び出し。それにつけられた砲門から遠慮なく火力を内部に叩きこむ。


それを、ヒットアンドウェイで反撃すら許さず全方位から叩きこんでいた。


コクピットの騎士二人は思った「うわっ、これは酷い」と。

咄嗟に自分の持ち前の技名を叫べば、律儀にそれにも反応して右手と左手で別々の技を繰り出し。命中する予定の場所が、勝手に赤い丸でティクルが描かれているではないか。



本来ならあるはずの煙突すら、魔法が込められたハープーンを撃ちだすミサイルランチャーに変わっておりそこからもイナゴの大群の様に飛び出していく。

本来なら吸気口になっている部分がレーダーとなり、確実に龍に命中するように湾曲させているのが判る。


眼からレーザーが出たり、胸から出て来た組み立て式の槍で四肢を切り裂いていく。

間断なく、浴びせられる圧倒的な火力。無論、ブレスも飛んでくるが透明なシールドがまるで衛星の様に付きまとい簡単に防がれてしまう。


武器を操り、創造魔法を駆使し。ササラが知る重火器をフル搭載したこの圧倒的過ぎる火力に、近衛騎士が帰ったら辞職しようかなーとか思い始めた頃。



龍が、前のめりに崩れ落ちていくのが見えた。


「あいつ、レッドモード相手に五分以上もつとかやっぱ強かったわね~」

「あぁ……、間に合わなかったら負けてたのは俺らだったな」


そんな事を言いながら、もうアロハシャツでトロピカルしている二人。



「あっ、いけね龍の素材残るかな」「無理じゃない?」


眼の前の龍が、黒い魔素になって徐々に消えて行くのが判る。



「ダンジョンの魔物じゃなかったら、焼肉できたなー」

「妹にお願いして、なんか作ってもらいましょ♪」


(売りたいとかじゃなく、食べたいから心配だったんかい…)

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