第47話 ドラゴンだって怒るよね
「俺の家(ダンジョン)を水攻めにして雷撃ぶち込んだ奴でてこぉぉぉぉ!!」
「俺でーす、アンタの家(ダンジョン)クッソ深くなって邪魔だったんでぶっ壊しました(笑)」
足元で宣うカイ、ササラにかけてもらった防音の魔法である程度軽減されて尚煩いその叫び。
「いい度胸してんな。人間の癖に、ぶっ殺してやるっ!!」
耳の横でひらひらと幼稚園児の様に挑発しながら、カイが言えばドラゴンの尻尾が飛んできた。
その尻尾に、簡単にピンボールの様に吹っ飛ばされていく。
「カイウェル様!?」騎士達がドラゴンの連れて来たモンスターを倒しながら飛んでいったカイウェルの方をむいた。
「大丈夫だっての、ちょっと油断した」砂ぼこりが晴れるとそこにはおー痛ぇとか言いながら埃をパンパン払っているカイがいた。
胸を撫でおろす騎士二人、ドラゴンは血管を浮かべたまま突撃してきた。
それを、剣一本で受け止めながら両足に力を込め。地面に後退の足跡を残しながらも止めた。城壁と紛う竜の巨体の突撃をだ。
ぎりりと口から僅かに血が零れ、両手の血管がこれでもかと浮き出てカイウェルの全身に酸素を運ぶ。
「きっちぃなぁおい!」「やるではないか、お主ホントに人間か?」
巨体とは思えない乱打を放つ竜、城壁の五倍はある大きさに対して秒二百発は出ていそうな速度の拳。それを、剣一本でいなす。
「我のブレスを空に弾き飛ばした事といい、大した男じゃな」
「あいにくと、国民を守れない王子様はこの世に必要なくてね。お前の家ぶっ壊したのも、国民の安全を脅かすからだっての」「我は国民ではないと?」
「我が国で国民ってのは、人、獣人、魚人、エルフとかで竜は精々ペットなんだよ」
その言葉に更に怒り狂う竜「我らが、ペットとはよーゆった人間め!」。
(こいつ相手に、四十五分も生身でたたかうとかムリゲーだろ。せめて、十五分たてばあれの青が起動するから随分楽にはなるんだが)
今まさに、ササラ中心に円に広がっていく魔法陣から頭だけせり上がっている漆黒と金ラインのロボをチラ見して思う。
爪と牙が飛び交い、剣と蹴りでしのぎながらカイウェルは舌打ちした。
(俺の後ろにゃ、鈴さんと国民がいるんだ。俺が生きてるうちは、一歩たりとも通さねぇぞクソトカゲ)
カイの筋肉が隆起し、羅刹の形相で叩きつける様に牙と爪と剣が閃光の様に飛び交う。
それを見て、騎士二人が奮起する。
(我らがあの戦いに入る事は不可能だ、ならその戦いを邪魔させない為につゆ払いくらいはせねばな)
頷き、眼で合図した二人が両サイドの魔物を巨大なミキサーにぶち込んだ果物の様に肉片に変えていく。
「せぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」乾坤一滴の一撃で竜が僅かにノックバックしたところでカイウェルの体が一瞬バスターソードを抜刀術の様に構えて大きく沈み込む。
(遂愁梟雷霆覇告(ついしゅうふくろうらいていはこう))
「てめぇのお家みたいに、てめぇにもたっぷり雷撃ぶちこんでやる」
まるで沢山の実りを得た稲穂を束で持っている様な、剣にまとわりつく雷撃がそれをイメージさせる。
(ダメージ位はいってくれよ……)
ノックバックからすぐ戻って来た竜は爪を上から振り下ろし、カイウェルの剣は下から勝ちあげる形で激突した。
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