第46話 大苦戦しちゃうよね

「おい、こりゃやべぇぞ」「うん、特に先頭の黒いやつ」


「カイ君、最初に一発かます」「吹き飛べばよし、ダメなら師匠あれしかねぇぞ」


「判ってる、あれ詠唱は長いし燃費は悪いしフルスロットルまで回すまで時間かかりすぎるしで出来れば無しで片付けたいけど」



「創造魔法:魔装姫神天津禍(まそうきしんあまつまーが)ゴットプレスクラッシュ!!」


巨大なロボの黒い鋼鉄の腕がいきなり空中から飛び出して先頭にいた巨大な黒い龍の頭に拳骨の様に飛んでいく。


それを牙で咥えて、捉え噛み砕かれ魔素に戻って蛍の様に消えたのを見届けてカイとササラが口をあんぐりあけた。


「やばいんじゃが」「あぁ……」


お返しとばかりに、ブレスが飛んでくる。それをカイが、剣を一振りして空へうちあげた。


のだが、カイがその場に蹲っているではないか。


「かはぁ……、なんだあの威力」「あれを空へ逸らすだけでも大したもんよ」


両手が明後日の方向に捻じれて焼けただれ、それを脂汗を流しながら自分の治癒魔法でなおしていた。直ぐに、体は元通りになるが撃たれる度になおしていたのでは劣勢もいい所。



「やっぱ、あれ城壁の倍位の大きさといい。放ってるオーラといいやばすぎるな」


そういうと、御供みたいについて来てるモンスターを片付けてくると城壁からカイが飛び降りる。「二人とも、とにかくボス以外の数減らすぞ」


「師匠、頼んだぜ」「弟子よ、ニ十分下さい」「あれ相手にすんだったら、十分が限界だっつーの」「なるはやでやるしかないか」


そこで、初めてササラが複数の杖を自分を中心に放射状に置く。


「防御は、投げ捨てるしかないかぁ~」


膨大な、魔力を練り上げ。その天に上る魔力の量が可視化して複数の龍に見え、敵の進軍が怯んで止まる間にカイと騎士の三人が走っていく。



「最終断末魔秘奥創造術式:起動」


髪の色が一気に抜けて真っ白になり、各杖が限界近く魔力を注入されガタガタと震え始める。


ササラの右と左に、白いドレスと黒いドレスの少女がバイオリンを持って現れ奏でる音楽もまた可視化されどんどんと花園とオーケストラを形成していく。


次第に震え、ササラが両手をついてゼーゼーいいながらも詠唱を続けそれは成る。


花から、まるでスピーカーの様に音が空に昇る。


チェロやピアノそれにサックスにトランペット等々様々な奏者が増えていく。

色違いのツインテールの少女達が、音を奏でる度に形成していくそれは巨大かつ無骨かつ恐ろしいフォルムの機械。


脚は膝が逆関節になって六本、全体が黒を基調とし所々に禍々しい紅のラインが走っていた。


その巨体の背には、手の様なアームが更に蜘蛛の脚の様に六本。


腕にはそれぞれ、可変式の小手。眼光が、紅く天の雲を貫く。


「完成まで、もう少し……」


その間なんの防御もできず、血ダルマになりながら。それを完成させるべく、ササラが大地に倒れ両手をつく事すらできず崩れ落ちた。


完全に、防御も回避も捨て完成に専念する。


泥まみれの血まみれになりながら、呟くようにキーを詠唱していった。


「見てなさいよ、この術式はまず最初に本体が出てきて。連続経過戦闘時間十五分毎にそれぞれ青、黄、赤の順番に体中に供給ラインが走る。赤まで行けば、誰にも負けないっ!」


(問題は、赤まで起動するまでにカイ君と騎士さんがもつかどうかって事なんだけど)


「持たなかったら、やばいわよねぇ。でもなんであんなドラゴンが大軍率いてこのタイミングで襲ってくるのかしら」

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