第45話 元用心棒は面倒見がいいよね

「おい、ひっぱんなって」笑顔の子供達に服を引っ張られているシエル。

その後ろでは、今日も鈴達がお惣菜を売っていた。


「にしても、昨日の賄いとかいったか?旨かったなぁ」

未だ夢見心地でその味を思い浮かべ、表情が緩む。



それなりの服を着て、痩せている子供も今日から実は鈴が勝手にお惣菜屋台で雇う事にした。服もボロくて客商売には向かないので、鈴が自分のスキルで人数分買った奴を風呂に入れた後着せたもの。



簡単に俺をのしてくれた奴ら二人も、今日は店の横で騎士と一緒にご飯なるものを炊いてはおひつに入れる事を繰り返していた。


油揚げだの、天ぷらだの、匂いがきつい漬物だの様々な品々をシエルと子供達は笑顔で売りながらこれも悪く無いなと思い始めていた。



無論、シエルだけは笑顔が無いと後ろから怖い鈴が睨みをきかせているので引きつった笑顔だが。


「猫の手も借りたいぐらい繁盛してるから、子供の手が借りられるのは助かるわ~」


そんな事を言いながら、あのへんな扉の奥から出来立てを次々に屋台の空いたスペースに置いていく。


子供達も、仕事としては安全で給金が前払いという事もあって非常にありがたがられている。



「おじさん、もうかき揚げが切れそうだよー」ちかくに居た猫獣人の子供がシエルの服を引っ張る。


「いっけね、鈴の姉御!かき揚げの追加頼んます!!」


金属のトレイぎっしりに、揚げたてほやほやの追加を用意した鈴がやってきて。今あがったわよ~と微笑む。



その鈴の後ろを、犬獣人の子と熊獣人の子と人間の子が同じトレイの別の品物の追加を持ってきてつめていく。


「あじぃ~、あじぃ~~」そんな台詞を言いながらササラとカイがハンゴウでご飯を炊き続けていた。



「姉さん、カイ君頑張って」鈴がそういえば、カイはおうと答え。ササラは無言で左手をぱたぱたとふる。



行列は途切れる事無く、笑顔も耐える事無く。



騎士達も、別に国内全部回らなくてもいいんじゃいかなとのどかにも思い始めていたその時。


街の衛兵が「大変だ~、雪崩の様にモンスターが襲って来た!!」と叫び。

全員がそっちの方を向く、全ての笑顔が一瞬で消え。



子供達が一斉にシエルにしがみつく、その子供達の一人一人の頭にそっと手をのせてシエルは苦笑した。


「ここには、やべぇのがいる。あの連中にどうにもならないのなら、人間じゃどうにもならねぇよ。だから、安心しろ。俺達は、食料代わりにお惣菜を売ればいい」


そういうと、不安で震える子供を抱きしめた。


「いい事いうじゃない、もと用心棒の癖に」


「ごめん、また鈴の彼を借りるね。ほら、出番出番」「安心しろって、ここには強い騎士様が二人もいるんだ。そうだろ?」そういって、カイがウィンクした。


「カイ様……」「それじゃ、助さん角さん参りましょうか(笑)」「すすけ?」「かく?」「俺の右と左の後ろは、全て任せるって言ったんだよ」「「了解であります!」」



「頼んだぜ」


そういうと、街の外にかけていく四人の背を鈴は見送った。


「私も、一緒にいけたらいいのに……」


そんな、鈴の呟きは街の大騒ぎにきえていく。



「シエルさん、申し訳ないのだけど。子供達の安全を最優先で、お願いできるかしら」


「合点でさぁ、お前らいつでもずらかれるようにしとけよ!」


「あと、シエルさんも怪我しないようにね」「あの二人よりヤバいのがでてこなきゃ俺は無敵ですんで」そういって、茶化しながら子供の面倒をみる。



行列も消え、街中が騒がしくなる。

カンカンと警告の鐘がひっきりなしに鳴らされ、例のドアの中にシエルと子供達を非難させていった。

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