第39話 創造魔法の真髄を見てドン引きするよね


「その胡椒をよこしなさい、小娘。それが幾らになるかお分かりになって?」


「シラネ、あんたバカなの?今日会ったバッカの顔面子供のラクガキのアンタになんで価値だのなんだの言われなきゃいけないのよ。これは、あたしが買ってあたしのもんなんだからあたしが使うのは当然じゃない」



(初対面の人間に、顔面落書きはやべーだろが師匠)


「大体、そっちのボディガードの方が私は随分好みなのだけど」


そういって、袖で涎をふきながら筋肉でてかる肉体を舐め回す様にみていた。



「それで?力づくでやるなら相手になるけど。そっちの方が私は得意だし?」


首をこてんとやりながら薄ら笑いをしている、ササラを見てカイは思った。



(あっこれ相当キレてるわ)


「小娘!!」そういって顎で自分のボディーガードに合図した瞬間、いきなり二人のボディガードが正座の体勢で石をのせられて固定されていた。


動こうとするたびに、脚の上の板が追加され。遂にはおばさんも含め三人がササラの目の前で正座させられ石をのせられていた。


「カイ君、念のため聞くけどこの国で正当防衛って何処まで認められてる?」


「今回は、一応不敬罪適応できる範囲だから。両手落とす所までだな」


「おっけい!さてと、私は食事の邪魔されるのが大っ嫌いなのよね♪」


「何する気だ、師匠」「油をこの状態で上からぶっかけるだけよ」


「何度で?」「350度♪あんまり上げると発火しちゃうからね。燃えないけど、確実に体にまとわりついて火あぶりと同じ症状が出るわよ。もちろん、動けない上に油だから煙にまつわるとこ以外全てコンプリート出来るって感じ」


嬉しいでしょう?と薄ら笑いを浮かべながら、まるでホラーの幽霊の様な顔で言った。



(創造魔法って師匠が作れるもんなら、妄想パワーのごり押しで何でも作れるって言ってたけど。温度も自在なのかよ、こりゃぁ、まだ隠してる事あるな)



「顔面落書きが、元に戻せなくなるだけよ♪何にも問題はないはずだけど?大体、お金で買い取る交渉ならともかく、そんなでか物仕向けて強奪しようって考える時点で浅い浅い」


騎士達は思った、あれこの小さいお姉さん実はすげぇ危険人物なんじゃないの自分達が立ち上がる前にあの状態にさせられてたし。座ったまま、串焼き食べながらだったぞ。



「全く、いい気分が台無しよ」その台詞で、同じく胡椒をたかろうとしていた他の客達もすっと席に戻って他人を装った。


「待って!」「まちませ~ん」膝の上にセットされた板は金属製だ、油が徐々にしたたり落ちてその身を焼き悲鳴が上がる。


「そのまま油が上から流れて、床についたら消える様にしたから。バカ三人の悲鳴をBGMに串焼き食べましょう♪」


「師匠……、そんな悪趣味な」「カイ君さ、それじゃ防音の魔法してあげよっか」


「「あのっ、我々もお願いしたく!!」」「そう?じゃ私だけ悲鳴を堪能するけど、文句言わないでね」


首を必死に横に振って、文句なんて言わない言わないからと三人が力説する。



(そんな、悪趣味はアンタだけだって)


「そういえば、あのオバはん誰なの?」「この街の妖光会の人間だろうな、あの胸バッジには見覚えがある」「貴族?」「貴族で、俺の顔知らなかったらやべぇだろが」「それもそうね」


少しでも動こうとすると、背後の黒い渦から化け物が触手やら何やらで無理矢理押さえつけて正座の体勢にしながら熱した油をぶっかけその悲鳴を聞きながら「う~ん、マンダム」とかいっているササラ。



「カイ様、あれ大丈夫なんですか?」「師匠は基本的に食事とか大事にしてる時間邪魔しなきゃ安全だ。邪魔するとあぁなる」カイが使う普通の防音魔法と違って、シャットアウトしたい音だけピンポイントで防音できる。ササラの、創造魔法式防音魔法。


「都合の悪い事だけ聞こえません的な?」「いぐざくとりぃぃぃぃぃ!!」


カイの突っ込みに笑顔で、親指を立て快活に笑う。


「カイ様、妹が女神様なら。姉の方は魔王か悪魔か何かですか?」


そこで、急に真顔になってこれ以上ない程のシリアスな顔できっぱりとカイは言った。


「安心しろ、悪魔の方がまだプリティで慈悲がある」


そういって、視界に入らない様に努力しながら三人は串焼きが空になるまで滞在した。


その間、ずっとジョッキを振りながらご機嫌に揺れているササラと共に。

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