第32話 魔物より邪悪なのが創造魔法だよね

「そろそろ、なんか倒して素材売らないと生活費がやばいわ~」


そんな事を言いながら、冒険者ギルドに入って来たササラ。



掲示板に向かって、のっしのっし歩いて良いのを見つけたとばかりに眼を輝かせる。



そこには、サイクロップスの討伐と。


難易度が高すぎて売れ残っているのに、真っ先にササラが飛びついた。



「受付のおねーさん、私これちょっくら行ってしばいてくる」



「あの……それサイクロップスですよ?」


「ザコロップスでしょ、大丈夫大丈夫♪カイ君より弱いまものに警戒なんて必要ないし」


「カイウェル様は、当ギルドでもかなり上位ランカーなんですが……」



そういって、受付したあとまたのっしのっし歩いて冒険者ギルドを出ていった。



「なぁ、サイクロップスって雑魚じゃねぇよなぁ?」そう、誰かが言えば。


「少なくとも、俺ならぺっちゃんこだ」「だよなぁ」



そんな酔っ払いたちの声を背に、ササラは冒険者ギルドの扉を出た後すぐに漢達を召喚して棘付きの世紀末椅子に座って走り出した。






普通の神輿ならともかく、ササラのそれは出鱈目な速度で街を出ていって目的地にたどり着いてしまっていた。



「さてと、いたいた」その図体故に直ぐにそれを見つけ、神輿から降りてそれを消し邪悪にニヤリと笑う。



「まずは、両手両足を固定してっと」足首と手首を例の筋肉の腕で固定し、赤ジャージの腕をまくると「真っ当に戦うのなんて、やってらんないわよね」とサイクロップスの特徴であるデカい眼に向かって透明な結界の箱を創造し。それは見ようによっては魔法で作った紙袋を被せられている様だった。



「ンフフ~、創造魔法花粉漬けってね。ブタクサ、スギ、カモガヤ、イタリアン・ライグラス、カナムグラ、ヨモギ、イネ、コナラ、シラカンバ、テンサイ、ハンノキ、キョウチクトウ、スズメノテッポウ、ヒメガマ、ハルジオン、イチゴ、ヒメスイバ・ギシギシ、キク、除虫菊、クロマツ、アカマツ、カラムシ、ケヤキ、クルミ、モモ、セイタカアキノキリンソウ、イチョウ、バラ、リンゴ、アカシア、イエローサルタン…」


次々とアレルギーが出る花粉を、紙袋の形の結界の中に創り出し悲鳴を上げもがきかきむしるサイクロップスをニヤニヤ顔で見ているササラ。



「人型なら、アレルギーが出る筈だっていう読みはビンゴって感じ。その内、目のかゆみと鼻水と色んな症状が出てるのに手足は固定しっぱなし……」



遂には立てなくなり、その場に倒れこんで呼吸困難に陥るサイクロップス。


「まともに戦う訳ないじゃない、カイ君と違って私そんなに戦闘向きじゃないし」



※思考回路はかなりやりたい放題




サイクロップスが死に絶えた後、それを例の神輿にのせてそのまま冒険者ギルドに運びいれ受付でお金を受け取ると「バイナラ」とだけ言ってまたのっしのっしと城へ帰って行った。



「おい、サイクロップスってあんな日帰りで狩ってこれる魔物だったっけ?」


「あのカイウェルが、師匠と呼ぶ訳だよな。ゲイ先生にも完勝してたらしいぜ?」


それを聞いて一部の冒険者が、驚きの余り腰が浮いた。



「マジかよ、あの先生。最低だけど、実力だけなら冒険者ギルドでも上位だろ?」


「あぁ、最低を絵に描いて現実に持ってきたような人だけど。あの人を頭も含めてトゥルントルゥンにしたって話だぜ?」


「完勝するだけでもすげぇのに……」

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