第31話 王妃様は怒らすと怖かったよね

「オイ、フクマーク!!」



眼を吊り上げて、ブチ切れてフクマークの胸倉を掴んでいるのはガナーシャ様だった。


「はっはひ…」自分のしたことは判っているので、一生懸命謝るフクマーク。



「貴方は料理人でしょう?、百歩譲ってうちのバカ息子とササラさんはまぁ仕方ないとしても貴方はダメでしょうが!!」



その横で鈴が苦笑しながら、王妃様に謝っていた。



「いえ、庶民の食べ物ですので王妃様に出すのは違うのかなぁと……」


「うちの、バカ息子には出してですか?!」「えっと、カイ君には一応材料費とかもらってますし。どうしても、食べたいっていうのでこう甘やかしちゃうというか」



その言葉に、眼がすわるガナーシャ。「いくらです?」「はい?」


「幾ら払えば、私も食べられるのです?」「今日は雑炊何で、三銅貨も頂ければ」


「フクマーク!皿を準備しなさい!!」「ははっ!」マッハで居なくなるフクマーク。



「あの、鈴姉さま。私も食べたいです…」そっと手を上げるモナ姫。



「はい、大丈夫ですよ♪今日はガナーシャ様が払ってくれるそうなので」


花が咲く様に喜ぶモナ姫、その様子にガナーシャも思わず苦笑する。




「フクマークから、仔細は聞いています。とにかく味だけは、特出して素晴らしいものを作るそうですね」


「うちの姉とカイ君は見た目とか気にせずお腹いっぱい食べたいってタイプですので、もうしわけありません」


そういって、ぺこりと頭を下げる鈴。それを聞いて、ガナーシャも溜息をついた。



「いいのよ、こちらこそうちのバカ息子が御免なさいね」そういうと陽だまりの様に微笑んだ。



「お姉さま、所でそのぞうすい?というのはどういったものなんです?」


「カニ鍋の残りのスープを使ってお米を入れて、上にちょっとした彩りを添えて完成の簡単なものよ。モナ姫様とガナーシャ様には、特別にカニの足をほぐしたものをいれるわね」



そういって、優しくモナ姫の頭を撫でる。



しばらくして、皿の準備が整い雑炊が盛り付けられ眼が点になるガナーシャとモナ姫。



「これは……、獣の餌か何かですか?」「お姉さまこれは…」


思わず苦笑してあーやっぱり的な顔をする鈴、これが普通の反応よねと。



「「いただきま~す」」その横でマッハで食べ始めるカイとササラ。


その様子をみて、モナ姫が恐る恐る震える手で一口口に運ぶ。




「ん~~~~」これ以上ない程顔ごと輝くモナ、その後はカイ達と一緒にマッハで口に運んだ。



(フクマークは味だけに特化した料理を出すと太鼓判を押していたけど、あのモナがこんな幸せそうな顔をするなんて……)



ガナーシャも覚悟を決め、一口口に運びそれから先は周りが見えなくなった様にひたすら匙を口に運び続けた。



気がつくと、中央にあった土鍋は空になっており。その土鍋を五人がじっと見つめていた。あれ?っと鈴が思って見渡すと、一口も食べられなかったフクマークが一緒に悲しい顔になっているではないか。




再びその場で正座させられるフクマーク、モナ姫も腰に手を当ててぷりぷりと怒っていた。


「酷いです、料理長」



カイは、ゆっくりとフェードアウトしようと音もなく下がって行こうとしたが見つかってフクマークの隣に正座させられた。


「お兄様?」凄みのあるモナ姫に言われて座らされ。カイが横をみると、その場に紙が一枚おいてあった。



紙には「不穏な香りがしたから、ドロンします。探さないで下さい」と。


思わず、カイが白眼に。


(そういう時だけ、対処がクッソ速い!!)


その様子を鈴のルームの玄関の覗き窓からチラ見して、ササラはセーフセーフと手でやっていた。

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