第30話 カニパーティはもりあがっちゃうよね
「ごめんなさい、フクマークさん」「いいえ、大丈夫ですよ。鈴様、それよりもこれはいったいどういう料理なんです?」
眼の前にドカンと置かれたデカい土鍋に、鈴のルームから持ってきたやや大きめの携帯コンロ。
「この土鍋に特製スープを入れます」
どぼどぼとペットボトルに詰めていた、特製スープを投入した。
「それで、言われた通り野菜は食べやすくカットして置きましたが」
「その野菜を惜しげもなく入れて下さい」「はぁ?惜しげもなくですか」
言われた通り、野菜を入れていくフクマーク。
「特に硬い野菜やなんかを先に入れないと煮える時間で悲しい事になるので」
「それは判りますぞ(笑)」
「丁寧に灰汁を取りながらきってもらった材料を順に入れていきます」
「鈴ちゃん、メインのカニ持ってきたよ~」
「なんだこの醜い虫の化物は!!」「これが今回のカニ鍋の主役、タラバ蟹よ」
ドン引きするフクマーク、慣れた手つきで足をぶった切って包丁で切れ込みをいれる鈴。
「大根の時でもそうであったが、これも見た目が良く無くて味は最高のパターンか?」
「カイ君が食べる前に、毒見で食べてもらいますが驚くと思いますよ」
「期待しよう」そういうと、そのカニなる化け物をガン見しているフクマーク。
「スープが薄いかしら、少し特製味噌を足しておきましょう」
その味噌なるものをいれると、素晴らしい香りが調理場に広がる。
その間、調整をしながら真剣な顔で眼を細める鈴。
涎を滝の様にこぼしながら、机にしがみついているカイとササラ。
その真剣な眼差しに、作り方こそ大雑把に見えて真剣勝負の料理だと舌を巻く。
「まだ食べられないの?」「まだかよ~」
火を限界まで弱めると鈴から「フクマークさん、味見をお願いしますね」と声がした。
既に餓えた獣が二匹机を握り潰す勢いで、血走った眼でしがみついていた。
「では…」一口、そうたった一口でフクマークはそのまま後ろに幸せそうな顔で倒れていた。
「大丈夫みたいね、ササラちゃん。カイ君、食べても良いわよ」
「「頂きます!!」」いうやいなや光の速さで消える鍋の中身、鈴はその間にフクマークを叩き起こす。
「すいません、フクマークさん。野菜が足りなくなり…」そう言おうとした鈴を跳ねのけると獣が三匹に増えていた。
はぐはぐと、咀嚼音だけが響く。
額に手を当てはぁ~と溜息をつくと、仕方なさそうに野菜やカニを再び用意しはじめた。
その時には、一本のカニの足をめぐって箸のバトルが繰り広げられていた。
(あの二人に、スピードでついていくってフクマークさん実は中々鍛えてるのかしら)
チィン!ジュイン!!と箸だけで争っているとは思えないバトル音が聞こえてくるが鈴はマイペースに鍋の材料を用意してそっと鍋の横に置く。
鍋がスープだけになると、また鍋の材料を投下して机に三匹の獣がしがみついているではないか。
「あの、フクマークさん?」
「グルル……」と返事をされ「これ、ダメな感じかな」と諦めた鈴。
結局、鈴は三人がヘソ天お腹ぽんぽこりんになるまでひたすら材料を用意し続け「カイ君もフクマークさんも材料きってくださいよ~」とぷりぷり怒りながらもちゃんと手は動かす。
料理場で爆睡する三人を見つめながら、「雑炊は後日ね」と苦笑した。
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