第28話 鈴ちゃんのルームに驚いちゃうよね
「あの、鈴姉様。ここは一体……」
そういって、玄関部分でキョロキョロと周りを見渡す。
それもその筈、全く見慣れないものばかりが並んでいるからだ。
「ここは、私の特別なスキル。ルームの中よ、といってもお城の御姫様にとっては狭い小屋みたいなものでしょうけど」
優しく微笑んで、こっちへどうぞと奥へと入っていく。
靴を脱いで、鈴が先に部屋の中央にあった掘りごたつの様な場所へ座る。
当然、コタツの布団はしまっていてむき出しの足がのばせるだけのそれに座椅子がそれぞれの場所に旅館の様に鎮座していた。
「お茶でも入れるわね、座って待ってて。紅茶で良かったかしら」
「はい、紅茶で大丈夫です」
「待つ間暇でしょ、テレビでもみる?」と言ってリモコンの一番右上の赤いボタンを押すと最初に映ったのはカイが正座させられてお説教されている部屋の様子だった。
「お兄様?!っていうかこのテ…レ…ビ?という箱は色んな場所を映し出すものなんですか?」モナが思わず立ち上がりそうになるのは自制心で自分を押さえつけながら言った。
「ん?色んな場所じゃなくても、私のスキルが及ぶ範囲なら再放送やらストリーミングやら外の様子やら割と何でも映るわよ。それがどうかしたの?モナちゃん」
(それがホントなら、何でも覗き放題という事)
「お姉さまは、これで色んな場所をのぞいたりは……」
「普段は、殆どつけないわ。普段はササラちゃんが、アニメや特撮やらBLドラマやらずっと見てるし」
思わず、二人で溜息をつくモナと鈴。
「ほら、今はササラちゃん居ないし。モナちゃんもお兄さんのあの後が心配だろうって事で……ね?」
軽くウィンクした鈴に、テレビと鈴を視線が行ったり来たりしながら最後にはモナは苦笑した。
台所から、紅茶をいれてもってくるとモナの反対の座椅子に鈴が座る。
「あっ、お茶請けが無かったわね」そういって、掘りごたつのテーブルを二回指でトントンと軽く叩く。
「モナちゃんは、苦手なモノとかある?」鈴が何気にスクロールさせて空中に浮いている透明な板に色々なお菓子や飲み物の説明が書いてあるそれ。
鈴は何げなく使っているが、モナは驚きっぱなしだ。
「あの、お姉さまこの透明な板は?」「あぁ、これ?これも私のルームの一部でショップって言うの。今お菓子を見てるんだけど」とモナの方に板が移動してきて、お菓子の鮮明な姿見と一緒にどういうお菓子かの説明が横に出ていた。
「プリペイドの残高がそんなに無いから、高いのは無理なんだけど」
そういって苦笑しながら、自分の分のショートケーキ三百クレジットの小さい奴を注文。板に触れた瞬間、何も無かった皿の上にショートケーキが一個現れた。
「わっ私も、お姉さまと同じものを」驚きすぎているが、何も言わないのも失礼なのかと勇気を振り絞って鈴の目の前のショートケーキを指さした。
同じ様に板を操作すると、モナの前の皿にもショートケーキが現れた。
「ケーキは作るとなると手間がかかるから、こうやって買えるのはありがたいわ」
そういうと、ニコニコしながら紅茶とケーキを楽しみ始める。
モナが、鈴が食べる様子をみて同じように一口。
「ん~~~」途端に花が咲いたように笑顔になる。
「安物だけど、美味しいでしょ♪」
(安物とは?!)
「美味しいです、凄く美味しいです♪」
二人で笑顔になっていた所に、ササラが帰って来た。
「ただいも~」
「あら、姉さんおかえりなさい」
「おや?モナちゃん」
「お邪魔しています」ぺこりと頭をさげるモナ姫。
「しばらくガラ躱さなきゃいけなさそうだから、私今からガチホモ戦隊愛ウィッシュ全巻見るから」
「姉さん、モナ姫様が帰ってからにしてよね。姉さんの見るものは、刺激が強すぎるのよ」
うぃうぃ~と手を洗って早々に、空いた座椅子に座ってショップを操作し始めるササラ。
「あっ、そだ。カイ君、あの後どうなったかなっと」
テレビの電源を再びいれると、絶賛お説教タイムで城の宮廷貴族十九人目がカイにくどくどお説教している様子がテレビに映っていた。
「あそこで捕まらなくて正解ね」そういって、テレビの電源を落とすと自分はチョコレートケーキをバクバク食べ始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます