第27話 脱出路の確保はいつも急務だよね
「って言うか、これ取り囲まれてね?」
そういってカイが見渡すと、城のメイドと近衛兵達にすっかり三百六十度取り囲まれそうな状態で包囲の輪が狭まってきていた。
「逃げ場はありませんぞ王子」
近衛の一人がじりっと、静かに詰め寄っていく。
「なんで、俺とりかこまれてんの?」
その瞬間、大きく溜息をつく近衛兵。
「どこの世界に、唯一の王子が単身でワイバーンの群れに挑みに行くなんて。なんかあったらどうすんですか!」
「ワイバーンごときじゃ何万匹いても、何にもならねって(笑)」
カイのその言葉に、うっとなる近衛兵。
そろそろなんか振られるかなと察知した鈴がまるで夜闇に消える日本人形の様に自分のスキルであるルームの扉の中にモナ姫を抱えたまま滑る様に消えた。
(グットラック)
そう書かれた、紙が一枚ひらりと残っていたので状況を察するカイ。
鈴さんに迷惑かけちゃいけないなと、紙をくしゃりと丸めてポケットに突っ込む。
一方、ササラはというと急に地面に寝ころぶと左手で床をタップして叫ぶ。
「創造魔法、床返しっ!!」
まるで忍者屋敷の壁の様に真ん中を軸に、ササラが背中をはりつけた状態でばたむと回って居なくなった。
「おぃぃぃぃぃ!?」
取り残されたカイが、ササラが居なくなった床を一生懸命叩くがもうそこは普通の地面で継ぎ目も無く回転する事も無かった。
「そんな魔法ありかよっ」
勿論、カイはそんな魔法使える訳もなく絶賛大ピンチだ。
「お兄様……」その様子をルームの玄関の防犯用覗き窓から見ていたモナが呟く。
「扉をしめておかないと、外から見えちゃうから我慢してね」
そう鈴がいうと、モナが頷く。
「ちくしょー、鈴さんはともかく師匠はそんな便利な魔法があるなら教えといてくれよ」
その呟きに反応したのか、さっきチェックしたのに回らなかった地面がバタムと回って寝ころんで地面にはりついていたササラがカイの呟きに答える。
「創造魔法はイメージで作る魔法だから、教えろと言われても自分で想像して作ればいいのよとしか」
それだけ言うと、さっきと同じ様にくるりと床が回って慌てたカイが地面を蹴っ飛ばしてえぐるが普通に地面になっていた。
「どうなってんだよ、もう地面に戻ってるじゃねぇか!」
「王子御覚悟!!」
「やっべ、城の兵士倒す訳にもいかねぇし……。ん?創造魔法はイメージが大事??」
思いついた、カイは足場を魔法で創造しようと試みる。
「創造魔法:空中飛び石!」
空中に飛び石の様な魔法の板が階段の様な形で現れ、その上をひょいひょい昇っていくカイ。
「王子が空中へ逃げようとしてますぞ」
近衛が指を上を指さした瞬間、カイが八段目の飛び石を踏み外して頭からどさりと落ちた。
「いってぇ!何で」
再び地面が回って、ササラが現れ「ちゃんと飛び石の素材までイメージ出来なきゃそうなるわよ。想像強度が足りてない証拠ね」
「俺もそっち……」頭をさすりながらササラに手を伸ばすカイ。また、地面に背中を付けた状態で手をタップしクルリンパと地面が回って居なくなるササラ。
「くっそ、付け焼刃じゃ無理か」
「さぁ、王子。お説教の時間です♪」
その後の、カイが酷い目にあった事は言うまでも無い。
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