第26話 その叫びは魂からしぼりでちゃうよね


「師匠、鍋のフタありがとな。でもこれ他人に貸すなよ」そういって、鍋の蓋を返すカイ。


「ヤバい攻撃力してたでしょ♪」「ヤバいのは副作用の方もだ、何社会的に死ぬもん作ってんだ」



「ワイバーンの群れはもう倒したの?」と鈴に話しかけられれば「ばっちりだよ、このヤベェ鍋蓋のおかげで」と答えるカイ。



魔力や斬撃で一匹づつ地上に落として戦うならもうちょっと時間がかかる筈だからなと笑う。



そこでササラは、妖艶な笑みを浮かべ。これ以上ない程の雰囲気を作って、オッドアイに錯覚して見える程顔の右半分と左半分で別の表情をしているように凄みのあるオーラを出してそれを言い放つ。




「メリットデメリットがセットなんて、世の中の常識よぉぉぉぉ!」


「随分デメリットに変なのが多いですねぇ!」


「使い手が地獄に落ちないと、面白くないじゃないのよぉぉぉぉ!」


「お前の趣味かぃ!」


その会話を聞いていた冒険者ギルドの面々が、カイの師匠のロクでなさを確信する。



※今までコントだと思ってたの図



「あら~、じゃ私用に剣とか作って貰えたりするの?」


そこに、ゲイ先生がちゃちゃを入れに来る。


「アンタにならこれよ」そっと差し出す刀身がピンクの曲刀。


その込められた魔力と力に、ゲイ先生が眼を細めた。



「使用方法は、脚の太ももに持ち手を挟んで腰で剣をふる。覚醒起動キーは一角獣(ユニコーン)」


「おぃ」


(ぜってぇロクでもない剣だぞあれ)



そのまま、練習場に消えて行く先生の背中を全員で見送った。


「なぁ、師匠……。あれのデメリットってなんなんだ」


「ん?あれは本人の意識と全く同じ思考パターンを疑似人格としてインストールしてインテリジェンスウェポンとして使える剣よ。無駄に高性能な、クソ程頑丈で、一度インストールすると使い手が変わっても最初の人の疑似人格のままだから相性がかなりでるかもだけど」


「つまり、ヤンデレが最初に持つと剣はずっと病みっぱなしだし。ガチホモが最初の持ちてなら、惚れた漢にしか力貸さなくなるしみたいな。一番最初に作った時は、実験で〇ミームをインストールしたんだけど。男女問わず、ふとともに挟んではっぴ~はっぴ~って腰をくねらせる構えをしないと力を貸さないって代物になったわね。リセットする為に一回全部溶かして作り直しだったけど?」



「それを、ゲイ先生にあげちゃった?」「YES!」



目ん玉ひん剥いて、冒険者達一人一人もササラの頭を叩く。


「痛いな~」「痛いな~……じゃねぇよ!なんつーもん渡してんだ」


「男は侍みたいな?」



「やっぱり、ロクでもない剣だった!!」


「まともなもん作っても、私が楽しくないじゃない♪」


「ったくよぉ、師匠の作るもんは大体何でも高性能なのにロクなことしねぇよな」


「カイ君のロングソードは、何にもついてないわよ」




「修理した時、何かつけようとしてましたよねぇ?!」



「ん?ちょっと待てよ、疑似人格で本人のコピーって事はゲイ先生がインストールされるって事だよな」


「多分、好みの漢に囲まれると出力があがって。美人だったり可愛い女の子が近くにいる程砕けやすくなるみたいな機能になる感じかなぁ」



想像しただけでうぇっとなって舌を出すカイ、額に手を当ててあちゃーみたいな顔をする鈴。



「念話でモーションかけてくるかもしれないわよ?」


「戦闘に集中できね~、最低じゃないですか」



むふーとどや顔のササラ、それを白い眼で見る鈴とカイ。




「ワイバーンの、換金終わったら帰ろう?カイ君」


「そうだな、軽くうちあげでもしようぜ」


そういって、見つめ合うカイと鈴。



「姉さんも、帰るわよ」「おけまる」


三人が去っていく、その背中を見ながら冒険者達は思った。



「「「「「「「「あいつら何しに冒険者ギルド来てんだよ!!」」」」」」」」

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