第25話 見た目で馬鹿にしちゃいけないよね

「おーい、カイウェル大変だ!!」


冒険者ギルドの中で三人でクエストボードを眺めていると、仲間の冒険者が飛び込んで来た。



「なんだよ、血相変えて。とりあえずほら、水でも飲め」


すっと木のカップに水をいれて差し出すカイ、それをかっぱらって水をがぶがぶやる仲間の冒険者。



「サンキュー生き返ったぜ……、じゃなくて大変なんだよ。ワイバーンが群れで出たんだよ」


そこで、土鍋をかぶったままササラが声をかけた。



「美味しくなさそうだから私パスで♪」


「食える食えないでいつも判断すんのやめてもらえます?」


「ぇーだって、ワイバーンって防具にはそれなりに使えるけど。それ以外の肉とか全然おいしくないじゃない」



(いや、防具に使えたら金にはなるだろう何言ってんのこの人)



「わーったよ、俺が行く。王都に来られちゃ被害もでるだろうしさ」


「助かるよ、カイウェル。今、お前以外の高位冒険者みんな遠征中だからなぁ」



「姉さん、カイ君にあれ貸してあげたら?」



「ほぇ?あーあれ?カイ君ほいこれ」


そういって、ササラが差し出したのは鍋の蓋だ。


「超金剛盾式鍋ノ蓋痛、これ貸してあげる」


※ちょうこんごうたてしきなべのフタツウと読みます。


「おぃ、師匠これ鍋の蓋だよな」


「何言ってんの、カイ君RPGで盾といったら鍋の蓋でしょ。それを鬼強化したものがこれよ、勿論鍋の蓋としても使えます♪」



「どう見ても、鍋のフタにしか使えねぇよ!何これ、安物のペラペラの鍋のフタかよ」



(ワイバーンの防具であんなこというのに、それを倒しに行くのに鍋の蓋って……)



「とりあえず、鈴さんいってくるわ!」


「うん、頑張ってね♪」



街でてすぐの所で、上空にワイバーンの群れを見つけたカイ。



「ちっ、もうあんなとこまで!」



そう言えば、あの師匠が普通の鍋のフタなんか渡す訳ねーからな絶対なんかしこんでやがんぞ。


毎回酷い目にあわされ続け、謎の信頼がそこにはあった。


「何々、鍋の蓋の取っ手についた丸ボタンを鍋の蓋を敵に向けた状態で押す?」



鍋の蓋から、ビームボタンを押している間ずっとビームが出続け。横に振ったらワイバーンの群れのビームが通ったトコだけ肉片すら蒸発してワイバーン達が墜落してきた。




「ぃ~なんだよこれ、あっぶねぇな」



鍋のフタに、凄くちっちゃい字で注意書きを見つけ。まぁこれだけ危ないもんだから注意もあるよな見たいな諦めの境地でカイがそれを読む。



えー何々?この鍋の蓋は使用者の魔力を強制的に絞り出して使います。使いすぎると死ぬこともありますので用法容量守って正しくお使いください。初期症状として、お腹の調子が悪くなり括約筋よ俺に力をと叫びたくなる様な腹痛に襲われる事があります。




瞬間に眼が(==)と遠くを見つめるカイ。これ自分はある程度レベルも魔力もあるから副作用が出なかっただけで、並大抵の奴が使ったら「クソッタレ!!」とか叫びながら厠ダッシュしなくちゃいけないやつじゃん。


しかも、モンスター討伐に使うって事は大抵森の中とかダンジョンとかで厠なんて近くにあるわけねぇ。


要するに、モンスターに食われて死ぬか。社会的に死ぬか選べって事かよ、なんちゅうおっそろしいもんつくるんだあの人。



「まぁ、この攻撃力と実用性なら使う奴いるかもだけど」



眼の前で、ワイバーンの群れですら簡単にスクラップにしたの見てたし。強制的にってことはみんなで鍋のフタもって発射したら均等に魔力抜かれるとかだろ。



(鈴さんは多分この副作用知らずに、俺に薦めてくれたんだろうが……)

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