第24話 勝手に魔改造しちゃったよね
「なぁ、師匠これはいったいなんだ?」
眼の前に置かれているのは(元)カイの愛用のロングソード。
「カイ君のロングソードを修理して、ちょっと改良したんだけど?」
「ほら、身体能力が上がり過ぎてて直ぐ欠けたりするって言ってたでしょ。だから頑丈さをあげてみました♪」
眼の前のそれを見て一言カイが言った。
「これ、あれじゃね?」「どっかの神社の御神体と言って欲しいのです」
どうみてもややそっているそれは、カイには凄く見覚えのあるものだった。
「折れないし、長持ちだと思うけど?」
「言い方!!」
「ここに魔石をいれて、起動コマンドを叫ぶと二分だけステータス二百倍になるおまけつき!」
まるで怪しいセールスマンの様に邪悪な笑みを浮かべながらササラがカイの耳元でささやく。
「一応きこう、その起動コマンドは?」
「ビックマ…」「もういい大体わかった」
「元に戻して欲しい(キリ」
「も~しょうがないなぁ」
「師匠、俺は普通のロングソードがいいです」
いそいそと、しまって。「明日までになおします」と真顔で言ったのでカイもそれ以上は何も言わなかった。
「それはそうと、お城の石鹸香りも泡立ちもぜーんぜんだったのでコレ作っておきました」
ササラの手にあったのは朝顔をクリスタルにしたような紫水晶がごとき石鹸。
「これは王冠(クローネ)って石鹸、まぁ使ってみて肌に合わなかったら回収してちょうだい」
「サンキュー、所でこっちにシャンプーとかリンスとかねぇんだけどそういうのある?」
「面倒だったので作ってません、鈴のとこで買ってきたら?」
「絶対師匠が作った奴の方がいいやつに決まってんじゃん(笑)」
「あら、カイ君も姉さんからそれもらったの?」
そういって、如何にも風呂上りのパジャマで現れた鈴。
思わず、カイが二度見した。
「五年位若返ってね?」「ん?あー石鹸使ってくれたんだ」
「姉さん、これ凄いわね。髪の毛なんかこれよ」
手で髪を持ち上げて落とすと、まるでスローモーションで零れていく様なサラサラのつやつやの髪になっていた。
「あれ?固形石鹸ですよねぇ?!」「水に湿らせて、こう手ですりすりして髪に塗って洗い流すだけでシャンプーとしてもご使用いただけまぁす」
どや顔のササラ、顔を思わず覆うカイ。
「これ鈴さんと、俺と他に誰かにやったか?」
カイが恐る恐る聞くと、「モナちゃんにはあげたよ?」と恐ろしい返答が帰って来た。
「やっべぇぞ!それ」
その時、ドドドドドドドドドドドドドドドと何かが恐ろしい勢いで走って来た。
「やっぱりぃ!!」
そこには血走った眼のメイド達を引き連れて、血走った眼のガナーシャが走りこんできた。一端鈴を見た瞬間に天使の微笑を浮かべながらペコリと鈴に会釈をするとカイが今もらった石鹸を神速でぶんどった。
「俺が…反応できないだと……」そのまま嵐の様に去っていく自分の母親の背中をみながらカイが呟く。
カイの方から見ると、妖怪→天使→妖怪の順に顔が変化している。
「ねぇ、カイ君。新しいのあげようか?」
「おぅ……、サンキュ」
ボロ雑巾のありさまのカイに、ササラがしゃがんで話しかけた。
「姉さん、新しいのをあげても同じように取られれちゃうと思うの」
どこか優しい顔で達観した鈴が、カイを起こしながらそう言った。
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