第19話 話が全然かみ合わないってあるよね
モナ姫は、ササラの術が如何に美しく幻想的であったかを力説するが周囲からは一向に理解を得られないでいた。
それもその筈、周囲の大人が知っているササラの術と言えば先日も騎士団長が跳び箱の様な台形の土に固定され徐々に頭頂部の面積を減らして三角に形状を変えていくようなものだったからだ。
「そっそうか……」これが周囲の大半の大人が見せる反応で、あれが幻想的にはどうやっても見える筈が無かった。
「も~何故皆さまは判って下さらないのです!」
ぷりぷりと怒るかわいらしいモナの姿に、城のメイド達がほっこりしている。
「もすもす~」そこへ、ササラが軽い調子で歩いて来た。
「あぁ♪お姉さま」パタパタとササラの方にモナ姫が走っていく。
「モナ姫様…、お元気になられて」それを嬉しそうに見るその場の兵士やメイド達。
(お姉さまとは随分懐かれましたわね)
そんな事を思う、メイドのピーリカがモナの後ろをついてくる。
「お姉さま~、周りの大人達が酷いのですよ!」ぷりぷりと怒っても実に可愛いだけのそれにやたらササラもほっこりしていたのだが。
「お姉さまの術は綺麗で幻想的で美しいのに、皆筋肉筋肉と……」
その瞬間に、ササラが苦笑した。
「あ~、私の術って好きな様に変えられるの。威力とか強度は流石に戦闘得意なカイ君の方が凄いわよ。戦ってる時は戦う様に変えてるから、そう思われてもしょうがないというか」
「そうなのです?」
※あくまでそういう術だという事にして、自分の趣味全開である事は言わない狡い女
「そうね、例えばだけど」そういって、左足で地面をとんとんと二回つつく。
「あっ、カイお兄様」そこには絶対そんな爽やかな顔をしないであろうカイウェルが居た。
「今、私が魔法で作ったカイ君の偽物がこれ」
「凄いですね……、こんな一瞬で」
そっと、モナの前にカイの偽物が膝をついて両手を重ねながら言った。
「どうか、ボクの手を取って頂けないだろうか」
カイなら絶対に言わないであろう台詞をモナ姫に向かって優しく微笑を浮かべながら、カイの偽物が言った。その瞬間に、胸をうたれ顔を真っ赤にしているメイドが多数。
モナの手を優しくとって、軽く手の甲にキスをする偽物。
ちなみに、モナ姫に見えない様に顔を背けてササラは「うぇぇぇぇぇぇ、気持ち悪ぅぅぅ」とか小声でやっていた。
※自分でやっといて、盛大に自爆。
手をとったモナ姫がカイウェルの偽物と楽しくすごし、椅子を引いたりモナをお姫様抱っこしたりしてその度に後ろのメイド達が騒がしい。偽物は、メイド達にも優しく。理想の王子像を、そのまま具現化したようにふるまい。臣下達なぞは涙を滝の様に流しながら、「遂に王子がまともになって」等と城内で騒がれていた位だった。
夕方になって、ササラが「そろそろ消すね」といって指を鳴らすとカイの偽物は綺麗さっぱりその場から消える。
「凄い、魔法ですね」ピーリカが呟けば、後ろのメイド達は「理想のカイ様よ~♪」とかやっていた。
「私の魔法は私の意思で色んな形や大きさに変えれるし、貴女の手を優しく取ったり物質を持たせたりとかもできるから人によって印象が違うのは当然よ」と人差し指で内緒ねとやりながら去って行った。
「よく判りました、お姉さま♪」輝く笑顔でモナ姫が去っていくササラに手を振る。
※その後、部屋に帰ったササラが悶絶ローリングしながらマーライオンやってたのは読者しか知らなくていい事だ。
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