第18話 たまにはまともな魔法もいいよね
数日後、あの主治医は解雇され。
そののち、研究所と医者を育てる医療機関が城に併設され。
それは、ササラが民間療法で効くかも判らないものに頼ってるからあんなことになんのよという指摘を受けた結果でもあった。
「お兄様~~」幼いモナ姫がカイに飛び込んでいく。
その元気な姿をみて、カイがにっこり笑う。
モナ姫の薄い栗毛に蒼の透き通る瞳がしっかりと、カイをロックオンしている。
風にふわりと舞う、腰までの長い髪に白いリボンが良く映える。
そんな元気になった妹をしっかりと抱きとめると、視線を合わせる様に膝を落とす。
「すっかり、元気になったみたいだな。流石、師匠の薬だわ」
「おっすおっす、カイ君おはよ~」
「噂をすれば、師匠。先日はありがとな」そういって右手を差し出すと、赤ジャージの裾でごしごしと手をふいた後にすっとカイの手を握りしめた。
「先日は、ありがとうございましたわ」
輝く笑顔のモナが、ササラに話しかけるとササラは体を抱きしめる様に言った。
「うぅ~、そういうお淑やかな清純な顔を見ると鳥肌がぁぁぁぁ」
そんな様子のササラをみて、カイとモナが思わず苦笑する。
「本当、師匠で安心したわ」あきれ顔のカイに、モナが首をかしげる。
「何よ、腐に生きる私にこんな純真な子の笑顔は真夏のクーラーガンガンの部屋から廊下に出る所並にきついのよ」
それにしても、あの後一週間ぐらい寝てたよな。
「あの後、アンタも大変だったんだって?」
「あぁ、だけどもし何か無茶言ってきたら脱出させるから心配すんな」
「私は妹連れて勝手に脱出するわよ。もちろんカイ君以外全部ぶっ壊してくけど」
「そうならない様に、鋭意努力するよ。鈴さんには出ていかれたくない」
「私は、出ていってもいいと?」
「いつでもどこでも好きにしてどうぞ」
そういって、二人で楽しそうに笑うカイとササラ。
「鈴さんという方がお兄様の想い人なのです?」とモナが尋ねるとカイはモナの方を向いて言った。
「このHENT〇Iチビよりもずっとずっと綺麗で素敵な俺の大事な人さ。鈴さんの為なら俺は王子じゃなくていい」
心からそう誓うように笑うカイに「お兄様……私その鈴さんが少し羨ましゅうございます」と笑う。
「尊い、カイ君モナちゃん私に頂戴!」「やらねー」
口元を押さえながら、眼をウルウルさせてそんな事を宣うササラ。
断固拒否するカイに、微笑みながら兄の手をそっと包むモナ。
「私もお兄様と離れ離れになるのはちょっと……」そう言いながら微笑む。
「全然似てない兄妹ね」「ササラさんと、鈴さんほどじゃねぇよ。晴天に輝く月と牛乳瓶の紙のフタぐらいちがうじゃねぇか」
「なんだとぅ!」「なんだよ」
二人で、杖と剣に手をかけた瞬間ササラの頭をパコンと軽く叩かれたのでササラが後ろをみると鈴が怖い顔で立っていた。
「姉さん、モナ姫はまだ小さいのよ」
「ラジャー、妹よ~」ふざけながら敬礼する。
「そりゃ~師匠の魔法は子供のいる所じゃまずいよな」今までの魔法を思い出しながら、思わずそんな事を呟く。
「そうなのです?騎士団長から、ササラ様は非常にお強い方だと伺っておりましたので。あの魔法使い大嫌い騎士団長がべた褒めする魔法使いの魔法を見て見たかったのですが……」
モナがしゅんと可愛く小さくなると、またササラが「とっ……尊い」と口元を押さえた。
「しょうがない、戦闘用じゃないからちっちゃくなるけどそれで良ければ出してあげちゃう♪」
杖でとんとんと地面を二回やると、各属性の球がモナの手の平サイズで浮かび上がる。
「飛べ、蒼い鳥」水球が鳥の形をとって美しくモナの周りをまわりながらまるで水の雫を光に反射させてキラキラと輝く。
モナの手の甲に一羽の水で出来た鳥を止まらせて、首を傾げさせる。
「わぁぁぁ~~~♪」そのモナの輝く笑顔に、ササラが鼻血を僅かに出かかったのを慌ててポケットからティッシュをだして鼻につめながら次の魔法を準備する。
「咲き誇れ、炎の華」ゆっくりと、しかし光を強めながら炎の華が次々とつぼみから花開いて炎の花園をつくり。炎の花がアーチをつくって、まるで祝福する様に舞う。
空中にレースの刺繍で絵を浮かび上がらせている様に、様々なものを創り上げる。
「師匠…、すげぇよこれ!凄すぎ」
「奏よ、土の楽団」空中に浮いた土の楽器が、天上の調を奏で始めればそれはまるで妖精の国に迷い込んだような幻想的な世界が広がっているではないか。
光のリボンがまるで、紙吹雪の様に舞い虹色に変化していって。更に風が花びらや光を舞っていた。
徐々に、土くれから色がつくのも粋な演出になっていた。
一通り、凄まじく豪華なメリーゴーランドの様に音楽を奏でモナを楽しませるとササラがフィンガースナップを左手で決めそれを合図に全ての魔法が消える。
最期に、モナに向かってゆっくりおじぎしてにっこり笑顔。
「「「ブラボー!!」」」思わず拍手した観客三人。
ほぁ~~~とした顔でモナがササラをみると、ササラがゆっくり頷く。
「師匠そんなのもできたんだ」「うるさい」
どこか赤い顔で照れながら、ササラが逃げる様に去って行った。
「あれが、普段漢系しか出さない師匠の本気の創造術かよ……」
カイが苦笑しながらぽつりと言えば、鈴も隣で笑いながら言った。
「いつもこっちを出してれば、私もドン引きせずに済むのだけど」
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