第15話 勉強や訓練ってかったるいよね


「あー、熱っついな」シャツ一枚で水をかぶりながらそんな事をいうカイ。


「アンタはまだ男だから、そうやって水かぶってりゃいいけど私なんかこれよ~」


「師匠……ずいぶん涼しそうだなそれ」



カイが水を滴らせながら後ろを見ると風と水でいい塩梅に冷風を作り出して、例の創造魔法で団扇と手を作り出して結界で冷風が逃げない様にコーティングしているササラがいた。


「鈴さんは……、外きたらまずいよな」


「あの子が、この暑さの外に居たら倒れちゃうわよ」


「こっちには、クーラーとかエアコンとか無いもんなぁ……」


「ルームの中は、エアコン全室完備だったけど?」


「風呂もトイレも?」そう尋ねるカイに無言で頷くササラ。



「マジでかぁ~~~、どんだけ便利なスキルなんだよ」


「カイ君は戦闘方面に、私は生産方面に強いけどムリすれば他の事もできなくはないって感じの構成だったけど。あの子のは、ライフラインに特化してるもんねぇ」



「俺が守らなきゃな……」


そういって再び、剣の素振りを再開するカイ。



「あんた、そういう所は真面目よね~」


「師匠は人生ごと、不真面目過ぎんだよ」



「久しぶりに、模擬戦でもやってみる?」



「腕六本で頼むわ」「りょーかい☆」




二人で、王宮の広い庭で構えるカイとササラ。





剣と魔法で創り出した腕で切り結び、その音が庭に響く。




「っていうか、俺戦闘に特化してるはずなのになんでこんな攻撃通らねぇんだよ!!」



「どっかの騎士団長(笑)より、ずっとやれてると思うけど?剣一本で、魔法の腕六と斬り合ってしかも私も結構危ないの二つ三つあったし」



カイがその膂力で、踏み込んで剣をぶつける度にササラの腕がうっすら消えかかってその度に他の腕がサポートに入り。その間に、ササラが力を込めて腕が元通りに戻るを繰り返しながら二人が会話した。




「涼む為の腕と合わせて十本出しながら、突っ立って表情も変えない師匠には言われたくねぇよ!」




「私も、妹守らなきゃね。外にいる時は、色々危ないもの」



「あぁ、そうだな」



お互い見つめながら、にやりと笑う。



「ただ……、カイ君不意打ちは気をつけないとダメよ」


真剣な眼でササラがカイの後ろを指さした、そこにはへその下辺りにドラゴンの頭をつけた魔法で創り出された猫耳網タイツハイレグの漢が立っていた。



※ドラゴンの頭の中心があるのはベルトのバックル辺り



ドラゴンの口からブレスがうちだされ、それをカイは咄嗟に上半身を横に振って躱しながら振り向いて魔法剣を発動。ブレスごと両断し、ぐるりとササラの方を向いた。



「あっぶねぇ!何すんだよ師匠」


「あれをあの至近距離でかわしますか~、やっぱカイ君は強いね~」


ふてくされるカイが庭を見ると、地面が焦げていた。


「「ァア~~~!」」二人してやっちまった事に気づいて変な声が出る。



それを偶々みていた庭師の爺さんが、血涙を流しながら慟哭した。



「王子ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


「庭師のおじいさん泣いてるよ」「師匠のせいだ師匠のっ!」



二人して、神速で撤収し。その日は、一日おじいさんの嘆きが聞こえていた。

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