第14話 冒険者ギルド再びだよね

「ほら、師匠がダイエットとかいって狩って来たゴブリンの耳」


受付にそれを出したカイ、受理しますと言って定型で返す受付嬢。



「鈴~、もうちょっと運動しないとお腹のお肉がヤヴァイ」


人前を気にせず、ジャージをまくって自分のお腹をつまんでいるササラ。


「姉さんは、少しビールかオツマミを控えた方がいいわ」


「イヤでゴザル」


それを聞いて、再び溜息をつく鈴。



「ゴブリンは、安くて誰も狩らないのに数だけ増えちゃうから当ギルドとしても凄く困って居まして……。あれ?これゴブリンキングの耳じゃ……」



「キングも居たんだけど、師匠にとっちゃダイエットする為の的と変わんねぇから」


「あれは、なんというか本当に酷かったわ」


頬に手を当てて、困ったようにいう鈴。カイも、キングがどれだけ脅威になるかは知っているのだがそれ以上に自分の師匠の頭のネジの外れ方も異次元にヤバい事を知っている。



「そんな訳で、キングはもう居なくなってるから緊急は出さなくていいぜ」


そういって、苦笑しながら僅かなお金を受付から受け取ってササラに渡した。



「ほれ、今回俺達なんもしてねぇからな」そういって笑う。



「これで、油ギッシュラーメンで一杯やりたい~」


(姉さん……、それじゃいつまでたってもお腹のお肉は減らないわよ)


カイも同じ事を思ったのか、思わず突っ込む。



「師匠~、折角あんなひでぇやり方でカロリー消費したのに意味ねぇって」



「う~にゃ~、油ギッシュ背油チャーシューチョモランママシマシラーメンライス付が食べたいの~」


「可愛く言ってもだめだからな……、てか油ギッシュラーメンより胃が死にそうな位パワーアップしてるじゃねぇか!!」



「若いから大丈夫でぇす!」「姉さんが大丈夫でも、私の部屋ん中までニンニクとかの凄い匂いで充満するからやめて欲しいんだけど?」


「ズキュンドキュン☆彡な、ボリュームと香りがいいんじゃないの」



そんな会話を冒険者ギルドの中でしているのだが、他の冒険者や受付嬢には油ギッシュラーメンや背油チャーシューチョモランマ……なるものが何かは判らない。



「それはそんなにうめーのかよ!」机に座ってエールを飲んでいた、冒険者の一人がそんな事を言った瞬間。



「あれの素晴らしさをしらないとはっ!」そんな事を言いながら、ササラが自分のアイテムボックスから油ギッシュラーメンの作りたてを丼で出すとどかっと眼の前に鎮座させて凄みのある顔と声で言った。



「食え、食えば判る。一口で理解できる、さぁ食ってみろ!!」


赤ら顔で、おっおうとだけ答え冒険者が一口


「なんじゃ~~~こりゃ~~~!」


白眼を剥いて、吼える冒険者。みるみる内に丼の中身が消え、最後の汁一口まで飲むと言った。


ササラが勝ち誇った顔で、机に手を置いて言った。



「美味いでしょ?」「最高だ……」


輝く笑顔で、思わず答え親指をグッドの形に立てる冒険者。



ただ、その油ギッシュラーメンの匂いが冒険者ギルド中に充満して苦手なものは鼻をつまんで手でパタパタやったり。あるいは、風の魔法で外に向かって匂いを送り出しているものもいた。


特に、獣人の鼻が利くものは悶え床に転がっているものもいた。



「成程、これは強烈だ」


その匂いと味で、妹が文句を言う理由もそれでも食べたいという姉の言い分も同時に理解できてしまう冒険者。



「ったくよ~、何やってんだよ師匠帰るぞ~」


「もう~、しょうがないなぁ」


そういって、ギルドの扉から三人で出ていく。


その背中を見ながら、冒険者が呟く。



「あの~、丼?忘れてますが」

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