第13話 モンスターを軽く捻ってみるよね

「さてと、モンスターをサクッと狩り飛ばしてお金を稼がないとね♪」



そんな事を言いながら、冒険者ギルドにやって来たササラ。


「師匠、幾ら美味いからっていってぬきおビール飲みすぎなんじゃない?」



角ばったガタイに黒いサングラスの厳つい漢がプリントされた、黄金に輝く缶を思い出しながらカイが笑った。



「流石に、ロングで十本はあけ過ぎたかもしれません」


「師匠……、つまみに何食ったよ?」


「シモフリバター炒め?」


可愛く首をかしげながら、言ったササラにカイが溜息をつく。



「デブまっしぐらじゃん!!」


「今からダイエットに、ゴブリン虐殺にいくんじゃない!」



鈴もそれを聞いて、思わずため息をついた。


「ゴメンね~、カイ君」


「いや、ゴブリン増えて困るのは確かだから鈴さんが謝ることじゃねぇよ。報酬やっすいからほったらかしになりやすいんだけど、あいつらGみたいに増えるからなー。上の冒険者はあんなんやらねぇし、下の冒険者じゃ囲まれたらヤベェ上にパン代にもなりゃしねぇし」



西門を顔パスで通過して、少し遠めに見える森の側にゴブリンがたむろっているのが見えササラが粘つく笑顔になった。


「さ~て、鈴とカイ君は何もしないでね」


「毎回、俺達なんで連れまわされてんだ」


「そりゃ~、保護者だからでしょ♪」


「そう思うなら、もうちょっと自重してくれよな」


「いやでぇぇす(笑)」


「だよな(笑)」



「あっ、気づかれたよ」鈴が言うや否や一斉に飛び掛かってくるゴブリン達に向かってまるで野球のバットを構える様に立つササラ。



「ふぉう!!」


ササラが杖をフルスイングして、先頭を走っていた小柄なゴブリンの腹に命中吹っ飛んでいったゴブリンが他のゴブリンを巻き込んで空へ飛んでいく。




「たまや~♪」そんな事を言いながら、もう一度バッターボックスの様に構える。



怒り狂った、ゴブリンが一斉に飛び掛かってくるが再びササラのフルスイングで先頭に居たゴブリンが腹をうたれて宙を舞い後ろのゴブリンを巻き込んで吹っ飛んでいく。



「あれどうなってんの?」


「魔法で、簡易的に視界を私だけ見える様にしてるから当然私に真っすぐ襲い掛かってくる。そこを私が、杖でホームランすれば一直線に襲い掛かってくるゴブリンが吹っ飛んで後ろも巻き込んで転がるって訳ね。無論、死ぬまで♪」



「「うわぁ……」」


「懲りたり襲おうと思わなければ、ループから抜け出せるけどゴブリンじゃ期待できないわね~」


そういって、再び杖をバットの様に構える。


「カマン~カマン~」


そういって、後ろを見ると一緒になってゴブリンキングもセットで襲い掛かって来ていた。


「師匠!あぶねぇ!!」


「大丈夫~大丈夫~」


そういって、杖に力を込め軸足を地面でぐりぐりとやって二回トントンとつま先でやって構える。


「ふぉ~~~う!!」今までの掛け声よりもよりはっきりと聞こえ、ササラの声と同時に杖が降りぬかれてゴブリンが飛んでいき。飛んでったゴブリンが、ゴブリンキングの腹に直撃してゴブリンキングがその場に蹲る。



それを見てカイと鈴が、ササラの後ろで固まる。


「あちゃ~、あれキングね」


そういって、まるで例の腕を周りに召喚してゴブリンキングをバッティングセンターの的みたいに立たせてそのお腹にわざわざ〇をお腹に書いた。




「うてよ~、うてよ~、うてよ~♪」そんな事を言いながら、千本ノックの要領で次々と魔法球を作り出しては杖でうちまくる。



当たる度に、ゴブゴブうめき声をあげているが努めて笑顔で無視した。



「あー、はなりたくないんだけど俺」「姉さん……」



ドンドン目の前でボロ雑巾の様になっていくゴブリンキング、それを見てドン引きするカイと鈴。



「いや、いい汗かいた~」ハンカチで額を拭きながらそんな事を宣うササラ。



「討伐部位ちゃんと残ってんだろうな……」



「大丈夫でぇす!、左耳だけばっちり無傷だよカイ君」


カイがそろりそろりとボロボロになったキングとゴブリンに近づいて確認すると本当に耳だけ綺麗な新品同然で残っていた。他の全てのパーツが、ボロボロなのにだ……。



「相変わらず、やべぇコントロールだな」


「相手をギリギリまで殺さない様にしないと、実験動物が最後まで使えないじゃないですかやだなぁ時代はセコですよセコ♪」


「姉さん、モンスターは実験動物じゃないわよ……」



「ぇ~」不満たらたらの表情で妹の方を見る。


鈴は、それをジト目の無言で返すだけだ。



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