第11話 買い物って楽しいよね
「は~、すっとした♪」ギルドを出ながら輝く笑顔でその様な事をのたまうササラ。
呆れかえりながら、後ろからついていくカイと鈴。
「ねぇ、折角お金あるし。鈴ちゃんのルームで買い物しない?」
「そうだな、俺も昨日フロ入った時に使った石鹸が泡立たな過ぎて泣けてきたし生活用品とか色々買いたいし」
そう言って、適当な路地の突き当りに扉を出して三人が入っていき。居間にあるテーブルに三人がすわって話を続けた。
「カイ君、よくこっちの風呂で我慢できたよね?」
「しかたねぇだろ、城の中でルームの風呂貸してくれなんて言ったらどうなると思う?バレたら色んなメイドや貴族がひっきりなしに来ると思うよ?」
「あー、そういえば確かに。調理場に行った時とか使ったけど、デカいアイテムボックス位に思われてそうよね」
「こっちじゃ、デカいアイテムボックスってだけでもやべーっての」
「実際は、金や交換するモノさえあれば無限に物資買えます。設備が全部向こうの、それも最新型のボタン押したら全自動の冷暖房完備風呂とか。システムキッチンとかだからな」
「私の部屋のベットの下にある秘密工房も、全部再現されてたよ」
その一言に、鈴が固まる。
カイは、何それみたいな顔で鈴の方を向くが鈴は脂汗をだらだらと垂らしながらまるで化け物でも出たかの様な表情をしていた。
「姉さんの秘密工房って、あれよね?」おそるおそる尋ね。
「うん、あれよ」さくっと答えたササラ、崩れ落ちる鈴。
「何で!あれがあるってヤバすぎるじゃないのよ!!」
その様子に、慌てて崩れ落ちた鈴を支えながら起こすカイ。
「な…なぁ、その秘密工房って何なんだよ」
「平たく言うと、薬剤や情報端末や薄い本作る為の機材やら武器やらとにかく姉さんが色んなもの研究したり作る為にバレたらヤバいモノとかの資料とかも平積みされてる感じのヤバい部屋よ。滅毛剤使った辺りから怪しいとは思ってたけど……」
自分のスキルなのに、カタカタと震える鈴。
「あまりにも見られたらまずいモノが多すぎて、現実でもベットの下に厳重な隠し階段に七重のセキュリティがかかってるの。把握してなかったとはいえ、向こうじゃ完全にアウトなものも満載あるし。多分、こっちでも使おうものなら問題にしかならないものが沢山あるわ。カイ君…、マズイわよこれは」
(ごくりと喉がなる)
「最悪、この国の中なら俺が何とかするよ」
そういって、鈴の両手を取る。
「カイ君……」
「ちなみに、どんなのがあるんだ?」
「体にかけただけで、強制的に種無しにする去剤や何を食べても雑巾の搾り汁の味にしかならない味滅剤とか……。部位欠損も、皮膚で1Cm四方以上残ってれば人間を元通りに戻す復活剤とか」
「薬剤だけでもパネェなおい!!」
「後は…、どんなブラック労働で肉体疲労で死にかけても文字通り疲労が溶けるように無くなる入浴剤の疲労融解剤とか」
思い出しながら指を折っていく鈴に、カイが思わず突っ込む。
「絶対、存在しちゃいけないものしかねぇな」
「そうそう、どんな場所でもそれを土地に撒くだけで不毛の大地に変える緑塩化剤なんてのもあったわ♪」
両手を合わせて思い出せた事を嬉しそうにいう鈴、死んだ眼になるカイ。
「絶対絶対ぜーーーったい外に出さないでもらえます?それ!!」
「大丈夫よ、ルームは私が許可しないと内からも外からも物質でも出入りできないし」
「じゃ、なんで滅毛剤が外に出てんだよ……」
「あれ見てから慌てて、ロックしたの。デフォルトだと鍵がかかって無かったみたいです、ごめんなさい」
「うん…、判った鈴さんは悪く無い。落ち着いて、今後出さなければ大丈夫だから」
「作り方なら覚えてるから、外で作ればいいじゃんか」
そんな事を宣う姉に、またふらりと崩れ落ちる妹。
「絶対、作んな!」
それを支えながら、怒鳴るカイ。
「ちぇ~」そういいながらササラは、デリバリーをポチポチと操作し思い思いの生活用品を購入していく。
何とか立ち直った鈴とカイの二人も、自分が買いたかった生活用品を購入しそれぞれのボックスに入れた。
「しっかし、本当便利だな~これ」
トントンと指を指しながら、透明なパネルを操作しながらカイが言った。
「ありがたや~、ありがたや~」ふざけてお祈りでもする様に透明なパネルに向かって手を合わせるササラ。
「買うモノかったら、外にでて城に戻ろうぜ」
「そうね~、遅くなるとまたカイ君が簀巻きになっちゃうしね」
「勘弁してくれよ~」そういって、三人で笑った。
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