第9話 ギルドで突撃レッツゴーだよね


「そういや、一応ギルドカード作っとくか。素材売れるようになるし、お小遣いもいるだろ」


そういって、カイは鈴とササラを案内する。



「ほー、それで可愛い女の子である我々は絡まれる訳ですね判ります」


カイと鈴が(==)の遠い目をしながらいった。



「鈴さんはともかく、師匠が可愛いとかまぁ見た目だけはそうかもだけど」


「あぁん?!」


「まぁまぁ、ササラちゃん。いつまでもカイ君に驕って貰う訳にもいかないし、このままだとぶくぶく太っちゃうわよ」


鈴がなだめる様にいうと、ササラの顔が引き締まる。


「太るのはマズイであります……」



そんな事をやりながら、冒険者ギルドの扉を開けると筋肉質の漢がカイに向かって飛び込んでくる。


バックステップからのロールで、それを躱すカイ。



「あらぁ~、カイ様じゃないの~」


しなを作りながら、くねくねとモデルの様に懲りずに歩いてくる漢。


「おぉ~、カイ君紹介してよ。この素晴らしい筋肉の人は?」


眼を輝かせて、尋ねるササラに指を指しながらカイが言った。



「これか?王都冒険者ギルドの教官、ゲイモーホー先生だよ。行動も見た目もキモ過ぎるが、剣士の教官って意味ならAランクの連中も一目も二目も置く強さの漢」



グルグルとはしゃぐ子犬の様にゲイモーホーの周りをまわりながら、別の意味でキモイ動きをしながら眼を輝かせるササラ。




「ゲイでいいわよ♪」



(なまえぇぇぇぇ!!)


と心の中で突っ込みながら、微笑みの仮面を崩さない鈴。


「カイ君、こちらのお嬢さん方は?」


「俺の彼女と師匠」


「あ”ぁぁん?!」


途端に、野太い声で切れかかる先生。


瞬間に、いそいそとテーブルや椅子や酒を片付け始める冒険者達。


「カイ君の彼女は私よぉ!」顔を真っ赤にして体中の筋肉に血管が走る。




(キモさが四倍増になった)




「アンタは男だろうが、百万歩譲っても彼女じゃねぇ!!」


叫ぶカイ、一瞬だけ乙女の顔になるゲイ。


「彼氏でいいわよ♪」


「カイ君墓穴……」溜息をつきながら鈴が呟く。


「俺はノーマルだ」真顔で鈴の両肩に手をのせ言い放つ。



「カイ君につく悪い虫は私が退治しなくっちゃ」構えるゲイ。


「ピットホール」床に空間魔法で黒い穴をあけるササラ、首から上だけ床の上に出されて固定されるゲイ。


「発動するタイミングが、まったく判らなかったですって!」


眼をかっぴろげるギャラリー、今から何をするか判ってしまった鈴とカイがゆっくり後ろにじりじり下がる。


「それだけ、素晴らしい筋肉なのに胸毛にもみあげに長髪なのが実にもったいない。この滅毛剤で、全身とぅるんとぅるんにしちゃおう♪」


紫のごぼごぼいって、如何にも呪われそうな液体を胸元から取り出すササラ。


「さぁ!スキンヘッドになるお時間でぇぇす。ワキも腕もあっちもこっちも一切毛が生えなくなります。呪いじゃないから解呪もできないし、私渾身の作品なのでその辺の薬剤師が逆立ちしたって産毛一本生えません。塗った場所が卵肌の一品。ゴーファイヤー」



受付嬢は思った、それ場所を選んで塗るなら手入れいらずで凄くない?と。



「はい♪皆さんもご一緒に~。毛よさらば!」


自分達がそんなもんかけられてはたまらないので、全員がコーラスの様にハモる。



「「「「「「さらば!!」」」」」」」


「貴方たちぃぃぃぃぃ!」


いつの間にか、実験用ゴム手袋をつけて桃色エプロンを装着したササラが例の筋肉型の精霊の部分召喚で頭を固定して「はい、ドバー」とかいいながら頭にかけた瞬間除草剤をかけられた植物を早回しで見ている様に髪の毛が枯れて床に落ちていく……。



「にしても、師匠すげーなゲイ先生の踏み込む位置完全に把握してあの動きより早く黒い穴を出して閉じ込めて固定して動けない様にするなんて」


そのカイの呟きに、にっこり笑いながらササラは答えた。




「何いってるの?私は歴戦の筋肉フェチよ。その筋繊維一本一本の動きをつぶさに読み取って、生物なら相手の動きが読めるに決まってるじゃない♪」



(ササラちゃん、それアウトよ)鈴は姉に心の中で突っ込みをいれる。



「創造魔法で筋肉の漢達を練り上げるのに、それだけのイメージを持たないと固まらないしね」


そういって、海パンの色で属性が判る角刈りの漢達がそれぞれポーズをつけてササラの背後に現れる。


「流石にあれのサイズは、カイ君のガン見して覚えるしかなかったけど」


瞬間、ゲイ先生が穴から脱出して眼の光を取り戻し筋肉精霊のパンツの中をチェックしようと限界を超えたダッシュするがそれを一瞬で消すササラ。



「あぁ…」零れる吐息と共に切ない表情をする先生。


「いつだ、いつガン見されたんだよ……」そんな事を必死に思い出そうとするカイ。


「とにかく登録しちゃいましょ」、姉の痴態を無かった事にしたい鈴が受付にあるいていった。

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