第35話 激戦
僕は左のロボットの頭部を撃ち抜き倒すことができた。
アリスさんも右の敵を倒せたようだ。
僕はすかさず真ん中にいるロボットに狙いを定め、二発の弾丸を撃ち込む。
その弾は当たりはしたが頭部から外れ倒しきれない。
その時アリスさんが真ん中のロボットに向かって胴体に三発撃ち込み倒してくれた。
「ありがとう!」
僕がそう言うと、アリスさんは頷いてくれた。
「来た!」
さらに研究棟の方から新型ロボットたちが出てきてこちらへ向かって走ってきた。
「とにかく近づかせないようにしよう!」
僕たちは迫りくるロボットたちに銃弾を浴びせる。
作戦としては、まずはとにかく近づかせないようにすることだ。
ロボットたちが装備しているゴム弾は射程距離が短い、なのでなるべく近づかせないようにすればあちらは反撃ができないし、もちろん博士のもとへも行かせないようにできる。
他にも撃たれないようにずっと顔を出して撃たないこと。
銃の弾の再装填を意味するリロードは隙きを作らないために、逆に敵をひるませたときにしたり、僕とアリスさんが同時にしないようにすること。
爆弾は大勢のロボットが一箇所に固まってるときや、敵が投げるには遠すぎず、でも撃たれないように敵の銃の射程距離に入る前に、僕とアリスさんが同時にリロードをしてしまうとき等に投げること。
これらのことを一応話し合っては来たが正直なところ余裕が無くなればそれを意識している暇もなくなるだろう。
でも特に大切なのは撃たれないこと。絶対に守るべきなのは味方と自分を撃たないことだ。
僕は銃撃で三体の敵を倒すことが出来たが、弾倉内の弾が切れてしまった。
僕はリロードを行った。その後アリスさんの銃の弾が無くなり、アリスさんはリロードを行っていた。
良かった、どうやら同時にリロードすることは何とか免れたようだ。
さらに多くの数の敵ロボットが研究所から出てきた。
僕達はその敵ロボット達に銃撃を浴びせさらに計六体ほど倒したが、再び僕のピストルの弾倉内の弾がなくなった。
リロードをはさみたいところだが、どうやらアリスさんの方も同じように弾倉内の弾がなくなりそうだ。
僕は手榴弾を取り出し、導火線に日をつけた。
「爆弾、投げる!」
手榴弾をロボットたちが多くいる方に向けて投げた。
一気に四体ほどのロボットを無力化で来た。
僕はその隙にリロードを完了させる。アリスさんもなんとかリロードが出来たようだ。
研究棟からさらに多くの増援のロボットたちが出てきた。
僕たちは再びこちらへ向かってくるロボット達に銃弾を浴びせる。
銃撃で倒して、爆弾で倒して、倒して、倒した。
しかしそれでも増援の数は増え、ロボットたちの数も多くなり押され始める。
もうロボットたちは中心にある木を超えて僕たちに迫って来ている。
ロボットたちが撃ってくるゴム弾の弾丸も僕たちが隠れている壁の裏側のすぐ下の地面に落ちている。
もう敵ロボットの弾丸もこちらへ届きそうになっていた。
僕たちは銃の弾をバッグにも詰めれるだけ詰めて多めに持ってきているが、それでも弾は無限じゃない。
更に爆弾に限ってはもう後一個しかない。そしてついにその最後の爆弾を投げた。
一気に五体ほどの敵を倒せたが、それでも増援が止む気配はない。
敵の数も増え、こちらへ届く敵の弾が出てきた。
そのせいでこちらが隠れるしかなく撃てない時間も増えてきたので余計にきつい。
博士、早く!
それでも僕たちは何とか撃って隠れてを繰り返しながら敵を撃退し続けていたが、ついに敵の銃撃とこちらの銃撃の火力のバランスが逆転し、敵の銃撃が激しすぎて僕たちはほとんど顔も出せなくなり、それで銃を撃つことも出来なくなってきた。
限界が見えてきた。
もう僕たちと敵ロボットたちとの距離は数メートルとなっている。
さらにレイラさんからの無線でアルフ達も敵ロボット達に四方から追い込まれて、捕まりそうになっていることを知った。
敵ロボットが壁を乗り越えようとしてきた。
僕たちは仰向けに近い姿勢になって、その乗り越えようとしてくる敵ロボットたちを撃って何とか倒す。
しかし僕もアリスさんもピストルの弾倉内の弾を打ち尽くし、リロードをしないといけなくなったが、もうその時間もないようだった。
敵ロボットの一体が僕を捕まえようと僕の方の壁を今にも乗り越えようとしていた。
アリスさんの方も敵ロボットが壁を乗り越えようとしていた。
ごめんなさいアリスさん、みんな。もうどうすることも出来ない。
その時だった。僕の後ろから何かが飛び出した。
そして僕を捕まえようとしていた敵のロボットに飛びつき前方に吹き飛ばした。
それは旧型のロボットだった。
さらに他の旧型のロボットがぞくぞくと出てきて敵のロボットに突撃していく。
「ノアルくん! アリスさん!」
さらにその旧型ロボットの後方からアイパッドを持った博士が走って来ていた。
「博士!」
僕とアリスさんは間一髪のところで助かった。
「助かりました」
ギリギリだったけどなんとか博士が間に合わせてくれたようだった。
「いや、私の方こそ。時間を稼いで戦ってくれてありがとう。お陰でギリギリだが間に合ったよ」
博士は僕たちにそう言ってくれた。
中庭では旧型のロボットが新型のロボットに突撃し、新型のロボットは旧型をゴム弾の銃で撃って戦っていた。
レイラさんからアルフ達も旧型の援護で敵ロボットの包囲を抜け、無事危機を脱し逃げ延びることが出来たという嬉しい報告も聞くことが出来た。
僕は自分のピストルに安全装置をかけ、ようやくホッと一息をつく事ができた。
「アリスさん」
僕は床に座り込みまだ拳銃を窓の方に構えて唖然としているアリスさんに声をかけた。
アリスさんは恐怖からなのか、それとも恐怖から開放された安心感からなのか、その両方か、さっきまで銃を撃っていた方を固まったまま見ていた。
僕は一応新型敵ロボットに撃たれないようかがんで、アリスさんのそばにゆっくり赴いた。
「アリスさん。もう大丈夫、大丈夫だから」
アリスさんはようやく僕の声が聞こえたのか、こちらをゆっくり向いてつぶやいた。
「ノアルくん」
アリスさんはそう呟いた。
「アリスさん、アリスさんの銃の安全装置をかけるね」
僕はそう言って、そっと手を伸ばしてアリスさんのピストルの安全装置をロックしゆっくり彼女の拳銃を下げた。
その瞬間アリスさんの緊張も解け、ハァと深い息をついた。
みんな本当に良くやってくれた、感謝してもしきれないくらいだ。
「ごめんもう大丈夫、落ち着いてきた」
アリスさんはそう言って苦笑した。
「怪我とかは無い?」
僕はアリスさんに聞いた。
「うん、怪我もない」
アリスさんはそう答えた。
「良かった。アルフたちも逃げ切れたみたいだ」
僕はアリスさんにみんなの無事を伝えた。
「良かった、みんなも無事で」
アリスさんは安堵しているようだった。
「アリスさん、僕一人だけだったら上手くいかなかった。ありがとう」
僕はアリスさんにそう伝えた。
「それはお互い様だよ」
アリスさんは微笑んでそう言った。
「じゃあ、そろそろ僕はレアンとシェイラ博士を探しに行くよ。そしてリアラインを説得する」
これ以上、みんなに、アリスさんに迷惑をかけられない。誰にも危険な目にあってほしくない。
「アリスさんはここでーー」
「私も行くよ」
僕がアリスさんにここで待っててと言い終える前にアリスさんはそう言い切った。
「でも、もう十分すぎるくらい助けられた」
僕はアリスさんにもみんなにもたくさん助けられた。
「なら、もっと助けるよ。それに色んな人達の希望が託されているから、私も休む訳にはいかない」
アリスさんは笑みを見せてるが、少し無理しているような気がする。
「これからの世界は私達にかかっている。私もまだ少しは役に立てると思うから、だから私もついていきたい」
それでも、それでも一緒に行くと言ってくれたのだ。
それを無下にするのはアリスさんをここで待たせることより悪いような気がする。
「分かった、でも無理はしないで」
僕がそう言うとアリスさんはうん!と頷いた。
「私もついて行かせてくれ。私がいたほうが旧型のロボットたちとも連携が取りやすくなるはずだ。だから、お願いします」
博士も一緒に行くと言ってくれた。
二人ともありがたい。レアンとシェイラ博士を助けるまで三人で行こう。
「博士、こちらこそお願いします。とても心強いです」
博士は頷いた。
僕は再び中庭を眺める。
まだ敵の新型ロボットと味方の旧型ロボットは争っていたが、新型のほうは銃を持っており、対して旧型は武器が持てず新型よりも耐久値が弱いため、新型は迫りくる旧型を撃退していた。
やはり僕たちが軸となって攻めて、味方の旧型ロボットたちには援護をしてもらうのが良さそうだ。
僕たちはこれからどうやって研究棟に攻め込むのか、研究棟内でどうやってレアンたちを探すのかを簡単に話し合った。
話し終わった後、僕とアリスさんは研究棟に向かうため銃の安全装置を外し、構える。
「準備は良いですか?」
僕は二人に尋ね、二人とも頷いた。
僕は深く深呼吸をする。
「行こう」
僕とアリスさんと博士は立ち上がり、中庭へ出て研究棟へ向かって走り出した。
それに気づいた新型はこちらに向かって銃口を向けようとする。
その敵ロボットたちよりも早く、僕とアリスさんはピストルの引き金を引いた。
その銃撃で僕が二体アリスさんは一体敵ロボットを倒したが、他の敵ロボットたちも僕たちに銃口を向け撃とうとしている。
「博士!」
博士は手に持っているアイパッドからロボットたちに自分たちを優先的に守るように命令する。
同時に僕たちは走るスピードを緩める。
その瞬間、後ろから一緒に来ていた味方の旧型ロボットの三体が僕たちと敵ロボットの間に立ち盾になって銃弾から守ってくれた。
その合間に僕たちが再びその撃ってきている敵ロボットを撃って倒す。
さらに僕たちが倒した敵ロボットを相手していた味方のロボットたちも敵ロボットに向かって飛びつき倒していく。
それを二度繰り返したところで中心の木のところまでたどり着き、さらに繰り返したところで無事研研究棟の扉付近を制圧し、僕たちはそこへたどり着くことが出来た。
僕たちは数秒息を整えた。
「大丈夫ですか?」
僕は二人に聞いた。二人とも大丈夫だと返してくれた。
僕は一応再び中庭の様子を確認するため、目線を移した。
まだ中庭には敵ロボット達も数体いるが、味方ロボットたちが懸命に戦ってくれている。
そのさなかの中庭には、体の一部が欠損したり、倒れていたり、残骸になってしまっている僕たちを守ってくれたロボットたちの姿もあった。
「ロボットさんのおかげだね。ありがとう」
アリスさんは中庭を見ながらそうつぶやいた。
確かに彼らの援護がなければここまで来れなかった。
「終わったら修理できる個体は修理しよう」
博士はそう言った。
「それが良いですね」
僕とアリスさんも博士の提案に賛成した。
博士は頷き、「今は作戦に集中しよう」と言った。
僕とアリスさんもハイとうなずいて了解した。
研究棟の扉は閉まっていた。
僕は前にこの扉を開けたときと同じようにケント博士のカードキーの情報をコピーして入れたカードキーを読み取り機にかざしてみたが、応答せず扉も開かなかった。
「開かない?」
「ハイ、応答もしないです」
博士が僕に尋ね、僕は開かないと答えた。
「リアラインが扉の設定を変えたんだな。大丈夫、私に任せて」
そう言うと博士は読み取り機の下にある番号を押すタイプの機会を操作し、適当な番号を押した。
すると研究棟の入り口の扉が開いた。
「こっちの方はシステムからは変えられないようにしてたんだ。いざという時のためのものだったが用意しておいて良かった」
博士は苦笑しながらそう言った。
僕達は研究棟の中の様子を確認してみた。入り口の付近に敵ロボットの姿はなかった。
「行きましょう」
僕たちは研究棟の入り口の扉を通り、研究棟に入って行った。
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