第26話 別れ
手榴弾を投げた後、レアンは壁に隠れた。
数秒後、静けさを破る激しい爆発音が部屋中に鳴り響いた。
その後は再び夜の館内の静けさが訪れた。
僕たちは恐る恐る壁から身を乗り出してリアラインの様子を確認してみた。
そこにはリアラインの姿は無く、そのリアラインがいた辺りには爆発の後があった。
さらにその場所から外側に向けて柔らかいが金属の様なものが散乱しおり、周りにあった研究機器や資料も爆発で一部吹き飛んでいる。
また爆発の火薬の匂いと何か別の変なにおいもしている様な気がした。
でもとりあえずリアラインは破壊できた。
「やったのか?」
僕は思っていたよりもあっさりリアラインを破壊できたことに少し呆気なさも感じた。
「あぁ、案外最後はあっさりだったな」
レアンもあっさり上手くいったことに対し少し戸惑っているようだった。
だが何にしろリアラインは破壊されたのだ。
これでレアンのいた前の世界とは違ってこの世界では未来の戦争は起こらないはずだ。
「じゃあみんなの元に戻る? さっきの二人もここに来るかもしれないし」
僕はレアンに促した。
「そうだな……いや待て」
レアンは周りに目を凝らしていた。
僕も周りを見てみた。
その時あたりに飛び散っていたリアラインの破片が少しづつどこかに向かって動き始めているのに僕は気づいた。
「!?」
次の瞬間、その破片達は意識を持ったように一斉に一か所に集まった。
そしてその場所には手榴弾で吹き飛ばしたはずのリアラインが再構築されていた。
「残念だったな、未来の戦士」
これはリアラインの声か!
その機械と人間の男の様な声が混じったような声はリアラインの方から聞こえた。
「リアライン!」
レアンがリアラインに向かって叫んだ。
「もう諦めろ」
リアラインがそう言った瞬間、奥の大きな謎の機械がある部屋から、一昨日の一件で機能停止していたはずの新型ロボットたちが出てきた。
「ノアル!」
レアンは僕を押した。
僕たちは一緒に物陰に飛び込んだ。
新型ロボット達は僕たちをゴム弾銃、麻酔銃、スタンガンなどの低致死性兵器で攻撃してきた。
僕たちは物陰に隠れながら応戦する。
敵の数が多すぎる!
敵が撃ってきている弾は低致死性だが、当たればただでは済まないし、何発も当たれば死に至る可能性だってある。
「一旦引くぞ!」
レアンはこの不利な状況を瞬時に悟り、退く判断をした。
僕たちは入ってきたドアを出てとりあえず走った。
新型ロボットたちも逃がすまいと追ってくる。
僕とレアンは応戦しながら、リアラインのいる部屋とは逆の方向へ走る。
その時、誰かの呼びかける声が聞こえた。
「リアラ! どういうことだ! 人類を滅ぼす気か!?」
「聞いてる!? リアライン!」
声からしてシンヤ博士とシェイラ博士だ。
姿は見えないが左側から聞こえる
「どういうことだ? その原因はシンヤ博士、あなたが一番良く知っているはずだ」
リアラインはこの館内のスピーカーから無機質な声で冷徹に返した。
その時、僕たちを追っていた先頭のロボット二体が左へ曲がった。
二人の博士の方へ向かったのだ。
「ノアル、二人を助けるぞ!」
「了解!」
僕たちも後ろに向きを変え、二人の方へ向かう。
僕たちはまず前方にいるロボットの数体の集団と戦闘になる。
レアンが三体、僕が一体倒したが、さらに奥からその倍以上の数のロボットたちが見えた。
レアンは持っていた手榴弾をロボットたちの手前に投げた。
爆弾が爆発し、数体のロボットが倒れた。
その隙に僕たちは曲がり角に到達しその先を見る。
そこには博士達に迫るロボット二体と博士達の姿が見えた。
両者の距離は数メートル、二体のロボットたちが手に持っているのがゴム弾銃か麻酔銃かは分からないがどちらの銃の射程圏内にも入っていた。
博士たちは驚いた様子だったが、こちらを見て僕たちにも気づいた用だ。
「撃てない!」
僕たちは彼らに向かいながらロボットに銃口を向けたが、ロボットの後ろにいる科学者の二人と重なり危険すぎて撃てなかった。
「避けろ!」
レアンは二人の博士に叫んだ。
ロボットたちも博士達に銃口を向けた。
「シンヤ博士!」
シェイラ博士がシンヤ博士を横に突き飛ばした。
ロボットたちは銃を撃った。
その弾は麻酔弾で、突き飛ばされ横に座り込んでいるシンヤ博士の方には当たらなかったがシェイラ博士には当たってしまった。
「シェイラ博士!」
シンヤ博士が叫んだ。
シェイラ博士は気絶し、倒れ込んだ所をロボットの一人が抱きかかえ連れ去ろうとそのまま走り出した。
レアンはすぐさまそのロボットに銃口を向け、狙いを定め引き金を二回引いた。
その弾はロボットの頭ではなく、動けなくするために両足の膝下辺りに向けて発射された。
しかしもう一体のロボットが立ちふさがり、そのロボットの足にレアンの放った弾丸が当たった。
「クソっ!」
レアンのピストルの弾倉にはもう弾がないようで、彼はリロードを始めた。
僕もすぐさまシェイラ博士を連れ去ろうとしているロボットに照準を合わせようとしたが、丁度足に弾が当たり体勢を崩しているロボットが邪魔で撃てなかった。
僕はその邪魔になっているロボットの頭部に弾を撃ち込み倒した。
その隙にレアンは素早くリロードを完了し、間髪入れず連れ去ろうとしているロボットの足に向けて弾丸を放った。
しかしその弾が当たる前にそのロボットは先の曲がり角を曲がってしまい、弾は虚しくも地面に当たってしまった。
僕たちは座り込み愕然としているシンヤ博士の元に付いた。
僕たちが来た後ろの方を振り返ると、僕たちを追って来たロボットが迫っている。
「博士、立って!」
レアンはシンヤ博士に手を差し出した。
博士はその手を握った。
レアンと僕は博士を立たせ、三人で曲がり角に隠れる。
僕とレアンは追ってくるロボットたちを何とか撃退していた。
レアンは追ってきているロボット達に向かって再び手榴弾を投げ、足止めをした。
「どうする!? シェイラ博士を助けに行くか!?」
僕は応戦しながらレアンに聞いた。
レアンは迷っていた。
「私が助けに行きます」
そう言ったのはシンヤ博士だった
「二人はオフィス館まで走ってください。オフィス館まで行けばそこからは旧型しかいないので、今コード書き換え中の旧型は全て機能停止しているはず」
「書き換え中?」
レアンが聞いた。
「ハイ、今さっき突然リアラインが私達も知らなかった裏コードからリアラインシステムの書き換えを始めました」
博士が答えてくれた。
「!?」
まずい。このままじゃ戦争が起こる。
「この上書きが完了してしまうと、リアラインシステムが組み込まれている物全てがリアラインの管理下に置かれてしまいます」
博士は説明してくれた。
「その上書きが完了するまでの時間は?」
レアンが聞いた。
「後、二十四時間程」
このままでは後一日でレアンのいた未来の世界と同じ状況になってしまう。
「これは私たちの責任です。なのでどちらかの拳銃を貸してくれませんか? 私がシェイラ博士を助け、リアラインと話してきます」
博士は覚悟を決めている様だった。
僕とレアンは顔を見合わせた。
レアンは一瞬考えた後、決断した。
「オレがシェイラ博士を助けに行きます。博士はノアルと一緒に俺達の仲間がいるところに逃げてください」
「ですがーー」
「オレが助けに行った方がシェイラ博士を救えます」
レアンは前向きな様子でそう言った。
「シンヤ博士。あなたはあなたが出来ることをやってください」
レアンは博士を説得した。
「すみません、レアンさん」
「大丈夫です。オレは強いですから」
レアンはそう言って笑みで返した。
「ノアル、オレがここで奴らの足止めをするから博士を安全な皆の所まで連れて行ってくれ」
レアンは僕にもそうする様に言った。
「それは良いけど、レアンが危険だ」
「でもシェイラ博士の事を放っては置けないだろ」
レアンは語りかける様に僕にそう言った。
レアンは覚悟を決めているようだった。
「大丈夫だ。オレもシェイラ博士を助けたら戻ってくるから、その後リアラインをどうするか考えよう」
「レアン……分かったよ」
僕は不安と心配で一杯だったがレアンの提案を了承した。
レアンは無線越しにアリスさんの家にいる皆にも同じことを伝え、みんなもレアンの事を心配していたが了承した。
「よし、じゃあ二人とも行けるか?」
僕と博士は行けると頷いた。
「ノアル、オレに合わせてくれ」
レアンはそう言った。
「了解」
僕は了承した。
「3、2、1、今だ!」
僕とレアンはタイミングを合わせ一斉に反撃し、ロボットたちを一時撃退した。
「ノアル、博士、走れ!」
僕と博士は曲がり角から向こうの曲がり角へ通路を横切って走り、無事渡り切った。
「ノアル、博士、また会いましょう」
レアンは僕と博士に一時の別れを告げた。
「レアンも必ず」
「お気をつけて」
僕と博士もレアンに一時の別れを告げた。
僕と博士はレアンが敵の足止めをしている間にオフィス館へと向かった。
その後研究棟を無事抜けて、オフィス館も旧型が一時機能停止しているのもあって僕たちはなんとか研究所を脱出し、街に出ることが出来た。
街には所々一時停止している旧型ロボットの姿が合った。
「ノアル君、君の仲間っていうのはーー」
博士が僕に皆のことを聞こうとしていた時、またどこからか声が聞こえた。
「ノアル!」
「ノアル君!」
それはみんなが僕を呼ぶ声だった。
みんなもこちらへ向かってくれていたようだ。
「兄さん!」
兄のシンヤ博士を呼ぶヒロの声も聞こえた。
「ヒロ!」
博士も弟のヒロの姿を見つけた。
僕と博士はみんなと合流し、僕達は新型ロボットに見つからないように急いでアリスさんの家へと向かった。
そしてようやくアリスさんの家の前までたどり着いた。
その時、僕の視界が揺らぎ始めた。
見るものがぼやけ、意識がどんどん遠のいていく。
「ノアル君!」
「ノアル!」
みんなが僕を呼ぶ声が聞こえたのを最後に、僕の意識は完全に暗闇の中へと落ちていった。
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