~未来編~
第20話 命運をかけて
けたたましいサイレンの音でオレは目を覚ました。
テント内にいるみんなも飛び起き周りを見回している。
「おねえちゃん」
エマちゃんはリィナに抱きついた。
「大丈夫よ」
リィナはエマちゃんを抱きしめ、リィナの母のソフィアさんもエマちゃんの頭を優しく撫でている。
「みんな、敵が来た。準備しろ」
父さんがそう言って、オレとジャック、エリィ姉さん、エディさん、父さんも素早く装備を身につけ、戦闘準備をする。
リィナとソフィアさんもエマちゃんに「ちょっと待っててね」と言って準備をした。
そして準備が終わるとオレ達はテントの外に出た。
外の様子は慌ただしくも混乱はしておらず、人々は自分の役割を全うしようと準備し、配置についていた。
「ソフィア、リィナ、みんな」
父が二人と他のみんなに呼びかける。
「二人はここでエコーの人々の指揮をとってくれ。他のみんなはデルタ基地に向かい、例の作戦を決行する」
父の命令にみんなが了解と頷いた。
「レアン、ジャック」
リィナがオレとジャックに呼びかける。
オレ達とリィナとエマちゃんは抱擁した。
「……信じてる、私は二人の事を信じてるから。エマちゃんとエコーのみんなとあなた達の帰りを待ってる」
リィナがそう言って、「私もお兄ちゃんたちを待ってる」とエマちゃんも言ってくれた。
「あぁ、オレ達は必ず帰ってくる。だからリィナもエマちゃんも無事に待っててくれ」
「リィナ、エマちゃんも気をつけて」
オレとジャックも二人にそう伝え、オレ達四人は約束を交わした。
その間に父たちもソフィアさんと声を掛け合い、抱擁していた。
「行ってくる」
「行ってらっしゃい」
オレ達はリィナ達と別れを告げ、デルタ基地に向かった。
デルタ基地までの道のりはオレたちと同じようにそれぞれの目的の場所へ、必要な物を持って向かう人々がせわしなくおり、みんな恐怖はあるも、それでも前を向いて自分のなすべき事をなそうとしていた。
特殊作戦員のオレ達はそのみんなの希望を背負い、過去に行くはずのオレはさらにそのみんなの希望も背負っている。
その希望は重くて、押しつぶされそうになる。それでも背負って戦うしかない。やるしかない。
オレは改めて決意を固めた。
「みんな」
父が駆けながら後ろにいるオレ達の方を振り向いた。
「個人的に、別れを言う時間は今しかなさそうだから言わせてくれ」
父はオレたちに伝えた。
「みんな、また会おう」
「また会おう」
オレ達も父にそう伝えた。
それからオレたちと父はデルタ基地に辿り着くと、基地に入り、人が行き交う通路を通って基地の車庫へと向かった。
そこにオレたちがつくと、ぞろぞろと特殊作戦部隊のみんなと、ルイとライ、この特殊作戦を知っている限られた兵士も数名到着し全員揃った。
ここにいる特殊作戦部隊のみんなも大切な人たちと別れを告げ、覚悟を決めてここに来ているはずだ。
「みんな揃ったな」
オレの父は確認としてみんなに作戦を簡単にまとめて説明し、最後に父は目標を再度伝えた。
「君達の目標は、このデルタ基地がリアラインに破壊される前にリアラインの基地にある燃料を奪取し、持ち帰る。そしてレアンか部隊の十六歳以下の誰かを過去に送る事だ」
みんなも父の話を集中して聞いている。
「我々は君たちが帰ってくるその時まで必ず基地を守り抜く。君たちも全力を尽くして必ず作戦を成功させてくれ」
絶対に成功させる。みんなのためにも。
「みんなの作戦成功を祈る! 頼んだぞ!」
父はオレたちにそう言って、俺達も父に対して短くも威勢のある返事をした。
「行くぞ!」
特殊作戦部隊の指揮をとるエディさんがそう言い、オレたちは車両へ乗り込んだ。
そして父と数名の兵士に見送られながら、オレたちは車三両を入らせ敵に見つからないようにデルタ区街の裏手から出て敵の軍団の側面を回り込み、迂回するような形でリアライン基地へと向かった。
それからしばらく真夜中の空の下、車両を走らせてると左方にリアラインの大軍勢が見えた。
「みんな、持ちこたえてくれ」と仲間の誰かが呟いた。
デルタ基地が見えなくなってから少しして爆発音や銃撃音が聞こえた。
オレ達の間にも遂に人類の命運を懸けた戦いが始まったのだということが、その戦争の音を伝って伝わってきた。
オレたちの作戦に全てがかかっている。
数十分後、オレ達は見つからないようにリアライン前線基地の前で車を降りた。
「君たち三人はここに残って車両を守ってくれ。残りの者はこのまま進むぞ」
エディさんは数人を車両の周辺の見張りと迎えの役のためここに残し、残りの者たちは基地へ駆け足で向かった。
「エリィ。君たち二人は敵基地一帯を見渡せて俺たちも援護できるような狙撃地点を探して置いてくれ」
エディさんが狙撃手のエリィ姉さんとその補佐役で、観測手でもある隊員にそう言い、二人は了解した。
一応狙撃地点は昨日の作戦会議である程度良さそうな場所は探しているが、それを参考にしつつ実際に見て選ぶのも大切だ。
それからオレたちは敵基地まで歩いて向かい、敵基地検問所から数十メートルまでの所まで来た。
「良さそうな場所はあったか?」
エディさんはスナイパー班の二人に聞いた。
「あそこの建物が良さそう」
姉さんは比較的ここら辺にある建物の中で一番高さが高そうなマンションを差した。
「よし、とりあえずそこでも違うところでも良い。君たちが良いと思った狙撃地点に向かい、そこに着いて準備できたら教えてくれ」
「了解」
姉さんたちはそのマンションの場所へと徒歩で向かい、数分後「配置についた」と無線で合図してくれた。
「了解。君たちはそのままそこで敵基地を眺めながら、敵の配置の情報や進み方のアドバイスをしてくれ」
エディさんは狙撃手である二人にそう言った後、計十六人の特殊作戦班のみんなに尋ねた。
「これよりリアライン前線基地に侵入する。みんな準備は良いか?」
オレたちは装備を最終確認した後、小さいがはっきりとした返事を返した。
「行こう」
それを見てエディさんは頷き、移動を始めオレたちも後に続いた。
オレたちの目標は姉さんと協力して、敵に自分たちの存在を知られないように見つからないように敵基地に侵入し燃料を盗むことだ。
オレたちは検問所前の建物の物陰に着いた。
やはりリアラインの総攻撃の影響か、それとも侵略したエコー基地の方にロボットの数を回しているのか、その両方か、いずれにせよ検問所にいる敵ロボットの数は少ないようだ。
だからおそらくこの基地にいる敵の総数も少ないだろうが、オレたちを撃退するには充分な数の敵がいるはずだ。
ただこの検問所は避けては通れないため、敵にオレたちの存在がバレないように、見つからないように通る必要がある。
そこでまずは姉さんに検問所の屋上にいる見張りの敵三体を一人づつ他の敵に倒されたことを見つからないように狙撃してもらった。
オレたちも姉さんと連携しながら検問所付近にいる見張りの敵ロボット達を複数人による同時射撃で倒した。
オレたちの銃の銃口にはサプレッサーがついており、銃声をかなり抑えることができたため検問所の敵を一通り他の敵にバレずに無力化することが出来た。
オレたちは敵を無力化した検問所を通って基地の敷地内に入った。
基地の敷地内は自分たちのデルタ基地のように防衛陣地を敷いておりいくつものバリケードなどの遮蔽物や見張所などがあった。
ただやはりいつもより敵の数が少ないため、警備の敵の数は最低限の数しかいないようだった。
オレたちは姉さんに上から見た基地内の情報を教えてもらいながら、姉さん達に敵を狙撃してもらったり、自分たちで敵を倒したり、やり過ごせる敵は物陰に隠れやり過ごしたりしながら敷地内を進み、順調に敵基地の内部前までたどり着くことが出来た。
ここからは敵基地の室内に入るため基地の外にいる姉さん達や車両の安全確保を任した三人の隊員達とは無線が傍受されてしまう可能性があるため情報を共有できず、援護も無しで進まないと行けない。
エディさんは狙撃手の姉さんたちにそのまま敵基地を見張って待機と伝えた後、リアライン前線基地の入り口扉のロックをジャックにハッキングで開けるよう頼んだ。
その頼みにジャックは答え、手持ちのパソコンとそのパソコンに接続してあるハッキング用の機器を使って、入り口扉の横にあるパネルに接続し、パネルの設定を変更して入り口の扉を開けた。
オレたちは敵に入り口が空いていることに気づかれないように、もし気づかれても寄ってきて辺りの確認をするロボットに見つからないように素早く敵基地本部の中へと入っていった。
本部の中に入ると一旦入ってきたドアを再び閉め、敵になるべく悟られないようにした。
本部の中は最低限の光で照らされ薄暗く、いくつもあるそれぞれの部屋には机や、実験や研究に使うような機材などがあった。
オレたちはエディさんの指揮のもと連携を取りながら効率良く、でも慎重に周りの安全を確認しつつ通路を通ったり、部屋中を通ったりしながら進んだ。
その中で時折警備中の敵を見かけることもあり、その敵達を無力化したり、やり過ごしたりしてこの建物の階段を探して、登って、通路を歩いて、いくつもある大小の部屋を通りながら奥へ奥へと進んでいった。
それでだんだん警備レベルが上がってきたのかロックがかかっているドアが多くなり、ジャックがそのロックされているドアを開けていくことが多くなった。
さらに奥に進むに連れ、警備をしているロボットの数が多くなり、通路を守っていたり、監視していたりしていた。
それでもオレ達は進んで遂に、一番厳重に守られている大きな部屋を見つけた。
そこのドアを開けるのは一筋縄ではいかず、ジャックはこのドアの横にあるセキュリティパネルと対峙し彼のパソコンで手作業で挑み始めた。
彼は一心不乱にパソコンの画面を見つめ集中しながらこのセキュリティに挑んでいる。
「これでいけるはず」
ジャックはそう言って、最後のキーの打ち込みをした。
するとドアが空き横にスライドし、大きな部屋の中を見渡すことが出来た。
その部屋の中に敵はおらず、中心には大きなジェネレーターのような物が立っていた。
おそらくこのジェネレーターからこの基地のシステムを補っているのだろう。
オレたちはこの基地の中心とも言えるこの部屋に入り、敵にバレないように再びドアを閉めた後、そのジェネレーターに近づいた。
そのジェネレーターの中に厳重に保管されている何かがあった。
「これだ」
エディさんがそう呟いた。
エディさんが見ている先にはジェネレータの中に厳重に保管されている何かがあった。
「これがタイムマシンの燃料だ」
そこには透明でカプセル型の容器に入った液体があった。
「みんなよくやった。後はコレを持って帰るだけだがコレもハッキングが必要だな」
再びジャックの出番だ。
「ジャック、頼む」
エディさんはジャックにジェネレータの一部に厳重に保管されているエネルギー燃料を取り出すハッキングを頼み、ジャックは早速エネルギー燃料を取り出すため、横にある取り出すための操作パネルのハッキングに取り掛かった。
ジャックがハッキングしている間、オレたちは周囲を警戒しながらも、少し休憩していた。軽食を食べている人や、装備の点検をしている人、基地のみんなの安否を願う人などそれぞれだった。
「出来た」
ジャックはパッドの画面を見ながらそう言った。
「いや、でもこれは」
「どうした?」
エディさんはジャックに尋ねた。
「エネルギー燃料は取り出せます。そして燃料を持ち出せばこの基地も敵も一時停止します」
ジャックはみんなに説明した。確かに昨日の作戦会議ではそういうことだった。
「ですがこの基地にはもう一つ別の場所に蓄えてある予備の燃料があります。そして予備戦力となる敵ロボットがかなりの数この基地に配備してあります」
ジャックのその二つの事実に皆の表情が険しくなった。
「この基地は一時停止しても予備の燃料を使えば再起動が出来て、それが終わったら停止していたこの基地の敵ロボットも起動する」
ジャックはそう言って、更に続けた。
「つまり我々がエネルギー燃料を取ったら一定時間は基地も敵も一時停止しますが、この基地の使う燃料が予備燃料に切り替わり、その燃料が基地に送られるようになったらこの基地も再起動し、停止していたロボットたち、そして予備戦力の敵ロボットたちも起動して我々のことを攻撃してくるでしょう」
ジャックはこのエネルギー燃料を取ったら起こることを説明してくれた。
「なるほど」
エディさんは何かいい案はないかと考えていて、他のみんなも俺も考えた。
「今は一分一秒時間が惜しい。だから予備燃料を取りに行く時間もこの基地を爆弾かなんかで破壊する時間もない」
みんなもうんうんと頷いている。
「となると、後はもう強行突破しかないか」
エディさんはそう呟いて、皆に聞いた。
「みんなは何か良い案はあるか?」
エディさんのその問いに、みんなは首を横に振って「ありません」と答えた。
「そうか、それなら今一度聞いてくれ」
それからエディさんはエネルギー燃料を取った後の強行突破の作戦を素早く語り、みんなのいくつかの意見を聞いたり取り入れたり、質問を受付たりして作戦を決めた。
「みんな。エネルギー燃料を取った後は過酷な退却戦となるはずだ」
エディさんはみんなに語りかけた。
「それでも俺はみんなとなら必ずこの作戦を成功させ、レアン、もしくはここにいる少年少女の誰かに未来を託すことが出来ると信じている」
みんなは緊張しているようで、その様子を見たエディさんは言った。
「大丈夫、俺達なら出来る。覚悟は良いか?」
エディさんはみんなに語りかけるように、そして決意を迫るように尋ねた。
その問いに特殊作戦班のみんなははっきりとした口調で返事を返し決意を固めた。
その皆の反応を見たエディさんもしっかり頷き、指示を出した。
「みんな、配置についてくれ」
オレたちはそれぞれ作戦通りの配置について、オレは準備OKの合図をエディさんに出した。
それを確認したエディさんは横にいるジャックにやれと合図を出した。
ジャックは頷き、手元のパソコンでパネルを操作した。
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