第18話 話し合い
まず初めに僕たちはリアライン研究所の人達の下へ向かうか話し合ったが、その問題は昨日、リアライン研究所のロボットに襲われたという事もあり、何をされるかわからないし危険だから、行かないという結論にすぐ決まった。
「じゃあ、次はノアルとレアンの話を聞いて、それからリアラインの件についてもこれからどうするか考えるようにするか?」
次の問題をどうするかアルフが提案し、僕たちもその提案に賛成した。
というわけで、まずは主にレアンがさっき僕とまとめた事をみんなに話した。
ただ未来の僕とレアン、みんなの関係や行方の事はまだ詳しく分かっていないのもあり、なんとなく言いづらかったので、そこは僕が話さないでほしいと先程話をまとめていた時にレアンにお願いしていた。
なのでレアンは予定通りそれ以外の重要なことを皆に話してくれた。
「なるほど。未来では人類がリアラインによって滅亡寸前にまで追い詰められているから、その未来を変えるためにタイムトラベル計画でレアンが現代に送られてきた」
アルフはレアンと僕が話した事を要約してくれた。
「つまり今の時代にいる人間、レアンやオレたちがリアラインを戦争が始まる前にどうにかしないと、そのまま未来は変わらず人とリアラインとの間で戦争が起こってしまうってわけか」
レアンはアルフにその通りだと頷き、みんなに自分の思いを話した。
「オレは未来の皆のためにも、この時代のみんなのためにも戦争を阻止しなければならない。でも皆を出来る限り危険な目には合わせたくないし、巻きこむともしたくない」
みんなもレアンの話を真剣に聞いてくれていた。
「でもオレの話しは信じてほしい。作戦実行はオレだけでやるから皆にはオレがリアラインの研究所に侵入して、リアラインを破壊するまでの作戦の準備を手伝ってほしいんだ」
レアンはそう言って、さらに続けた。
「オレ一人じゃリアラインを破壊できない。だから皆の力と知恵と勇気を貸してほしい。お願いします!」
みんなは戸惑い、考え込んでいた。
それもそのはずだ。みんなは僕のようにレアンの夢を見ているわけではなく、話を聞いているだけだから余計信じられないと思うし、未来で人類が滅びかけてるなんて信じたいとも思えない話だ。
「俺もレアンの事を信じたい。信じて手伝いたい。でも何か証拠でもないと信じられない」
アルフが苦い表情をして言った。みんなもアルフと同じ様子だった。
「証拠……」
レアンは証拠となるものを考えているようだが、分からないと言った様子でたじろいでいた。
レアンの話は突拍子もない話だ。でもあれが嘘だとあの夢を見ている僕には思えない。
あの夢はきっと本当の事なんだ。今僕達がリアラインをなんとかしないと未来に生きた人々の思いが無駄になる。
証拠、何か証拠となるものはないのか……そうだ!
「証拠はある!」
気づいたときには僕は言葉を発していた。
みんなの視線が一気に僕に向けられる。
「えっと……」
まずい、緊張してーー
その時横にいるレアンが僕の方を向いて、「頼む」と言った様子で頷いた。
やるしかない!
「まず、僕達はリアラインのロボットに襲われた。何もしていないのに、向こうの方から襲ってきたんだ。それはレアンがリアラインを破壊する任務を負っている事をリアラインが何らかの理由で知ったからだと僕は思うんだ。リアラインは一応AIみたいな物だって言われてるけど、実際のところまだ誰も正体を知らない。だから僕たちが知らない力みたいなものを持っていたとしても不思議じゃない」
みんなは僕の話を真剣に聞いてくれている。信じてくれる可能性はある。
「まだある。仮にもしレアンが人類全体に対して何か害をなそうとしていてもそうすることが出来るのは限りなくゼロだけど、リアラインならリアラインのシステムやインターネット、ロボットを使えば出来るってことだ」
おそらくそうやって未来でリアラインは人類に対して戦争を起こしたはずだ。
「最後にレアンはアリスさんを助けた。それは任務とは関係ないことだけど、人として素晴らしいことだと思うんだ。そんなレアンがみんなに嘘をついて人を傷つけようとしているなんて思えない。正体不明の物体よりもレアンのほうが信じられる。みんなもそうなんじゃないかって僕は思うんだ」
みんなの様子はさっきよりも信じようとしてくれている気がする。多分もう一押しだ。
「これでも百パーセント信じられる証拠じゃないのは分かってる。でも今僕たちがリアラインをなんとかしないとまた同じ悲劇が繰り返されてしまう。未来で最後まで諦めずに希望を繋いでくれたみんなの思いも無駄になってしまう。だからどうか僕とレアンの事を信じてほしい! お願いします!」
信じてくれ! 僕はそう祈りながらみんなに頭を下げ、頼んだ。
「お願いします!」とレアンも頭を下げた。
……みんなからの反応はまだない。ダメか、人々の前で演説した未来の僕みたいにはなれないのか。僕はレアンの役に、誰の役にも立てないのか。
「私は信じるよ」
アリスさんがそう言ってくれた。
「ノアルくんやレアンくんは私達に嘘をついて人を傷つけるような人じゃないって思うから」
アリスさんは自分の思いを話してくれた。
「オレもやっぱりレアンが嘘をつくような人間だとは思えないし、実際にオレたちはリアラインのロボットにも襲われてるしな。オレにもレアンの計画を手伝わせてほしい」
「オレも信じるよ。仮にもし、これでノアルとレアンの話が嘘でオレ達にリアラインを破壊する事を手伝うように仕向けていたなら、二人は人を欺く天才だって事だ。でもオレには二人が嘘をつく天才には見えない。だから信じるよ」
「僕も信じるよ。まだ一緒に過ごした時間は短いし、昨日の話を聞いてからもあまり経ってないけど大体レアンがどんな人間なのかは分かったような気がするからさ」
「私はどちらでも良いけど、二人が嘘をついている可能性は低いと思う」
とヒロもアルフ、エディ、一応レイラさんも信じてくれた。
「はぁ」
そう分かった瞬間、どっと緊張が解かれ疲れが押し寄せ倒れそうになったがレアンが僕を支えてくれた。
「ありがとな、ノアル」
レアンが嬉しそうに僕に礼を言い、僕はうんと頷いた。
みんなに伝わった、良かった。
「一人で大丈夫なのか?」
エディが一人だけで作戦を実行しようとしているレアンを心配し尋ねた。
「あぁ、大丈夫だ。オレの未来の話が絶対に真実だという証拠はないから。皆が少しでも手伝ってくれるだけでオレはありがたいんだ」
レアンは穏やかにそう言った。
未来から来たとはいえレアンにだけ作戦を任して危険な事をさせても良いのか?
僕たちにも関係のあることなのに、僕はレアンの夢を見ているのに、本当にレアン一人にだけ任せてしまって良いのだろうか。
みんなも迷っていて心配そうに、申し訳無さそうにしていたがとりあえず自分達に出来ることがあれば手伝うとレアンに伝えた。
「じゃあ、とりあえず作戦立てないとな」
レアンがそう言って、みんなも賛同して一緒に作戦を考えてくれたが、そもそも作戦を立てるための準備が無かったので作戦を立てられなかった。
そんな時に「まずは作戦を立てるよりもリアラインの元に辿り着くのに障壁となる問題点に対する対策や準備するものについて考えたほうが良いんじゃないか?」とアルフが言って、レアンもみんなもそれに賛成した。
というわけで、みんな作戦を立てる前に問題点の解決や準備や対策の仕方を考えた。
「まずはリアラインの施設の厳重な警備をどうするか、とかかな?」
アルフがそう呟いた。確かにまずはそれをどうにかしないと何もできない。
「そうだな、まずはそれをどうにかしないと」
レアンもそう言って、みんなも頷いた。
しかし最初にでたその課題が難問で、皆どうすればいいかしばらく頭を抱え悩んでいた。
「私がハッキングしてみようか。リアライン研究所に」
そう言ったのはレイラさんだった。
レイラさんはいつもとあまり変わらない表情でそう言っていたが、僕たちはびっくりしていた。
レイラさんがまさかハッキングできるなんて思わなかった。
「ハッキング出来るの!?」
アリスさんが僕や、多分皆も今一番気になっているであろうことを聞いた。
「一応」
「今までやったことはあるの?」
「あるよ」
「ちなみに、どんなことを?」
アリスさんが恐る恐る聞いた。
「うーん、良いこともしたし、少しギリギリのこともしたかな」
レイラさんは微笑みながらそう言った。
「そ、そうなんだ。でも、良いことの方が多いなら、きっとホワイトよりのハッカーなのかな?」
「まぁ、そう思いたいかな」
レイラさんは苦笑しながらそう言った。
「私もそう思いたい」
アリスさんが微笑みながらそう言うと、レイラさんも少し嬉しそうに微笑んだ。
レイラさんはどこか謎に包まれていることが多くて分からない事だらけだったけど、でも徐々に分かって来たような気がする。
レイラさんはアリスさんを助けたり、僕達に協力してくれたりと優しい人だ。
「ちなみにハッキングに成功したらどんなことが出来るのか分かるか?」
レアンがレイラさんに聞いた。
「大体のロボットの位置が分かるかも、新型は分からないけど。少なくとも外にいる通常のロボットの位置は割り出せると思う」
レイラさんはそう言って、さらに付け加えた。
「後は、監視カメラを乗っ取ったりとか、他にも出来ることがあるかも。でもまずは研究所のシステムに侵入してみないと分からない」
レイラさんは淡々とそう言った。
「凄いな」
レアンもみんなも感心していた。
「レイラさん。リアライン研究所の警備問題はレイラさんのハッキングに頼ってもいいかな?」
「良いよ、できる限りのことはやってみる」
「ありがとう、レイラさん」
レイラさんはレアンの頼みを承諾してくれたが、どうやら問題点があるようだった。
「ただリアライン研究所は最新の設備でセキュリティも厳しいはずだから、そのままハッキングを仕掛けて研究所のセキュリティも突破して、システムに侵入するっていうのはかなり難しいと思う」
レイラさんは問題点を教えてくれた。
「だから出来れば私が作るウイルスを研究所のセキュリティに侵入させて感染させてからハッキングを仕掛けたいんだけど、良い方法はない?」
レイラさんは僕たちにそう言って聞いた。
「えっと、リアライン研究所のシステムに侵入するにはまずレイラさんが作るウイルスを研究所のセキュリティの中に侵入させる必要がある」とアルフがレイラさんの話をまとめてくれた。
「その方法を考えようってことか?」
アルフは話をまとめた後、レイラさんに尋ねた。
「そういうこと。ウイルスを研究所のセキュリティの中に侵入させる事が出来れば、研究所のセキュリティへのハッキングもしやすくなる。でもウイルス無しだと時間がかかるし、そもそも出来るか分からない」
レイラさんはそう答えてくれた。
「なるほど」
アルフもみんなもどうするか考えた。
「それなんだけど……」
ヒロが皆におずおずと呼びかけた。
「オレさ、リアライン研究所で働いてる兄がいるんだ」
「!?」
僕も皆もヒロの言ったことに驚いていた。
「さっきのテレビの会見の時にも出てたシンヤ博士って人だよ」
確かに、先程見てたテレビの会見の時にシンヤ博士って人が研究所責任者達の中にいた。
みんなもその事を思い出したようだった。
「ごめん、今まで黙ってて。もちろん兄には未来のことやレアンのこととかも何も話してない」
ヒロはそう言った。多分ヒロの言ってる事は本当だと思う。
もしヒロがお兄さんに話していたなら、今頃研究所の人が訪ねて来ていたか、下手すればロボットの襲撃に合っていたかもしれない。
「それで、オレのスマホとか使ってレイラさんのウイルスを兄のPCへ流すこととか出来ないかなと思って」
ヒロはそう言って提案した。
「なるほど。それならいけるかも知れないけど、良いの?」
レイラさんがヒロに聞いた。
「お兄さんに事情を話してリアラインの破壊を手伝ってもらうよう説得するのは難しいの?」
レイラさんに続いてエディもヒロに聞いた。
「難しいと思う。兄は今何か重大な計画に全力を賭けているみたいで、その計画にリアラインが物凄く貢献してくれてるって言ってたから、レアンの未来の話をしても信じてくれないと思う」
確かに、今まで一緒に協力して来たリアラインのほうがレアンの言う事よりも信じられる可能性のほうが高そうだ。
「そっか。じゃあハッキングとウイルスの件はレイラさんとヒロに任せても良いかな?」
レアンがそう尋ねるとヒロとレイラさんはうんと頷いた。
「助かるよ」
これでひとまずリアラインの警備の事は大丈夫そうだ。
「後は、研究所を警備しているロボットに対抗できる武器とリアラインを破壊するための爆発物が欲しいな」
レアンはみんなにそう言った。
「それなんだけど……」
アリスさんが何と言えば良いのかといった様子で語った。
「実はこの家には地下室があって。そこに祖父が来たるべき時のためにって残してくれた武器庫があるの」
みんなアリスさんの話に驚いていた。
「……来たるべき時、それって今この時の為なのか?」
レアンが尋ねる。僕も同じことを思った。
「分からない。でも祖母なら祖父から聞いてるはずだから分かると思う」
「そっか、でもそれが今回のリアラインの事じゃなかったら、アリスさんのおばあさんは武器庫貸してくれないよなぁ……ただその武器庫にはロボットに対抗できる武器とリアラインを破壊するための爆発物があるかもしれないのか」
レアンが少し残念そうにそう言って、アリスさんもうんと頷いた。
「うん、でももしかしたらレイラさんなら武器庫に続く扉の鍵も開けられないかなって思って」
アリスさんがレイラさんに尋ねる。
「見てみないと分からないけど、試してみる価値はあるかも」
レイラさんはみんなにそう言った。
「レイラさん、武器庫の扉を開けるのもやってみてやらっても良い?」
レアンが色々頼んで申し訳ないと言った様子で尋ねたが、レイラさんは普通に頷いた。
「ありがとう、本当ありがとう。レイラさん」
レアンが重ねて感謝すると、レイラさんも良いから良いからと言う様に二回頷いた。
「アリスさんも、その武器庫の中に入れたら、中にある武器を借りてもいいかな?」
レアンは今度アリスさんに尋ねた。
「うん、ただレアンくん、みんなも何だけど。もし武器を使うなら約束をしてほしくて」
アリスさんはみんなに頼んだ。
「人を助けるためだから今回は特別に武器庫を貸すけど、それでも武器を使うときは自分や仲間の人の命が脅かされて危険な時だけにしてほしい。これだけは絶対に約束してほしい」
アリスさんのその頼みにレアンが答えた。
「分かった、絶対にその約束を守るよ。むやみに武器を使ったりしない」
レアンはそう答えて、僕たちもそのアリスさんの約束を守るとアリスさんに伝えた
アリスさんはうんと頷いた。
「後は、特に大丈夫かな?」
レアンはみんなに聞いた。
「うん、とりあえず大丈夫そうだな」
アルフもそう言って、みんなもうんと頷いていた。
「じゃあ次は作戦を立てないといけないんだけどそれは後で、とりあえず朝食食べるか?」
レアンはそう提案し、みんなもその提案に賛同したので僕たちは昨日と同じようにして朝食を食べた。
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