~現代編~
第17話 昨日の夢
意識はゆっくりと夢から現実へと戻され、僕はアリスさんのおばあさんの家のベッドの上で目を覚ました。
そうか、またレアンの記憶を夢で見たのか。
僕が体を起こし辺りを見渡すと、丁度同じ部屋で寝ていたレアンも僕が目覚めるのと同時くらいに目を覚ましていたようで、体を起こしていた。
「おはよう、とうさ、ノアル」
「おはよう、レアン」
レアンと僕は互いに挨拶の言葉を交わしたが、レアンはおそらく僕のことを父さんと言いそうになっていた。
「カーテン、開けていい?」
僕は部屋が暗かったので、窓についているカーテンを指してレアンに聞いた。
それにレアンは頷いてくれたので、僕は部屋の窓のところまで歩き、窓についているカーテンを開けた。
すると朝の穏やかな陽の光がこの部屋を明るくし、窓からは朝の陽の光に照らされた大自然が見渡せた。
「夢みたか?」
レアンは僕に聞いてきた。
「うん」
僕はそう答えた後、窓についている半透明のカーテンの方だけを閉め、自分がさっきまで寝ていたベッドの方に向かい、その上に座った。
「呼び方、ノアルのままでいいか?」
レアンは僕に僕の呼び方がこのままでいいか聞いてきた。レアンが僕に僕の呼び方を聞く理由は、彼の未来の記憶の中の僕が彼の父親だったからだろう。
「うん、そっちの方がいい」
「そっか、オレもそっちの方がいいから、そのままでいこう」
レアンも元のままが良いと答えてくれて僕はうんと頷いた。
「……とりあえず、昨日の夢で分かったことを整理するか?」
「そうだね」
というわけで僕とレアンは思い出したこと、分かったことなどを整理し始めた。
主にタイムトラベル計画のことや敵の正体、リアラインのことなどを整理した。
「それにしても未来の僕は今の僕とは色々違ったね。未来の僕は今の僕と姿は似てるけど別人みたいだった」
まさか、未来で人前に立つリーダーになっているなんて想像もしなかった。
本当に僕と同じノアルなのかと今でも思う。おそらく未来の僕は戦争中だったからというのもあると思うけど、いつか僕もあんな風になれるのだろうか。
「まぁ、だいぶ変わったところもあるかもしれないけど、でも根本のところは変わって無いとオレは思うけどな。父さんも、今のノアルもそれぞれで良いとおもうよ」
レアンは真っ直ぐな表情で僕を見てそう言ってくれた。
「そうかな、ありがとう」
そこまでまっすぐに言ってくれると嬉しいが少し恥ずかしい気もする。でもやっぱり嬉しい。
「そういえば夢の中に出てきたエディも今の時代のエディと同じ人のようだったし、もしかしたら同じく夢に出てきたソフィアさんも昨日アルフ達から聞いた音楽部のソフィアさんと同じ人なのかな?」
僕は気になっていたことをレアンに聞いた。
「そうだな、エディはそのとおりだと思う、ソフィアさんのことはまだ詳しく思い出せてないのとこの時代で見かけたことがないからなんとも言えないけど、同じ人である可能性は充分にあると思う」
「そっか、それならシェイラ博士だったかな。その方が言ってた魂の結びつき、もしくは単なる偶然なのかもしれないけど、未来で僕たちの近しい所にいてくれた人は、今も近しい所にいるのかもしれないね」
「そっか、そうかもな。そうだといいな」
レアンはハッとして少し嬉しそうで、僕もそうだといいなと思った。
「ノアル」
レアンが僕の方を見て真剣な表情で言った。
「オレは多分、夢の中で言ってた計画でこの時代に来たんだと思う。オレには記憶の中で見た父さんやエリィ姉さん、リィナ、ジャック、指令官、エマちゃん、未来で生きてきた全ての人の希望が託されているはずなんだ」
レアンは昨日の夢で見たみんなを思い返すように言った。
昨日の夢の演説の通りならレアンはこの時代に来て人類の敵、『リアライン』を破壊するトラベラーの任務を背負っている。
「オレはリアラインを破壊して戦争を止めなければならない」
レアンは決意を語った。
「ノアル、危険な事はしなくて良い、できる限りで良いんだ。これからも君の力を貸してほしい」
レアンは僕にそう頼んだ。
「もちろん、手伝うよ」
僕がそう言うと、レアンはホッとして安堵し嬉しそうに「ありがとう、ノアル」と僕に礼を言った。
その後も僕たちはリアラインのことやタイムマシンのこと、その計画のこと、そして僕たちや音楽部のみんなの関係のことなど分かったことをまとめた。
ただ人類の敵がリアラインだと言うことは分かったけど、正体が何なのかはレアンも僕も分からないままだった。
「まぁ、大体こんな感じか?」とレアンが言った。
大体僕たちは昨日の夢の中の記憶についてのことをまとめた。
「そうだね」
「じゃあ、そろそろみんなのところに話に行くか?」
「うん」
というわけで僕たちは皆に昨日の夢の事を話すために下の階へ降りて行った。
僕たちが階段を降りている時に「おはよう」と先に起きて一階にいたアルフ、アリスさん、レイラさんが僕たちを見つけて声をかけてくれた。
なので僕とレアンも「おはよう」とその声をかけてくれた三人に返した。
僕たちは二階から一階へ階段を降りきり、リビングへとたどり着いた。
「ノアル、レアン。これ見てくれ」
アルフはそう言ってアリスさんのおばあさんの家のテレビを指さした。
そのテレビには朝のニュース番組が映っており、リアラインに関することが報道されていた。
その内容はリアラインロボットの新型配備の話やシステムの導入を増やしたりする話で、さらにその後昨日の昼の出来事も放送されていた。
それは監視カメラからの映像のようだったが、昨日の新型ロボットによる襲撃から僕たちが走って逃げている映像で、僕たちの姿にモザイクが入った状態で流されていた。
そういえば昨日の昼、僕達を襲い、追っていたのは新型ロボットだけだった。
そして次にニュースの内容は僕達を襲ったロボットを作った研究所の責任者達の会見となり、彼らは無関係な市民をいきなり背後から襲ってしまったことについて、いくつかの新型個体の故障だったと理由を話し、謝罪もしていた。
その後質疑応答の時間となり、質問と答えが繰り返されていたがテスト中の新型の配備はこのまま進めるのかという質問に対しては一旦保留をするが、その間に故障の原因を突き止めて改善し再び配備を広めていきたい方針だと言っていた。
さらに襲われた被害者の方には直に謝罪して賠償金も支払いたいということを言っていた。
他にも僕たちはSNSでこのリアライン関係のことについて調べてみたが今のところリアラインロボット襲撃事件やその対応についての反応が殆どで、幸いにも個人が特定されてしまいそうな投稿や昼のロボットたちの襲撃の動画などは見当たらず、僕たちの身元は分かっていないようだった。
「そういえば何か思い出せたことはあるか?」
アルフが僕とレアンの方を見て尋ねた。
「あぁ、昨日また夢を見て分かったことがある」
レアンが皆の方を見てそう言ったとき、丁度ヒロとエディも起きてきた。
そして二人もニュースを見て、世間の現状と反応を知った。
「ちょっと一旦目覚ますために顔洗ってくる。それから話し合おう」
ヒロがそう言い、僕たちは一旦顔洗ったり、色々済ませた後、みんな飲み物をコップについでそれを飲んで一息つくと、話し合いをするためにリビングのソファーに座った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます