第15話 特殊作戦計画 

 それからは結局、デルタ区にいるほとんどの人が自分達の出来る限りのことを精一杯やって、共に最後まで戦うと決断した。

 その後オレ達デルタ区にいる人間はリーダーたちの指示の下、リアラインの総攻撃に備えて皆忙しくそれぞれデルタ区を守るための防衛準備を始めていた。

 おそらく父達指導者はリアラインの総攻撃からデルタ区、基地を防衛するための軍の編成や配置、作戦をあらかじめほとんど考えていたのか、連絡員を通じて基地の防衛準備の情報を素早く各班長や隊長に伝え、そこからさらに兵士たちや一般区民に伝えることが出来ており、おかげで人々はスムーズに準備を進めることが出来ていた。

 オレもリィナやジャック、合流したルイとライ、エコー区民、デルタ区民のみんなと一緒に協力して装備を整えたり、防御陣地を構築していた。

 そんな時本部の兵士からリーダーたちがオレとその班員たちを呼んでいると知らせがあった。

 オレたち五人は一旦エマちゃんをエコー区民の人々に預け、父達がいるデルタ基地に向かった。 


 デルタ基地に着くと、防衛準備のためせわしなく人が行き交う通路をオレ達は歩き、パソコンで何か作業をしている人、物資を運んだり、取引したりしている人、なにかの記録を取ったりしている人、武器管理室で武器を管理している人、病院室で患者を見ている人など様々な人々の姿を横目に進み、司令室にたどり着いた。

 司令室にはリーダー達四人がいて、そこには顔見知りの科学者のシェイラ博士と他にオレたちのように呼ばれたであろう五人の大人とオレたち五人と同じくらいの年齢と思われる少年少女たち五人がいた。

「これで揃ったな」

 父がオレたち五人が来た後、周りを見てそういった。

「みんな良く聞いてほしい。ここに呼んだ君たちは腕が立ち、信頼もできるこのデルタ区きっての精鋭たちの集まりだ。そう俺は思っている」

 一体父は何をオレ達に話そうとしているのだろうか? もしかしたら過去へ行く人をこの中から選ぶとかか?

「そんな君達に二つ頼みたいことがあるんだ」

 リーダーたちに呼ばれたオレたちは何を告げられるのかと父の言葉を慎重な面持ちで聞いた。

「一つ目は、この中から過去へ行く者を決めてもらいたいという事だ」

 ここに呼ばれたみんなは顔を見合わせた。

「ただ一つ条件がある。それはタイムマシンで過去へ行けるのは十六歳以下の者だけだという事だ。だから十六歳以下の者の中だけから誰が過去へ行くかを決める必要がある」

 何で十六歳以下だけなんだろう?

「何で十六歳以下なのか気になる者もいるはずだ」

 父がそう言うと、ここに集められたみんなが頷いていた。

「それは、せっかくだ。博士に説明してもらおう」

 待ってましたと言わんばかりにシェイラ博士は前に出た。

 博士は茶髪でショートより少し長い髪に、持ち前の明るさと真っ直ぐさを感じられる顔立ちをしている。

「博士、なるべく簡潔にお願いします」

 父が博士に念を押して、博士は頷いた。

 父が念を押した理由は、博士が好きな事になると一生話し続けてしまうからだろう。博士は前向きで良い人だけど、オレも博士の話にほぼ一日付き合わされた事がある。

「タイムマシン開発の責任者、シェイラです。よろしくお願いします」

 シェイラ博士は簡単な自己紹介をしたので、オレ達も頭を下げた。

「えっと、まず十六歳以下の者だけしか過去へ行けない理由を話す前に、私達が作ったタイムマシンで過去へ人を送る。その仕組みの説明をしますね」

 博士は説明をしてくれて、オレ達はその話を聞いた。

「わたしたちが作ったタイムマシンで過去へ人を送る場合は、その過去へ行く人の魂をタイムマシンで過去の誰かの魂へと繋げる。そうすることでこの時代から過去の時代へと人を送ることができるんです」

 魂をつなげる? 魂って生き物が持っていると言われているアレの事か?

「それで私達が魂って呼んでいるモノは、まだ分からないことのほうが多いんですけど少しは分かっている事もあって、それは人間一人一人が持つ記憶を保管したり意識を反映させたり、この体を生成したりしている人間の根本、核となるようなものだということがおおよそ今分かっていることです」

 シェイラ博士は身振り手振りで魂と呼んでいるモノについての説明もしてくれた。

「その一人一人が持っている魂を二人の間で繋げる。私達は魂を繋げる事をリンク、過去へ行く人の事をトラベラーとよんでいます。それでさっきも言った通り、トラベラーをタイムマシンで過去の誰かへとリンクさせて、この時代から人を過去の時代へと送り込むんです」

 大体のタイムマシンで過去へ人を送る仕組みを理解できたような気がする。

 それにしても人っていう生き物は不思議だ。それに魂以外にもオレ達人間が知らない不思議なことがいっぱいあるのかもしれない。

「後、一応トラベラーのリンク先の人は血縁関係が近い人のほうが良いっていうのもあります。やっぱり血縁関係が近いと魂が似ていたり、魂の結びつきが強い傾向が高確率で高いみたいで、魂の結び付きが強いとトラベラーもリンク先の体になじみやすいし、存在するためのエネルギー消費も少なくて済むようです」

 博士の話しはすごく大事な事だが、少し脱線しそうになっているような気がする。

 それは博士の良いところでもあるのだが偶に悪いことになってしまう。

「それにやみくもに結びつきの強さを調べるよりも確実なので。でももちろん血縁関係以外でも魂の結びつきが強い事例が結構あるし、それ以外にも年齢が近いほうがリンク先として良かったりとかもあります。後ーー」

「博士、時間はあまりないので。十六歳以下の者だけしか過去へ行けない理由をそろそろ」

 博士がさらに付け加えて話そうとしていた時に、父が苦笑しながらそう促して、博士は我に返った。

「すみません、つい。えっと十六歳以下の者だけしか過去へ行けない理由ですね」

 博士はすみませんと謝り、遂に本題を話してくれた。

「それはタイムマシンによって送られる時代に自分が存在している人だと、その人の魂が送られた瞬間にその時代に元から存在していたもう一人の自分の魂と同化してしまって、過去へ送られた人の存在そのものがその時代のもう一人の自分へと完全に同化してしまうからです。そうなればその人はこの世界の未来の記憶を忘れ去って計画を遂行することもできなくなります」

 シェイラ博士の話に、ついていけてる人と少し頭を抱えている人もいる。オレは後者だ。

「さらにタイムマシンによって送る時代に自分が生まれてない人なら確かにその時代に送ることは出来る。けど、それでもその行った先の時代で魂の同化を防げるのは一週間が限界です」

 ここに集められた人たちの顔が曇る。

「一週間を過ぎると、過去へ送られた人はまだこの世に自分が存在していなくともその時代の世界へと魂と存在が同化してしまう。そしてその過去へ送られた人と同じ魂を持つ自分がその新たな世界に産まれた時には、もうおそらく人類とリアラインとの戦争が始まっているはずです」

 博士が説明し終えると、父がみんなに向けて要約してくれた。

「つまり条件的にトラベラーになれるのは十六歳以下の一人の人間で、さらに約一週間でリアラインを破壊しなければならないってことだ」

 これまでギリギリ話についていけて、なんとなく話の内容がわかっていたオレのような人は父の要約で助かった。

「はい、その通りです。向こうでの体の生成、維持は自分が存在するためのエネルギーを使いますから。その分の存在できる時間が実質一週間なのです」

 なんとか敵の総攻撃を抑えて、誰かがタイムトラベルできたとしてもそんな条件がある中、たった一人でリアラインを破壊しなければならないのか。

 確かにこの作戦は人類に残された最後の賭けみたいな作戦だ。

「ただトラベラーにも一応のメリットはあります」

 博士はトラベラーになる者のメリットも話してくれた。

「それはトラベラーは魂だけの存在になる魂化というものができるようになるはずだということです」

 集められたみんなも少し良い情報を聞けそうで表情が少し明るくなる。

「魂化っていうのは言葉通り魂だけの存在になることで、その魂化から元に戻ることを現体化と言います」

 そんなことが出来るのか。

「トラベラーが魂化している時は他の人や物、生き物を通り抜けることが出来る用になって、さらに他の生き物にその姿を視認されることは無くなるはずです。ただトラベラー自身も魂化している間は他の生き物や物に触れることが出来なくなるんですけど、それでも魂化と現体化は使いこなすことが出来れば役に立つことだと思います」

 博士はタイムトラベルをする事でのメリットを話せて少し安堵しているようだった。

「まぁそういうことなんだが、みんなは何か聞きたいことはあるか?」

 父は集められたオレ達に尋ねた。

「ハイ」

 今度はジャックが手を上げ、父はどうぞと促した。

「その、タイムマシンによるタイムトラベルは絶対に上手く行くんですか?」

 ジャックはそう尋ねた。

 父は博士の方に目配せをして博士は頷いた。

「私達の理論上の考えでは上手くいくはずです」

 ジャックの質問には博士が答えた。

「でも実際にタイムマシンを使用して誰かをタイムトラベルさせたことは無いから百パーセント上手くいく保障はない、失敗するかもしれないし上手くいっても想定外のことが起きるかもしれない」

 結局最後はやってみなければ分からないってことだ。

「だからこのタイムマインを使って過去へ行く人はその危険性を覚悟して、さらに人類の未来も背負ってもらうことになります。……すみません」

 シェイラ博士は申し訳なさそうに答えた。

「いえ、答えてくれてありがとうございます」

 ジャックは不利な情報も答えてくれた博士にお礼を言った。

「他に何か聞きたい人はいるか?」

 再び父が尋ねると「ハイ」と続けてリィナが手を上げ、父がどうぞと促した。

「あの、もしタイムトラベルが成功して、誰かが過去に行って、過去を変えることができたとしても、私達のいるこの未来には影響がなくて何も変わらないという可能性もあるんですか?」

 リィナはそう尋ねた。

「そうですね。私達の考えでは過去へ誰かが送られた瞬間、私たちの時間もその時代へと繋がり、送られた人が過去を変えればその先の未来も変わるはずだと考えています。けどこの事も実際に試したことはないから、その通りに行かない可能性ももちろんあります」

 博士はそう答えてくれた。

「そう、ですか。ありがとうございます。もう一つ聞いてもいいですか?」

 リィナは博士に尋ねた。

「ハイ、どうぞ」

 博士は頷いた。

「もし作戦が上手くいって過去が変わって未来も変わったとしたら、その変わった世界には例えば私が生まれなかったり、私たちが知らない人同士になるってこともあるんですか?」

 リィナがさらに博士に尋ねた。

「それも確証は無いけど私の考えとしては過去が変わってそれで未来も変わって、この戦争も無くなったら、私達が出会わないっていう結果になるかもしれない。でもまたどこかの時代でいつか再び出会うこともあるんじゃないかって私は思ってるんです」

 博士はそう言って、なぜそう思うのか理由を話してくれた。

「それは何故かというと、私たちが思っている以上にさっき話した魂っていうのものが不思議な存在みたいで。例えばあなたとレアンくんはとても仲がいい」

 博士は少し微笑んでみんなにも分かるようにリィナと俺の方を手で指してそう言った。

「彼女達を知らない方もとりあえず仲の良い二人を思い描いて考えてみてください」

 博士に悪気は無さそうだったがオレがリィナの方を見てみると、リィナは顔を反らし、伏せてしまった。

「そのレアンくんとリィナさんの仲が良い理由は一般的に考えれば二人の性格の相性だったり、長い時間を共にして、お互いのことを深く理解しているから仲良くなれたって考えたりすることができます」

 博士はこのデルタ基地でまぁまぁ知られているオレたちの事を例に出して説明していた。

 だからそれを知っている人やそれ以外の人たちの視線も父さんやオレたちの方に向けられて、確かにリィナがそれに恥ずかしくなるのも少しは分かった。

「でも魂にも強い結びつきっていうものがあるみたいでその考えを元に考え直すとレアンくんとリィナさんの魂の結びつきが元々強かった。だから二人は出会う事が出来てとても仲良しになったとも考えることが出来るし、司令官のノアルさんとその息子のレアンくんが親子になったという事実も魂の結びつきが強かったから親子になったって考えることもできます」

 周りの反応を見るに一応オレたちの事をあまり知らない人たちにも博士の説明は伝わったようで、オレたちが恥ずかしい思いをしたのも無駄ではなかったのかもしれない。

「だから過去が変わってそれで未来のこの戦争が無くなったら私達が出会わないっていう結果になるかもしれないけど、でもまたどこかの時代でいつか再び出会えるんじゃないかって仮説を私は立てているんです」

 博士はそう言って、さらに続けた。

「まぁつまり私達にそれらを確かめるすべは今のところ無い。出会いは偶然かもしれないし、魂の結びつきによる必然かもしれない。もしくはその両方かもしれないとも言えるということです」

「えっと、つまりタイムトラベル計画は理論上大体上手くいくと思うけど実際の所はやってみないと分からないってことで良いですか?」

 オレは博士に確認した。

「そう、そういうことですね。すみません、皆さんにとってあまり良い情報を答えることが出来なくて」

 博士はみんなに謝った。

「いえ、答えづらいことも答えてくれてありがとうございます」

 オレは答えてくれた博士にお礼を言って、リィナも礼をした。

「他に何か聞きたい人はいるか?」

「ノアルさん、最初に言ってた二つ目の頼みとはなんですか?」

 父が尋ねるとここに呼ばれた女性の一人が尋ね、父は頷いて答えた。

「二つ目の頼みは、君たちにある特殊任務を遂行してほしいということだ」

 父はそう言って、特殊任務の内容を説明した。

「その特殊任務とはこのデルタ区を俺やみんなが守っている間にエディとエリィの指揮の下、その二人と君たち精鋭部隊でここから一番近いこのリアラインの基地に侵入し、その基地の動力源となっている燃料を取ってきてほしい」

 父は机の上に敷いてある地図の敵基地の場所を差してそう言った。

 オレたちはその話を聞いて敵の基地に侵入するということに驚愕したが、その基地の燃料を奪うということにはより困惑した。

「何か聞きたいことはあるか?」

 父はオレ達に尋ねた。

「その任務を遂行する意味はなんですか?」

 父達に呼ばれた内の一人の男が父に尋ねた。

「それは、その燃料がないとタイムマシンが起動できないからだ」

 それを聞いて、呼ばれた者たちは深刻な表情になった。

「タイムマシンの起動には莫大な電力が必要だ。その莫大な電力量を発電するためには、どうしてもリアライン基地の動力源になっている燃料が必要なんだ」

 父は燃料が必要な理由を説明した。

「えっと、でもタイムマシンの起動に時間はかかるんですよね?」

 リィナが父に尋ねた。

 確かに先程の広場ではタイムマシンの起動には時間がかかるって話だった気がする。

 それなら敵基地から燃料を取って、タイムマシンを起動する時間、リアライン軍からの猛攻を耐えなきゃいけないってことか?

「それが、タイムマシンの起動にほぼ時間はかからない。俺はさっきの広場でタイムマシンの起動に時間がいると言ったが、あれは作り話だ」

 父の話をみんなは神妙な顔つきで聞いていた。

「それはみんなの士気の低下をなるべく最小限に抑えるためというのもあるが、一番はリアラインに本当の事を知られて特殊作戦に対応出来る時間を与えたくなかった。だから本当の事を隠し、作り話を皆に伝えた」

 確かに人類の中にも何故かリアラインに攻撃されず、リアラインの味方となる人間が稀にいる。

 彼らは人類に対して直接的な攻撃を行ってくることはあまりないが、オレたちが人類側に潜入した彼らを見つけるのは困難でその隙に彼らは妨害行為や情報の奪取などの間接的な攻撃をしてくる時がある。

 彼らがなぜリアラインに攻撃されないのかは分からない。

 ただあの広場での演説時にも彼らは人々の中に紛れて話を聞いていた可能性もある。

 そう考えると父がタイムトラベル計画の内容全てをみんなに伝えなかった事は正解なのかもしれない。

「だからみんなでタイムマシンが起動するまで、敵の総攻撃を食い止めるという目標は変わらない。だが俺が嘘を付いて敵の総攻撃を食い止めるようみんなを促したという事実も変わらない」

 父の先程の広場での演説に嘘が混ざっていたことは少しショックだったが、理由を聞けば確かに嘘を付く必要もあるとオレは思った。

「すまない」

 父はここに呼んだみんなに頭を下げて、謝った。

「ノアルさん、大丈夫ですよ。少し複雑な気分にはなりますが皆のための嘘なら俺は受け入れます」

 ここに呼ばれた一人の男がそう言って、オレも皆も頷いた。

「ありがとう、みんな」

 父は少しホッとしているように見えた。

「もちろん俺もここでデルタ区の皆と共に最後まで戦う。その時、敵はデルタ基地を落とすのに集中して、いつもより自分達の基地の防御が手薄になるはずだ。その時に特殊作戦部隊のみんなにはさっき説明した作戦を遂行してもらいたい」

 みんなが耐えている間に、敵基地の奥深くに侵入し、燃料を取って帰る。困難な作戦だ。でもそれしかない。

「だが、いくら敵の防御が手薄になるといっても特殊作戦計画は極めて危険で難しくさらに人類の命運もかかっている。タイムトラベル計画も必ず上手く行く保証はない。君たちにも何か他に優先すべき大事なものがあるかもしれない。だからみんな一人一人、よく考えて決めてほしい」

 オレはこの任務を受けたい。ただエコーの司令官との約束、エコーのみんなを守るという約束がある。

 どうする。

「タイムトラベル計画に希望を繋げるため特殊作戦計画の任務を受けるか、受けないか」

 特殊作戦部隊の隊員候補に選ばれたオレや皆はしばらく黙って考え、悩んでいたが一人の男が「俺は受けたいと思います」と言って特殊作戦部隊の隊員として作戦を遂行することを決意したのを気に、みんなもルイとライの二人も覚悟を決めて了承していった。

 残るはオレとジャックとリィナだけになった。

「オレも任務を受けたいです。けどここデルタ区に来たばかりのエコー区のみんなのことも気になる。彼らを守ると、死んだエコー区の司令官とも約束したんです」

 オレがそう言うと、リィナとジェックも頷いた。

「たしかに彼らはここに来たばかりで慣れないことも多いな。一応ソフィアにエコーの人々の指揮をとってもらう予定だか、顔見知りの人がいた方が彼らも安心するか」

 父は顎に手をあててつぶやいた。

「私がエコー区のみんなと一緒に戦ってもいいですか?」

 リィナは手を上げて、父とここにいる皆にそう言った。

「それなら二人もまだ少しは安心できるでしょ」

 さらにリィナはオレとジャックにそう付け加えて言った。

「頼んでも良いか?」

 オレはリィナにそう聞いて、リィナはうんと大きくうなずいた。

「すみません、ノアルさん。私はエコー区のみんなを守りたいです。もちろんこの特殊作戦のことは誰にも言いません、なので特殊作戦部隊から外してほしいです」

 リィナは自分の思いを伝え、「お願いします」と父に頼んだ。

「分かった、ソフィアと共にエコーのみんなを頼む」

 父はリィナの頼みを快く承諾した。

「二人は、どうする?」

 父はオレとジャックに特殊作戦を受けるか聞いた。

「受けます」

 オレとジャックはエコー区の皆のことはリィナに任せ、特殊作戦を受けたいと父に伝えた。

 結局、エコー区のみんなと戦うリィナ以外は父の申し出を受けることになり、父は特殊作戦を遂行することを承諾してくれた皆に感謝した。

「後はみんなには過去へ行く者も決めてもらいたいんだが、誰か良いと思う人はいるか?」

 父はみんなに尋ねた。

 その瞬間、みんなの視線がオレに向けられた。

「オレ、ですか」

 オレが戸惑っていると、リィナが言った。

「私はレアンが良いと思う。この中で一番強いし、いつも前向きで、最後まで諦めないから。頭は……良いわけじゃないけど、悪くはないし」

「最後のは余計だ」

 オレはそう言った。するとみんなが笑い、オレもつられて笑ってしまった。

 お陰で少し場の雰囲気が和やかになった。

 その少し後、ジャックもオレを後押しするように言った。

「オレもレアンが良いと思う」

 そのジャックの意見にみんなも頷いていた。

「レアン、やれるか?」

 父がオレに問う。

 みんなの希望を、人類の希望をオレが背負うのか。過去へ行ってリアラインを破壊する……出来るのか、いや出来るかどうかじゃない。やるしかない!

「やります! オレが過去へ言って未来を変えて見せます!」

 オレが決意を固め、そう言うと父は頷いた。

「レアン、ありがとう。頼んだぞ」

 オレは頷き、これで過去へ行くのはオレに決まった。

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