第9話 逃亡
僕が驚いて後ろを振り返ると、そこにはスタンガンを今にも僕に振り下ろそうとしている警備ロボットがいた。
紺色のロボット、昨日テレビで言ってた新型のロボットだ。
僕は迫り来るスタンガンを避けようと体を動かしたがもう遅い。
避けられない! そう思った時、すでに現体化し、先程まで隣りにいたレアンが素早く僕とロボットの間に入って、僕に迫っていた新型ロボットのスタンガンを持った手を受け止め、そのまま左足で思いっきり新型ロボットを蹴った。
その新型ロボットは後方に跳び、さらに後ろから迫っていた黒色の二体の新型ロボットに激突し、その三体とも歩道に倒れた。
僕は当たりを見回す。
そこには愕然とし固まっている皆と、他にもまだ遠いが数体の新型ロボットがこちらに向かって走ってきていた。
狙いは僕とレアンだけなのか、それとも他の誰か、いや皆かも知れない。分からない。
「みんな、悪いけど説明している暇はない! 今はオレについてきてくれ!」
現体化し、皆にも見えるようになったレアンは皆にそう頼んだが、皆はいきなり現れたレアンといきなり襲ってきたロボットに困惑し動けないでいる。
「今はレアンと僕を信じてついてきてくれ! 頼む!」
僕も祈るような思いでみんなに頼んだ。
「私レアンくんに、彼に助けられたことがある。だから今は二人を信じよう!」
アリスさんがそう言ってくれた。
そのおかげで皆も「分かった」とひとまず僕たちを信じて付いてきてくれるようになった。
「え、えっと」
しかしレイラさんは今の状況にまだ困惑し、自分がどうすべきか迷っているようだった。
「レイラさん、とりあえず今は私たちと一緒に来て!」
今度はアリスさんがレイラさんに手を差し出した。
レイラさんは分かったと頷き、アリスさんの手を握った。
「よし、逃げるぞ!」
僕たちはレアンに続いて、追ってくるロボットたちから全力で逃げた。
それから僕達はレアンを先頭に町中を全力で走り、数分後、何とか追ってくるロボット達から逃げ切ることが出来た。
僕たちがロボットに襲撃された場所は人気の少ない場所で、あまりロボットも配備されていない場所だったから、追ってくるロボット以外の他のロボットに遭遇することはなく、挟み撃ちをされたりすることもなくて、運が良かった。
「レアン、多分ロボットはもう僕たちを見失ったと思うから。少しスピードを緩めて欲しい」
最後尾から僕は先頭にいるレアンにそう言った。皆も僕もバテバテだった。
「そうたな、ごめんみんな。一応まだ油断は出来ないけどスピードは緩めよう」
レアンは走る速度を緩めていき、最終的に早歩きぐらいにした。
その間に皆は全力疾走で乱れた息を、少しづつ整えることが出来た。
「どこか行く当てはあるのか? えっと」
歩きながらアルフがレアンに尋ねた。
「レアンだ、行く当ては悪いけど無い。皆はどこか奴らから身を隠せそうな場所、知らないか?」
レアンは皆に尋ねた。
僕と皆は何とか身を隠せそうな場所を考えるも、中々思い浮かばなかった。
「あっ」
アリスさんがなにか閃いたように呟いた。
「どこか良い場所があるのか?」
アリスさんの様子を見たレアンが尋ねた。
「祖母の家なら、周りに配備されてるロボットもいないし、身を隠せられると思う」
「そこに着くまでの道のりと時間は大体どんな感じ?」
「えっと、まず私の家に向かってそれから秘密の通路を通って祖母の家に向かう感じかな。とりあえず私の家にさえつけば後は大丈夫だと思う。祖母の家までの時間はここから大体三十分ちょっとくらい」
アリスさんの言う通りならなかなか良い案かもしれない。
「それが良さそうだな。よし、それで行こう!」
レアンはアリスさんの考えを採用した。
「それまでの案内をアリスさん、お願いします」
レアンはアリスさんに案内をお願いし、アリスさんも分かったと頷いた。
先頭にアリスさんが加わった。
「じゃあまずは私の家に向かうね。そこから祖母の家に向かう方が早いし安全だと思うから」
みんなも分かったと頷いた。
僕はアリスさんの言う秘密の通路のことが気になったが、それは後で考えることにした。
ここはアリスさんの案に賭けるしかない。
僕たちはロボット達を警戒しながらまずはアリスさんの家を目指して早歩きで向かった。
その後、僕たちは追ってくるロボットに見つかることもなく無事アリスさんの家の玄関前に到着した。
アリスさんの家も僕の家と同じような作りの家だった。
「多分私の家族は妹の迎えと買い物に出かけてるはずだから、今はまだしばらく帰ってこないはず」
アリスさんはそう言った。
「押して見るね」
アリスさんがインターホンを鳴らした。
少しの間待ったがやはり返答は無かった。
「やっぱりいないみたい」
アリスさんは家の鍵を取り出し、その鍵で玄関の扉を開けた。
「どうぞ」
「お邪魔します」
アリスさんに続いて僕たちも玄関に上り、家の中にお邪魔した。
僕たちはアリスさんに連れられ、リビングについた。
アリスさんの家の中は特段変わってる家という感じではない。分からない、アリスさんの言う秘密の通路がどこにあるのか、そもそもどういう意味なのか。
「カーテン閉めとく?」
アリスさんがレアンに尋ねた。
「お願いします」
アリスさんは頷き、外から僕たちが見えそうな窓についてる家のカーテンを閉め、それで家の中が暗くなったので電気もつけ、僕たちの元へ戻ってきた。
「ノアル、レアン、聞きたいことがあるんだけど良いかな?」
エディが僕とレアンに聞いても良いのか尋ねたので僕たちは頷いた。
「あの、さっきのロボットに狙われてるのってレアンとノアル? もし僕たちも狙われてるなら、家族にも今大丈夫か連絡を取りたくて」
皆もそのことは気になっているようだった。
「狙われてるのが誰なのか正確には分からない。でもおそらく狙いはオレか、もしかしたらノアルもかもしれない。けど確証がなくて、この中の他の誰かかもしれないし、みんなもオレやノアルと一緒にいたから襲われるかもしれないと思って、オレが判断してみんなにも付いてきてもらった」
レアンがエディの問いに答えた。
確かにレアンの言う通り狙われたのは僕かレアンの可能性が高いが、確証はないし、そこに居合わせてしまったみんなも巻き込まれる可能性があった。
「オレの判断が間違っているかもしれないし、みんなを、ノアルも巻き込んでしまった。本当ごめんなさい」
レアンはみんなに巻き込んでしまったことを謝った。
「大丈夫だよ。あの時、レアンがロボットを倒してくれてなかったら僕たちがどうなってたかも分からないし、僕たちのことを守ろうとしてくれた判断なら間違っててもレアンを責める気にはなれないよ。それに追われるのは少し怖いけど、これからみんなで過ごすのも楽しそうだからさ」
エディは首を横に振った後、和やかに微笑んでそう言ってくれた。
みんなも僕もエディと同じ気持ちだと頷いた。
「ありがとう」
レアンは安心し、嬉しそうにだった。
「じゃあ、家族に連絡を取るだけなら良い?」
エディがレアンに聞いた。
「うん、もちろん。ただ念のため、どこに行くか聞かれたら友達の家ってだけにして置いてほしい」
「分かった、じゃあメールだけのほうが良さそうだね」
「それでお願いします」
エディはうんと頷いた。
「じゃあ、オレもメール送るよ。レアンの注意ごとは守るからさ」
アルフがそう言い、「オレも」とヒロも言って、エディとアルフとヒロは家族に送るためのメールを作成し始めた。
「レアンくん」
アリスさんがレアンを呼んだ。
「私も家族にメール送りたいんだけど、私は通路を使うから家族には祖母の家に行ったのが今日中にバレると思うんだ。それでもメール送っていいかな?」
アリスさんはレアンに聞いた。
「そうだな、とりあえずアリスさんにはメールで家族にいつも通り大丈夫かだけ聞いてもらって。どこにいるか聞かれたら、正直にアリスさんのおばあさんの家に向かってるって話すしかなさそうだな。家を使わせてもらった理由は、また後で考えて伝えよう」
「うん、分かった。じゃあそのとおりに送るね」
「ごめん、それでお願いします」
アリスさんもメールの作成を始めた。
ただ僕とレアンもレイラさんは家族にメールを送らなくても良いのか気になって目線をレイラさんの方に向けると、それに気づいたレイラさんは「私は大丈夫」と答えた。
僕たちは頷き、それ以上は何も聞かなかった。
その少し後、皆はメールを家族に送り終え、返信を待つだけになった。
「じゃあ、そろそろ良いかな?」
レアンが皆に聞いて、みんなもうんと頷いてくれた。
それから僕たちはアリスさんに連れられある物置棚の前に立った。それは何の変哲もない物置棚だった。
するとアリスさんは僕たちの方を見てニヤっと笑った。
その後、彼女は物置棚の仕切りの部分に手を当て左へ押した。
「!?」
物置棚が左へとスライドしていく。
そして目の前にはさっきまで棚で隠されていた別の部屋が姿を現した。
隠し部屋! 初めて見た!
皆も隠し部屋を初めて見て、さらに友達の家に合ったということに唖然としていた。
それもしょうがないはずだ。あのレアンも僕らほどではないが驚いているのだから。
そんな僕たちの反応を見れたアリスさんは上機嫌のようだった。
「どうぞ」
僕たちはアリスさんに隠し部屋の中へ案内された。
案内された隠し部屋の中も特に変わったものは無かったが、再びアリスさんはとある場所で立ち止まった。
そのには大きめの床についてある扉の様なもの、床扉があった。
「もしかして、そこ?」
ヒロがアリスさんに尋ねると、アリスさんはうんと頷き、その床扉の扉を開けた。
その床扉の先には、階段があり、その先には地下通路らしきものが続いていた。
「おぉー」とか「すっげーな」と隠し床の先の領域に僕も皆も興味津々だった。
「みんな、準備は良い?」
アリスさんは僕たちに尋ね、僕たちはうんと大きく頷いた。
それを見たアリスさんもうんと大きく頷き、隠し階段を降りていった。
僕たちもアリスさんに続いて未知の領域へと足を踏み入れて行った。
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