第5話 戦闘
オレたちは通路を走り、ついに銃声が聞こえる大広間の二階の入り口へとたどり着いた。
そこからは二階と一階の両方に敵ロボット達が見えた。
二足歩行で体格は平均的な大人の男性くらいだが、体は金属や他にも様々な素材が組み合わさって作られており、ロボットの個体によって違うが大体が明るいか、暗い、白や灰、黒色をしているいることが多く、銃を手にしたその敵ロボット達は一階の奥の端の方で倒れた机や長椅子を積み作られた簡単な遮蔽バリケードに隠れながら応戦しているこのエコー区の生き残りの兵士や一般人を銃撃している。
人類は一対一ならロボットには基本負けない。でも敵は圧倒的な数によってオレ達を追い詰めてきた。今のこの状況はその典型的な場面だ。
「彼らを助けるぞ」
オレは班員にそう伝え、班員も即座に了承し、オレたちは入り口から跳び出した。
オレたちはまず生存者達に釘付けになっている二階のロボットたちを背後から銃撃する。
その銃撃で一気に八体ほどの敵を無力化させることに成功した。
それで二階はほぼ制圧できたが、オレたちの出てきた出口とはまた別の出口から増援がまばらに出て来ていた。
その敵の増援はこれからもっと多くなる。ここからはスピード勝負だ。
「みんなはこのまま二階の他の出口から出て来る敵をその付近で抑えててくれ! オレとリィナは一階にいる彼らを誘導してくる!」
「了解!」
オレは班員にそう指示を出し、班員は了承して、指示通り出口に敵を抑えるための配置につく。
一方オレとリィナは階段付近へと向かった。
「リィナはここで一階と二階どちらの援護もしながら、どちらの階の状況も把握できるようにしててくれ」
「了解、あなたはどうするの?」
「オレは向こうまでたどり着いて彼らを誘導して、またここに戻る」
リィナは一瞬迷う表情を見せたが、すぐに判断してくれた。
「ここは任せて。気をつけて、レアン」
オレは分かったと頷き、二階から一階へと階段の柵に隠れながら急いで降りていった。
階段の最下段まで降りた後、オレはその階段の柵から一階の敵に向かって銃に装備されたグレネードランチャーからグレネードを発射した。
そのグレネードは生存者たちを撃っていた五体の敵ロボットたちを吹き飛ばした。
その攻撃から免れた敵はオレの方を撃ってきたが、オレは撃たれる前に素早く柵に隠れた。
そしてグレネードランチャーにグレネードをリロードしながら「味方だ! あなたたちを助けに来ました!」と言って、助けに来たことも生存者達に伝えた。
オレたちが二階の敵をかなり倒したから、彼らもなんとなく味方が来たことには気づいていたと思うが念のためだ。
オレは敵の銃撃が弱まり、再びグレネードが撃てる隙きを伺った。
その隙の瞬間は先程のオレのグレネードの一撃による敵の数の突発的な減少によってすぐに来た。
今だ!
オレはその瞬間、グレネードをその敵達にお見舞いした。
その一撃で三体ほどの敵を倒せた。大打撃を受けた一階の敵の攻撃がピタリと止んだ。
オレは階段から跳び出して、生存者の方へ全力で走って向かう。
生存者たちのもとまで三分の二くらいの所まで来たときに、一階の入り口の方から来た敵の援軍の二体がオレを撃とうとしてきたため、オレも急いで先に撃とうとしたがそれよりも先に生存者の一人がその二体を倒してくれた。
オレは生存者たちの元へ滑り込み、何とかたどり着くことが出来た。
「無事か、大丈夫か!」
オレを撃とうとしていた敵を倒してくれた生存者の初老の男性が隣によってきてくれた。
彼だけは他の一般人の生存者と違って軍服を着ており、他の兵士の生存者とも違って、彼の来ている軍服の階級章を見て位の高い人だということが分かった。
ほかの生存者の人もオレに「大丈夫か」とか「助けに来てくれてありがとう」と声をかけてくれた。
「大丈夫です、助かりました」とオレも答えながら、当たりをさっと見てここにいる生存者たちの構成を確認した。
兵士の人が三人と銃があり戦える一般人が三人、戦える人は六人。その他の一般人が十人、生存者の合計は十六人だが、その中には子供四人と高齢者も一人いる。
ギリギリだが、これ以上敵の増援が増える前に何とかやるしか無い。
「みなさん時間がない、よく聞いてください。戦っている人はできる限り聞いて」
今でも一階の敵はこちらを攻撃してきており、それを何とか銃を持っている兵士や一般人が応戦して守っていた。
「作戦があります」
オレは此処にいる生存者にここを脱してデルタ区へ向かうための作戦を注意事項も含めて伝えた。
「このままここで戦ってもいずれ全滅します。作戦に協力してください」
この作戦は危険が大きく、生存者たちは迷っていた。
「それしか私たちが生き延びる術はないようだな」
戦いながらも隣で話を良く聞いていてくれた初老の兵士がそう言ってくれた。
「彼の作戦にかけよう」
初老の兵士がみんなにそう促してくれたおかげで、他の人も「やろう」「やるしかない」と意を決しオレの作戦を承諾してくれた。
「怖いよ」
生存者の内の一人の女の子で六歳、八歳くらいの子がお母さんらしき人にしがみついていた。女の子は今にも泣き出しそうな様子だ。
「大丈夫よ、お母さんとお父さんが付いてるわ」
女の子のお母さんは自分の胸に手を当てた後、敵ロボットを銃撃している兵士で女の子のお父さんらしき人を指した。
でもまだ女の子の方は不安げな様子だった。
「ほら、これをあげる。これは私の誕生日にお母さんからもらったお守りなの。」
女の子のお母さんは自分が首から下げていた綺麗な赤いペンダントを外し、娘の首に下げた。
「これもあなたを守ってくれる。だから大丈夫」
お母さんが女の子にそう言うと、まだ不安げな表情をしながらも女の子は泣きはしまいと頷いていた。
そんな彼女たちの様子を初老の兵士も優しく見守っていた。
「彼らにも作戦を伝えてくれますか?」
オレは初老の兵士の人に敵と戦ってくれている人たちにも正確な作戦を伝えほしいと頼んだ。
「了解した。君、名前は?」
「オレはレアンです。あなたはこの基地の司令官ですか?」
「あぁ、自分の基地を守れなかった愚かな司令官さ」
指令官は皮肉混じりに言った。
「だが、守るべき者はまだいる。レアン、必ず作戦を成功させよう」
オレは了解しましたと頷いた。
司令官は戦っている人たちにも正確な作戦を伝えに行ってくれた。
「みんな、聞こえるか」
その間にオレは耳につけてあるマイク付き小型無線で階段付近で戦っているリィナや二階で敵を食い止めてくれている班員にも作戦を伝え、いつでも作戦に対応出来るように準備するよう伝えた。
オレがその作戦を伝え終わったすぐ後、ここで銃を持って戦っている人たちも司令官から作戦の話を聞いて、作戦を理解し承諾してくれたようだった。
オレがリィナ達に作戦を伝えている間、銃を持って戦っている人たちの様子を見た時、彼らも一瞬作戦実行に迷う表情を見せることも合ったが、最後には覚悟を決め了承してくれたようだ。
「みんな。必ず生きて、デルタ基地へ向かうぞ」
司令官がみんなを励ましてくれて、それにみんなもしっかりとした顔つきで頷いて答えている。
「みなさん、味方は撃たないように。オレが合図を出したら注意事項も守りながら作戦通り動いてください」
オレはみんなに注意すべき事を呼びかけた。
「もうすぐその時が来るので、準備をお願いします」
そのオレの言葉にもみんなは恐怖を滲ませながらもしっかりと頷いてくれた。
オレは絶対にここにいる生存者全員を無事にデルタ基地へ連れて帰る。絶対にだ。
オレも覚悟を決めると、無線で班員のみんなに呼びかけた。
「みんな、今から作戦を開始する。いけるか?」
オレは班員のみんなに尋ねた。
「いつでもいける」とか「大丈夫だ」と班員のみんなも頼もしく反応してくれた。
「よし、リィナ始めてくれ」
オレはリィナに作戦開始の指示をした。
「了解」
リィナは作戦を開始した。
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