~未来編~
第4話 絶望の中で
「レアン」
リィナがオレの肩を軽く叩いた。
彼女はミディアムほどの長さの黒髪に、面倒見が良くしっかり者だか優しさもある様な雰囲気をした顔立ちのオレと同い年の幼馴染だ。
「見えて来たよ」
リィナはある方向を見てそう言った。
オレは顔を上げてその方向を見た。
そこには至るところから黒煙が立ち昇っている人類の居住地の一つ、エコー区があった。
オレたち調査班の五人は朝の陽の光が曇り雲に遮られ少ししか届かず、幾度もの敵との争いで荒廃した町中を何とか自分たちの車両で進める道を選び、兵用車両を先頭に、オレとリィナを荷台に乗せた兵用トラックをその後方にし、その計二台の車両を走らせてエコー区に向かっていた。
「私達、これからどうすれば良いのかな」
リィナは苦痛な苦々しい表情でそうつぶやいた。
「最初は七つ合った人類の居住地も今では二つだけ。そしておそらく今日エコー区も失ってしまった。もしエコー区に生き延びている人がいて、私たちとデルタ区へ逃れることができたとしても、今度は私たちのデルタ区が総攻撃を受ける」
直接、もしくは耳につけている小型無線越しに話を聞いていた他の班員達もリィナと同じく苦痛な表情で様子だった。
「私たちにはその攻撃に対抗する手段がない。もうどうすることも出来ないのかな」
オレたちの班は敵の襲撃から逃れたエコー区の人々から敵の総攻撃のことを聞き、調査班として出来る限りのエコー区の調査、人々の救出へと向かっている。
「それはオレにも分からない。でも諦めない限り、この絶望的な状況を打開できる方法を見つけて人類を救える可能性はまだある。博士や父さん達が何か良い方法を見つけてくれるかもしれない」
リィナの言う通り苦しい状況だ。でもまだ希望はあるかもしれない。
「みんな、とりあえず今はエコー区で生き延びて助けを待っているかもしれない人たちを助けに行く。それに集中しよう」
オレはみんなにそう呼びかけた。
「そうね、今は色々考えてもしょうがない。うん、助けにいこう」
リィナに続くように他の班員達も自分にやるべきことを言い聞かせ意を決した。
エコー区に近づいてきた。
オレたちは各自持っている銃や機関銃、擲弾等の装備の点検、確認を済ませた。
そしてエコー区の手前までたどり着くと車両がこれ以上進めなくなったため、オレたち調査班の五人は車両から降りて、駆け足でエコー区に入った。
エコー区にたどり着くとオレたちは区の中を警戒しながら進んだが、やはり戦闘は終わった後なのか銃声や爆発音などの戦闘音はしていなかった。
エコー区もオレ達の本拠地のデルタ区も元々街の外観が綺麗に整っているわけではなかったが、エコー区はデルタ区よりも激しい戦闘の跡が残る無残な姿になっていた。
壊された店や家が立ち並び、地面にはレンガの瓦礫やコンクリートの破片などあらゆる物が飛び散っていた。建物や道路には弾痕や爆発跡、炎上している車の残骸、倒した敵ロボットの残骸があり、そしてここに住んでいた人々や戦った兵士達の遺体もあった。大人、子供、男女関係なく殺されている。遺体の数もエコー区の中にある本部、エコー基地を目指して先へと進むたびに増えていき、至るところから戦闘の後の異様な匂いがした。
オレたちはそんなエコー区を歩き、エコー基地へとたどり着くと、基地の中の捜索と調査、そして生存者を探した。
基地の中もひどいありさまだった。
通路には弾痕や爆発跡があり、こと切れた兵士や住民が倒れている。部屋の中も荒れており、椅子や机などの家具は倒れ、生活用品は散乱していた。 通路や部屋の照明も今にも消えそうな光を発しているか、点滅していた。
ここでも激しい銃撃戦が繰り広げられていたことが痛いぐらい感じられた。
オレも班員たちもやるせない気持ちになっていた。
「!」
その時、一発の銃声がオレ達のいるエコー基地本部のさらに奥の方から鳴った。
さらにそれに呼応するかのように連続で銃声が重なり、オレたちのいる方まで響いてきた。
「行くぞ!」
オレ達は銃声が鳴り響いている方へ全力で走って向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます