第6話

「どうして忘れてたんだろう……。こんな大切なことを……」


 誰かの人生に彩りを与えるもの、それは、サプライズニンジャの技術の高さ……なんかじゃない。

 人が人を思う気持ちだ。

 誰かを驚かせたい、喜ばせたい、幸せにしたい……そう思う純粋な気持ちが、人生を輝かせるんだ。

 それに比べれば、ニンジャの技術なんてどうでもいいことだ。

 自分が今までしてきた失敗なんて、些細なことだ。



 その日のツルノの姿から、自分がこの仕事を目指した最初の情熱のようなものを取り戻した忍。

 彼女はもう、仕事が上手くいかなくても卑屈になることはないだろう。「もう辞めよ」なんて言わないだろう。


 だって……。だって私……分かったから。思い出したから。

 人が人を思いやることの、素晴らしさ。そして、それをお手伝い出来るこの仕事の……やりがいを。


 だから……私はまだ頑張れる。

 まだ、この仕事を続けていいんだ。

 だって……だって、私みたいなサプライズニンジャでも、やれることはあるんだから……。




「そんなわけ、ないでしょ?」

「う……」


 後日。

 見事失敗に終わった任務の報告書を提出した忍を、上忍の睦海ノノが殺意を込めた瞳でにらみつけた。


「確かに私、任務に失敗してちょうだいとは言ったけど……対象者にチラシを見られてサプライズバレするなんて、想像以上の大失敗よ⁉ あっという間にこの業界中に伝わって、いい笑いものになっているわ! この前のバースデーサプライズのことといい……あなたはこの数日で、どれだけこの会社の信用を落とすつもりなの⁉」

「そ、それは……」

「どうやらあなたは、小学校にんたまからやり直したほうがよさそうね? 必要な手続きは進めておくから、来週から子どもたちと一緒に勉強し直してらっしゃい」

「ちょ、ちょっと⁉ いくらなんでもそれはヒドいですよっ!」

「ヒドくないわ! 懲戒解雇ヌケニンさせないだけ、ありがたいと思いなさい!」

「そ、そんなあ……う、嘘です、よね? ちょっと怖がらせて、お説教してるだけですよね⁉ も、もおーう、そんなイケズなこと言ったら……ニンニン、ですよー?」

「……」

「ちょ、ちょっとーっ⁉ なんとか言って下さいよーっ! ノノさんっ! ノノさんってばーっ!」


 そんなわけで。


 落ちこぼれサプライズニンジャの忍の苦悩の日々は、やっぱりこれからも続くのだった。

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サプライズ⁉ 忍ちゃん 紙月三角 @kamitsuki_san

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