第18話 なんか強そうなおじさんと、やばそうな女。
一方その頃。『ヴィーナス』、『ブラックジャックス』が停泊する宇宙要塞『トリリオン』の司令部では二人の人物が話し合っていた。
この要塞の最高司令官、ライナス・ステルガード。
彼は50代後半のややふくよかな白髪の男性だが、逞しい体つきで無骨な男性美を感じ、非常に風格がある。
そして付き添う形で佇んでいる女性。参謀長、ジェシカ・ハーベンフォース。
ジェシカは30代後半の魅力的な女性だ。身長は高く、体型はスリムながらもしなやかな曲線を描いている。彼女の顔立ちは整っていて、大きな緑の目が印象的だ。 髪は黒く艶やかで、後ろでまとめている。
ライナスはニヤリと笑うと口を開く。
「彼ら二人は鬼ヶ島流の
「流石は鬼ヶ島。そして銀河連邦の離反者『Ilysium』……かつての力以上です。正直、得体が知れませんね」
その言葉とは裏腹にジェシカは目を輝かせる。彼女は戦いが好きだ。特に強い者との勝負を好んでいる。だからこそこの要塞に彼女がいると言っても過言では無いのだ。
すると彼女の中で次第に興奮が高まり始めたのか、体が小刻みに震える。そして彼女は口を開いた。
「くっ……ふぅ……、素晴らしいですね!是非手合わせしたいものです!」
その目は獲物を狙う獣の様だった。
しかしライナスはそんな彼女の発言を咎めるように睨みつけた。すると彼女はハッと我に返り、恥ずかしそうに俯くと謝罪する。
だが、彼はそれを気にすることなく言葉を続けた。
「まぁいい。それより例の件についてはどうなっている?」
「はい、既に準備は整っています」
彼女の答えを聞き満足そうに頷く彼。そしてゆっくりと立ち上がると口を開いた。
「では始めようか」
その一言で場の空気が一気に引き締まるのを感じ、二人は同時に敬礼をしたのだった……。
―――――
ガイドに連れられ要塞の共住区間に戻った二人。
無事に戦闘服を解除出来た強慈郎はイリシウムに淹れてもらったお茶を飲みながらくつろいでいた。
「ふぅ……」
一息つくと湯呑を置き、立ち上がる。そしてそのまま廊下に出ると玄関に向かった。
「ちょっと散歩してくる」
そう言って出て行こうとする彼をイリシウムが呼び止める。
彼女は心配そうな表情を浮かべていた。
「お一人で大丈夫ですか?私もお供します」
しかし、強慈郎はそれを断った。
「大丈夫だ。すぐ帰ってくるから待ってろ」
彼はそう告げると、そのまま出て行ってしまった。
残されたイリシウムは不満げに頬を膨らませるがすぐに気を取り直す。
「……仕方がありませんね……帰って来るまで家事でもこなしましょうか……」
彼女は独り言を呟くと家の中に入っていったのだった……。
暫くして……
「はぁ」
強慈郎は息を吐きながら空を見上げていた。要塞内部モニターによって作り出された夜空には月が煌々と輝いている。その美しさに思わず見惚れてしまった。すると背後から突然声をかけられた。
「強慈郎」
振り向くとそこには、白髪の老人が立っていた。彼は微笑みながら口を開く。
「こんな所まで散歩か?」
「……あんた誰だ?」
彼は警戒気味に問いかける。するとライナスはゆっくりとした足取りで近寄ってきた。強慈郎は身構えるが、彼の後ろから出てきた人物によってそれは無駄に終わった。
「やっと見つけました!ライナス司令!」
「急に居なくなるんですから困りましたわ」
彼の後ろに居たのは二人の男女。一人は黒髪にサングラスを掛けた筋肉質な女性で、もう一人は銀色の髪をした背の高い男性だ。二人とも20代後半だろう。
強慈郎は訝しげな顔で彼等を見つめると口を開いた。
「お前ら誰だ?」
するとライナスと呼ばれた男はゆっくりと答えた。
「そちらの方はこの宇宙要塞『トリリオン』の最高司令官、ライナス・ステルガード様です。私は参謀長を務めております、ジェシカ・ハーベンフォースと申します」
すると、もう一人の銀髪男が名乗り出た。
「そして私が参謀長、ジェシカの夫。ついでにライナス総帥の右腕、副司令を務めるゾルザルだ」
「ゾルザル副司令官。ついでとはなんだね」
「これは失敬。がはは」
強慈郎はその様子を見て眉を顰めた。そして呆れたように溜息を吐く。
「はぁ……また変な奴らが……」
彼はうんざりした様子で呟くと、ライナスに向き直る。
すると彼はニヤリと笑い口を開いた。
「久しぶりだな『
その言葉に強慈郎は驚きの表情を見せる。
「なんのことだ?あいつは今頃……」
「ふん。どうせ聞いているのだろう。出てこい」
彼は強慈郎の言葉を遮るように言い放つ。
『後でもいいですか?』
すると、どこからともなく声が聞こえてきた。4人以外には誰も居ないはずの場所でだ。そしてその声は聞き覚えがあるものだった。
ライナスはその声の主に対し冷たい口調で話しかける。
「どこにいる?早く出てこい」
『急かさないでくださいよ』
その言葉と共に何もない空間からイリシウムが現れる。彼女は不満げに頬を膨らませると口を開く。
「全く……いきなり呼び出すなんてどうかと思いますけど」
普段の黒い着物姿とは違い白い着物に赤い袴を合わせたような衣装で下駄を履いている。その様子を見て、呆れたように強慈郎が口を開いた。
「……お前いつも俺の事監視してんのか?あとなんだその恰好」
「今日はたまたまですよ!どう?似合います?可愛いですよね!」
「自分で言うな」
「えー」
彼女は不満そうに頬を膨らませた。しかしすぐに気を取り直してライナスに向き直る。そして深々と頭を下げた。
「お久しぶりですね、『鬼殺し』。46年ぶりですか?」
すると彼はニヤリと笑い口を開いた。
「久しぶりだな『Ilysium』。以前は煮え湯を飲まされたものだ。……あの時とは随分と様子が変わったようだが?」
「強慈郎のおかげですよ。今は仲間同士仲良くしましょう」
その言葉に強慈郎は顔をしかめる。
「俺の趣味でその格好させてるみたいに聞こえるだろ」
「ふふ。そうですね」
「そうですねじゃねぇよ」
イリシウムは笑顔を浮かべた。しかし、すぐに真剣な表情に戻る。そして話を切り出した。
「ところで、私達に何かご用でしょうか?」
「あぁ、実はな……お前が我が要塞に来たと聞いてな」
ライナスはそう言ってニヤリと笑うと口を開く。
「少し相手をしてもらおうと思って来ただけだ」
その言葉を聞いた瞬間、強慈郎の表情が険しくなる。そして拳を握りしめた。だが、彼が何か言う前にイリシウムが口を開いた。
「わかりました。でも私今すっごく機嫌悪いから手加減できないかもしれませんよ?」
彼女は笑顔のまま答えるとゆっくりとした足取りで近づいていくのだった。
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