第10話 日ノ本の国は聖地であった。じゃぱにーずさぶかるちゃー。




「だぁぁっぁぁッめんんんんんどくせぇぇぇッッッ」



一人抜け出し、外に出た強慈郎は庭に飛び出し、空に向かって怒号を挙げていた。辺りが静まり返り、夜の薄暗さも相まってその声はよく響いた。



「ごっちゃごちゃごちゃと永遠に意味の分からん言葉ばっか並べやがってぇぇぇぇッッッ」



そういい叫ぶと地面をぶん殴る。数メートルのクレーターが出来、今にも血管が切れそうな程、青筋を立てまくしたてる。



「ババアの話は毎度毎度長すぎる!俺がここを出ていく前も!今も!嫌になるほど変わらんな!!!しかも、いッッッちミリも理解が出来んわボケがッッッ!」



肩で息をし、地面に向かって咆哮をする。その衝撃は地面に亀裂が走る程だった。


呼吸を整え、冷静に、考え直す。



「……地球を壊そうとするやつがいる。なら、そいつを倒せばいいだけだ。……それだけだ」



空を見上げ、星を睨む。一つだけ、必要なことを考えていた。



「俺は……宇宙では、息が出来ん。……あのデカブツに乗れば俺も戦える」



腕を組み、その場に胡坐を組んで座り込む。



「ババアの力は死んでも借りん。……となると、イリーか」


「呼びましたか、強慈郎」


「……この前の意趣返しのつもりか?」



声がした方に振り替えるとそこにはイリシウムの姿があった。


月明かりに反射した黒髪が、風になびくその姿はどこか儚げで美しかった。



「あんまり驚いてくれないんですね。がっかりです」



残念のそうな言葉を吐くが、どこか嬉しそうにさえ見える様子を見て強慈郎は不機嫌そうに返す。



「お前のことだ。どうせ知ってんだろ」


「さて?なんのことでしょう」


「そういうのに付き合う気力はない。勘弁してくれ」



心底嫌そうな顔を見たイリシウムは悪戯っぽく微笑み、謝罪をする。



「ふふ、すいません。散々振り回されたものですから、少しやり返してしまいました」


「あー、わかったわかった。……で?どうなんだ」


「『カラーズ』の戦艦、『C-Xシクス』の修理はまもなく完了します。その際にパーツを幾つか拝借し、各地に散ったパーツも呼び寄せ、本来の姿を取り戻すことに成功しました」



じゃーんっと陽気に言いながらホログラムを展開する。そこには黒の『C-X』が映し出されていた。重厚感があり、頭部には一本の金色に輝く角。胴体は鎧武者の様な立派な装甲に包まれていた。所々に金色のフレームが見え隠れしており、腕と足には紅蓮の線が走っていた。


それを無言で見つめる強慈郎。


「……」


「格好良すぎて声も出ませんか!」


「お前、来た時この星のデータを取るとかなんとか言ってたけどよ」


「はい?」


「どっから引っ張ってきた」


「近くにあった城の様なものと、展覧会のような会場と、あとは『C-X』に似た機体が出てくる映像を大きなモニターで映像を流してる会場に、それと……」



そこまで聞くと頭を抱えた。


未だに巡ったところを報告してくるイリシウムの声が聞こえてくるが、強慈郎にはそれに反応する余力がなかった。



(こんの馬鹿ロボット……まるで参考にならんとこに情報収集いってやがる……こいつの性格がおかしくなったのもその影響か……)


「いやぁ、地球は素晴らしいですね。強慈郎!美しいこの星は是が非でも守らねばなりませんね!」



とても明るい笑顔でそう語り、ほくほく顔で情報収集かんこうした戦利品おみやげを掲げている。その中には観光地の菓子折りや木刀、はたやアニメグッズ、合体ロボットフィギュア。


この目の前の超高性能自律型AIぽんこつの話題には触れまいと、強慈郎はイリシウムに確認を取る。



「もういい。……おにかく俺は宇宙そられそうか?」



サムズアップをしたイリシウムが笑顔で答える。



「もちろんです!強慈郎専用機として頑張ります!」


「……そうか、助かるよ。ほんっと助かる」


「そこまで言われると照れますね」



目の前のお調子者の言葉に拳をきつく握りしめ、こいつを殺したら戦うことも出来ないと、必死に自分を言い聞かせながらなんとか笑顔を作る。



くそ馬鹿がありがとな


「どういたしまして!」





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