第7話 一人鍋。観客多数。





『鬼ヶ島信玄』存在を10年周期で銀河連邦本部に報告。

監視時、一定期間停留すること禁ず。

位置を特定・捕縛される可能性有。鹵獲された場合即時自決、機体は爆破せよ。

『鬼ヶ島信玄』の血族、以降『鬼ヶ島』と記述。

『鬼ヶ島』を発見時、迅速に銀河連邦本部報告。

早々に現地を離脱し、『鬼ヶ島』と接触は禁ず。

上記の命令違反及び禁止事項違反は銀河連邦反逆共犯者即時指名手配とす。

『鬼ヶ島』が発見された場合、宇宙規律統制機構並びに銀河連邦特殊任務遂行部隊に特級任務を発令す。

任務遂行が困難な場合、第23銀河Solソル-3地球抹消を許可する。




「つまり、ジジイは要注意人物で、他の奴に対してもなんか色々ごちゃごちゃ言ってる訳だ。で、次にもなんか来て最悪地球が消し飛ぶと……くそが」


 そう言って強慈郎は地面に放り投げた端末を指す。そこには言葉通りの内容が記されていた。三人はその内容を見て青ざめている。



「ってか俺の名前分かった時にさっさと言っておけよ」


「まあそうなんですけどね……」



 イリシウムがやれやれといった様子で返答するのを見て、強慈郎は拳を握りしめる。その様子を見て慌てたように青雲斎が喋り始めた。



「申し訳ありませんでした。私が伝えていなかった為にこんなことに……」


「別に大丈夫ですよ。貴方達が来なかったら地球が抹消される知りませんでしたから、助かりました」



 そう言って涼しげな顔をしているイリシウムを強慈郎は睨みつける。



(こいつ……マジでいつかぶっ飛ばしてやる)



 そんなことを考えていると青鬼が口を開く。



「それで私達はどうなるのでしょうか……?」



 その言葉に強慈郎は少し考え込む素振りを見せた後、口を開いた。



「どうもこうもねぇよ。お前らは違反者って扱いになる訳だし、勝手にしろ」


「え?」



 その言葉に三人は驚きの声を上げる。強慈郎は気にせず続ける。



「そもそも俺は修行相手に期待してたってのに、次から次へごちゃごちゃと……めんどくせぇな」



 そう言肩をすくめると、ミザリィが口を開いた。



「私達の船と機体はボロボロだし……こんな状態じゃ……」


「……あー、イリー、修理出来るか」



 強慈郎が面倒臭そうに聞くが、キラキラした顔でイリシウムは説明を始めた。



「貴方達の機体と船なら私が直せます。それを修理したら『鬼ヶ島』側の戦力にでもなってもらいましょうか」



 その言葉に三人は顔を見合わせる。



「『鬼ヶ島』側って……そんなことしたら……」



 ミザリィが不安げな表情で尋ねる。しかし、イリシウムは不気味な笑顔で一言一句、異様な圧を掛けながら答えた。



「どちらに付くにせよ。銀河連邦は良くて指名手配、悪くて死刑。地球では惨敗、帰る方法もない。貴方達に他の道はありませんよ」



 その言葉に三人は更に不安そうな顔になる。



「でも……」


「この星には闘いに勝つのは生き残った人間っていう諺がある。取りあえず大人しく聞いとけ」



 うだつが上がらない様子に痺れを切らし、強慈郎が言い放つ。熊骨を噛み砕き、爪楊枝の様に扱いながら言葉を続けた。



「別に取って食う訳じゃねぇのに、そんなビビんな」



 説得力皆無の暴君に、震え上がる赤と黄色。代わりに青鬼は何か語りかけるが……



「しかし……」


「あ?」



 強慈郎の凄みに押されるように青雲斎は口を噤む。それを見てミザリィと金髪女は不安げな表情をしている。そんな様子を尻目にイリシウムが口を開く。



「とりあえず、私達は食事の続きでもしましょう」


「お前、本当に自由だな……」



 そんな会話をしながら食事は進んでいく。といっても、強慈郎が一人で熊鍋を食べ、『カラーズ』達は次は自分の番なんじゃないかと気が気ではなかった。


 熊鍋を丸々平らげ、一息ついた頃を見計らいイリシウムが口を開いた。



「それで私は修理に取り掛かりますが、強慈郎はこれからどうしますか?」



 その言葉にミザリィとキャロルは強慈郎を見る。青雲斎は何か言いたげな表情をしているが口を噤んでいる。



「とりあえずジジイの居場所、その心当たりがある所に行く」



 その答えに三人は驚きの声を上げる。しかし、強慈郎は気にも留めずに続ける。



「お前らは……好きにしろ。今から行って、居場所を探ってくる」


「え?それってどういう……」



 ミザリィの言葉に答えることなく立ち上がると、山に向かい出したので慌てて追いかける。呑気なロボットを一人残して。



「いってらっしゃ〜い」

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