第2話 会話中に急に始まる新作ゲームの話、でも意外と気になってやってみるとはまっちゃうやつあるよね。


ヌルッと乖離した肉体を眺めるということはなく、仮想空間にも入ることもなく状況は数日前に遡ることになる。


それはいつも通りの会話だったはずだ。


アニマは普段から狩りげーを好んでいて、よくフレンドたちとVR狩りゲーをしていた。


そんな中、狩りゲーフレンドの一人、カグヤ。本名、神楽唯から電報が入った。


「最強にヤバイ、前人未到のVRMMOが今週、発売されるんだって!!!!一緒にやろうよ、アニマ!!!!」


という、明らかにヤバ気な誘いに乗るか乗らないかといったら、アニマは簡単には乗らないたちではあったため、少しの理性でブレーキを踏み、その誘いを躱していたのだが...


「なぁなぁ、アニマ。一緒にEGOやろうぜ。俺、ファイターやるから。アニマはいつも通りサポーター系だよな。」


なぜだろう、この馬鹿は。なぜもう、俺がEGOを購入していてプレイする想定をしているのだろうか。まったくもって意味不明だが、彼はやりたいゲームは即決で買い、プレイを始めるほどの生粋のゲーマ―だ。


こうなった彼を止めることができるやつを俺は知らない。というか止め方を教えてくれ。


結局、俺は彼、ユウマの誘いを断れずに、EGOを購入してしまうことになったのだ。


「はぁ...どうしてこんなことになったのだろう。それもこれも御影雄馬というやつが全ての元凶なのだが、もう購入して専用のVR機器もセッティングしてしまったし、俺にはこのEGOを存分に遊び日尽くすことしかできないな。」


サーバーに入れるのは、今週の日曜日とのことで、EGO内に入るのにはあと1日猶予があり、奇しくもユウマやカグヤは夏休みに突入するところだった。


「なんで夏休みに発売するかなぁ。これじゃ絶対、俺のサポート過労死が確定してしまう。」


そんなことを思うほどに今年の夏休みを恨んだことはなかった。


ふと思い出した、彼女もEGOに誘えばいいのではないだろうかという、一筋の妙案が。


彼女というのも、俺の数少ないフレンドのリリィという滅茶苦茶コミュ障というところ以外は完璧美少女のことである。


基本的にボイスチャットでしゃべることはなく、爆速テキストチャットでレシートを変わりに返してくれるリリィであるが、彼女のとの出会いはある日のコンビニ帰りのことであった。


リリィは親との旅行中にはぐれてしまったらしく、道も分からずに迷子になっていたらしい。


なんだかおろおろしている少女を偶然にも立ち会わせてしまった俺が仕方なく交番まで送り届け、今の交流がある。


交番で親御さんを待ってる時の会話は正直地獄かと思った。


だって、マジで何を言っているのか聞こえないくらいの小声でそれでいて早口なのが全てを混沌にしていた。


あの場は親御さんという救世主が現れるまで、本当に終わっていたんだよ。


そして、ついに現れたと思った親御さんは何と交番の前に超高級車でやってきた。


それを見た俺とお巡りさんは絶句し、ひきつったお巡りさんの笑顔が今でも思い出せるくらい印象に残っている。


そりゃそうだろう、迷子の子があり得ないくらい有名な企業の社長の娘だったのだから。


「リリィ、あれほど離れるなといったのに何で離れたんだい。」


「だって、退屈だったから...」


彼女が迷子になった理由は単純に観光がつまらなかったらしい。


確かに退屈は人を殺す。


そんな状況であれば、俺もどこかに暇つぶしできる場所がないかとほかの場所をみにいくかもしれない。


それでも、彼女はそれをするべきではなかった。


というか自分が重度の方向音痴をということを自覚できていなかったのが敗因だろうな。


そうして、親御さんに連れられてリリィとの関係はそれっきりだと思っていたが...


どうやらそれは違ったらしい。


彼女はいつの間にか俺のリコードのフレンドになっていて、なぜか狩りゲーを一緒にする中になっていたというのがリリィとの出会いの全てだった。


なぜリコードのフレンドになっていたのかは今わかっている、彼女に一度スマホを貸してほしいと言われたときだろう。


とてつもない勢いで呪詛を吐いたと思ったら、急にてかてかとし出したのを思い出した。


その顔は一仕事を終えた、プログラマーのようであった。


彼女はコミュニケーションが苦手な分、そういった強制的に自分の領域に引き込むのが得意なんだろうなという自己解釈で一応、俺は納得しておくことにした。


本能がそうしなければ、危ないとシグナルを出していたんだ。


きっと間違いない、いつ以来だろうなそんなことを思ったのは。


ああ、確か......いや思い出さなくてもいいな。


「ということでリリィもどうせEGOを買っているだろうし、この地獄のパーティに入ってもらうとするか。」


「いやどちらかというと、リリィが入ることで地獄が完成するのだろうか。まぁいいだろうそこらへんは。」


リリィにEGOをいつもの4人で一緒にやろうというテキストを送ると。


爆速で返信が返ってきた。


短文で一言。


「やります!!!!!!!!」


熱意が凄い。


こうして、俺はこの夏にEGOを始めることとなったのだ。

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