第11話 幸せな日々

アル様が魔法の練習を始めてから時は流れて、先日5歳の誕生日を先日迎えました。


因みに、私はは8歳になりました。



魔法の練習を始めた当初、まずは生活魔法からと教えられて、

アル様が無詠唱で生活魔法を使った所、エレナ様にすっごく怒られてました。


何でも、前にも隠れて魔法を使った時に失敗して、怪我をしたそうです。


私の知らない所でそんな事が在った事を知り、

アル様でも失敗するんだと言う事実と、魔法の危険性を認識し、

気を引き締めようと思いました。


年上の私がしっかりして、アル様をお守りしないとっ!


(あと、怒られて半べそになってるアル様が可愛い。)


――――


そう言えば最近気づいたのですが、

アル様が偶に、小声でステータスオープンと呟いていたのを見て、

私も試しに呟いてみた所、ステータスが見れました。


――――

名前:クリスティア (8歳)


種族:人族 (女)


★スキル


技能スキル

剣術Lv1 体術Lv2 料理Lv3 


魔法スキル

火魔法Lv1  闇魔法Lv2 


特殊スキル

鑑定Lv1 気配察知Lv1


特殊補助スキル

器用さUP 体力UP 筋力UP 魔力操作 直感


ステータス隠蔽(隠蔽済み)

異世界言語理解(隠蔽済み)


固有スキル


闇神の祝福(隠蔽済み)


★称号

星神の加護(隠蔽済み) 闇神の加護(隠蔽済み)


―――――


闇神の祝福、加護、星神の加護。

それぞれに鑑定を掛けて見ましたが、

祝福を得る、加護を得るとしか、判りませんでした。


元から隠蔽されていたので、

誰にも見られている心配はないと思っていいでしょう。


(今考えても答えは出なさそう…なら、

存在を忘れないようにしつつ、今後も様子を見るしかない…か…。)



―――――



私とアル様は、午前中に魔力操作を練習して、

昼食の後、母のマリーと3人で、1年前に庭に設置された訓練場に出ていた。



「最初は走り込みと柔軟体操をメインで始めて行きます。

クリスは、今までもやってきましたが、アル様は初めてです。


まだ、動ける体にはなっていません。

無理をすると、直ぐに怪我をするので、少しづつ身体を創り上げていくのです。


クリスは、アル様のフォローをするように、

復習の意味も兼ねて、クリスも一緒にやっていきますよ。」


「はい」 「判りました」


アルとクリスの返事が重なる。


(アル様は私が守りますっ!)


マリーは気持ちを切り替えさせるように、パンパンと手を叩きながら続けて言う。


「では、柔軟体操から始めましょう。

最初は体の動きを確認しながら、丁寧にゆっくりと行いましょう。


お互いを手伝って、相手を確認しながら、

ゆっくりと身体の筋を伸ばすようにしてください。」


お母さんの言葉を聞き、

丁寧に身体の各所をゆっくりと動かしながらアル様の様子を見る。


屈伸運動のあと前屈をしようとして自分の足の爪先に手を伸ばして…、

届かずにフンフン言ってるアル様が凄く可愛い。


手が届かなくて悔しいのか膝を曲げて爪先を触るアル様。


(アル様…、それはズルです、イケません。)


「アル様、膝を曲げてはいけません。」


「ふぎゃっ!?」


そう思って注意しようとしたら、お母さんに膝を抑えられ伸ばされていた。


(悲鳴を上げてるアル様、ちょー可愛い!)


その後もアル様を眺めつつ柔軟をして1時間ほど念入りに行うと、

アル様は息を乱していた。


「はぁ…はぁ…」


(はぁ…はぁ…、息を荒げてるアル様を見て……、おっと、イケない、いけない。)


「さて、これから屋敷の周りを三周走ります。」


しっかり柔軟出来た様子を確認したお母さんが、

流れと注意点を説明してゆっくりと走り出す。


その後を追うように、アル様も走り始める、

その後ろを私が追従して走ります。


「アル様、大丈夫ですか?無理はなさらないでください。」


「はぁ…、だい…、じょう…、ぶ…、クリ…ス…、ハァ…ハァ…」


「判りました。何かあっても私がお支えします。」


(どう見ても大丈夫じゃないですけど、頑張るアル様ステキッ!)


ゆっくりとしたペースで走るのだが、

まだ運動に慣れていない体には、かなりの負荷が掛かる。

アル様が息も絶え絶えになりつつも頑張る姿にキュンキュンしつつ、なんとか走り終えると、お母さんから終了の声が掛かった。


「明日からは昼食後、二人で柔軟から始めるようにしてください。


様子を見て少しずつメニューを増やしていきますが、

しばらくは柔軟と走り込みを続けますので、頑張りましょう。


では、本日の訓練はここ迄です。お風呂に入って汗を流してください。」


汗一つ掻いていないお母さんは、

私に視線でアル様のお風呂を手伝う様に指示すると、

仕事に戻る為に、くるりと背を向けてスタスタと屋敷に入って行った。


「アル君、一緒にお風呂にいきましょう。」


(ご褒美タイムですっ!)


アル様をお風呂に連れて行き、服を脱がせて私も服を脱ぐと、

御身体を隅々まで洗い上げます。


お風呂を出て着替えを手伝い、アル様の部屋に戻ると、

アル様は倒れ込む様にベッドに横になる。


アル様をベットの上でひっくり返し、姿勢を正して、

軽くマッサージをしている間にアル様はお休みになられたので、

こっそりほっぺにキスをして、私はメイド見習いとしての仕事に戻って行った。


(ご馳走様でしたっ!)



――――



翌日も同じメニューを熟し、

2週間程経った頃には10周(約1km)になっていました。


短い期間の様に思いますが、アル様も問題なく走れる様になってきました。


マリーお母さんの匙加減が絶妙過ぎて舌を巻いてしまいます。


その走り込みが終わり、少し息を整えた後、お母さんが言う。


「今日は、お互いに、押し合いをして貰います。

お互いの腕が届く程度の距離で向かい合わせに立ちます。

足は地面から離してはいけません。

その状態で相手を押して、相手の足を動かした方が勝ちです。」


説明を聞くと、小学生が良くやりそうな遊びの様な内容だった。


お母さんが更に説明を続けた後、アル様と私は向かい合わせに立つ。


(あ、アル様の真剣なお顔…、可愛いっ!)


そしてお母さんが、”始め”っと言った瞬間にさっと手を伸ばし、

アル様の胸を軽く押すと、よろめいたアル様は足が動いてしまいます。


(こうやって胸を押すと負けん気の強いアル様は、

同じ様に私の胸を狙ってくるはず…。)


私は狙い通りに事が進み、思わず顔がニヤけてしまう。


そんなやり取りを見ていたお母さんが、クスクスと笑いながら言う。


「二人とも良い動きですね、ではもう一度やってみましょう。」



2回目、 ”始め”の声と同時に、私を押そうとアル様が手を伸ばす。


(あっ♡ きたっ! アル様に胸を触られそうっ!触られたいっ!……でもっ!)


私は胸に向って伸ばされたアル様の手を見て興奮を抑えつつ、

足を動かさない様に上半身を後ろに逸らしてアル様の手を躱した。


空を切ったアル様の手は、そのまま私に抱き着く様に上体が前に出て、

転ばない様に、足も一歩動かしてしまった所で、アル様を抱きしめて受け止める。


(キャーッ!!アル様の顔が私の胸に!! スキッ!)


目論み通りに胸にダイブしていた顔を抱きしめた後、

手を緩めると顔を上げたアル様と目が合う。


思わず顔がにやけてしまうとアル様に眼を逸らされた。


(ハッ!? イケない、いけない、平常心、平常心。)


「はい、アル様の足が動いたので負けですね。」


お母さんはそう言いながら、アル様の頭を撫でて続ける。


「1回目は、アル様は完全に油断しておられました。その隙を突かれましたね。


2回目は、アル様は、押すことに集中しておられました、

集中し過ぎてたと言いましょうか。


おそらくクリスは、それを予想して、どう避けるかを考えたのだと思います。」


そう口にするお母さんの予想に乗っかり私は頷いた。

そしてお母さんが続けて言う。


「この押し合いは、相手の目線、表情、身体の動き、そういった情報を元に、

どのように攻め、又は、どのように躱すか、或いは守るか。

そういった読み合いをする勝負です。


次からは、相手の出した手を、払いのけるのも許可しますので、

更に読み合いが必要になってきます。」


お母さんは自分の右手を左手でパシッっと払いながら説明する。


そうして、偶に触って触られての押し合いを暫く続けた後、

お母さんがパンパンと手を叩き口を開く。


「しばらくは、このメニューも追加して毎日やりましょう。

では本日はここ迄です。」


お母さんはそう言うと、スタスタと屋敷に戻って行き、

アル様も汗を流すために屋敷に入り、私も続いた。


(はぁ~♡ 幸せ…。)



――――



押し合いを始めてから2週間程経った頃、

いつもの流れで訓練をしようとすると、

お母さんがルール変更を告げる。


「それでは本日からルールを変えます。」


そう言ってマリーは直径4m程の円を地面に描き始めた。


「この円の中に2人で入り、自分が出ない様にして、相手を押し出してください。

地面に手を着いても良いですが、転ぶと負けになりますので注意してください。

円から出なければ、自由に動いて構いません。

足を使って転ばせても良いです。」


理解したか確認する様に、マリーはクリスとアルの顔を見て続ける。


「では、まずは試しにやってみましょう。」


そう言うと、お母さんは円の外に立ち、私達は中に入る。


お互い向かい合って立つと、”始め”の合図と共に、

私は右手を伸ばすと手で弾かれたと思った時、アル様はしゃがみ、地面についた手を軸に足払いを繰り出してくる。


「貰ったっ!」


「甘いわよっ ふっ!」


アル様の動きを見て、右足を後ろに下げて躱し、上から抑えつける様に体重を掛けると、

アル様はバランスを崩し倒れ込み、アル様に覆い被さる体勢になる。


(やだっ!? このまま押し倒してしまいたいっ!)


「はい、アル様の負けですね。」


(ハッ!? イケない、いけない。)


お母さんの声に我に返った私はニヤける顔を隠す様に笑い、アル様に手を伸ばし立ち上がらせる。


「では、もう一度、最初からどうぞ。」


(落ち着きなさい…クリス、平常心、平常心…。)


その後も訓練を続け、終了すると

土塗れのアル様を連れ添いお風呂に向かう。


(さぁ、ご褒美の時間ですっ♪)



―――――




それからも毎日メニューをこなし、1か月ほど経ったある日、

エレナ様がお母さんと一緒に、昼食後の訓練にやってきた。

そしてエレナ様が説明を始める。


「今日は、身体強化を教えるわ。

そしてこれからの訓練は、身体強化を併用しながらやる事。良いわね?」


「はい、奥様。」


お母さんがそう返事をしている時、横目でアル様を見ると首を傾げていた。



(首を傾げているアル様…、レアでポイントが高いわっ!)


そんな様子にエレナ様も気付いた様で説明をすると実演が始まる。


「まずは、私が手本を見せるから、良く見ておきなさい。

『我が身に纏いて顕現せよ。フィジカルエンチャント』。」


詠唱が終わるとエレナ様は説明を続ける。


「魔力を体に纏うイメージで、全身に行き渡らせるのよ。

慣れないうちは詠唱をしなさいね。そして…、それを維持したまま…。」


そう言葉を切り、走り始めたエレナ様は、徐々にスピードを上げ、

そのままジャンプして、前方宙返りで一回転して着地した。


エレナ様は纏っていた魔力を霧散させると同時に、小さく息を吐く。


「ふぅ…。」


「「おぉ~」」


アル様と私は、声を揃え、拍手をする。


その後注意事項などの説明を受けた後、組手の実演をして貰えるようで、

エレナ様とお母さんが円の中に入る。


「貴方達がやってた訓練を、身体強化を発動してやるとこんな感じよ。」


そう言って、エレナとマリーは押し合いを始めた。


(お母さんは身体強化していないとは言え、

後衛のはずのエレナ様がお母さんと互角になってる…。


身体強化は後衛でも必須技能かもしれないわね…。)


「はい…、奥様の勝ちです…。」


黙々と観察して考察していると、勝負がついた様で、

その声に、2人を見ると、お母さんの足が円の外に押し出されていた。


その後、身体強化の必要性などを教えてもらうと

お母さんがパンッと手を叩き、切り替えを促す。


「それでは、柔軟をした後に、身体強化を使用しましょう。

使用する感覚を掴んだら、そのまま走り込みです。」


アル様に教えて貰って以降、私も魔力操作は毎日やっていたので、

アル様は当然ながら、私でも身体強化は直ぐに出来た。


「怪我には気を付けるのよ?」


身体強化を見届けたエレナ様はそう言い残して屋敷に戻られた。


その後身体強化を発動したまま走り込みを始めるけれど、

その違いを直ぐに実感する事になる。


(走る速度は倍以上…、対して疲労感は…倍どころじゃないわね…。)


チラリと横眼でアル様の様子を伺うと、

身体強化の扱いを既に把握したのか、私よりは疲労度は少ないように見えた。


(魔法のセンスが無い私は、努力を重ねるのみね…。)


―――――


「はい! そこまでです。」


お母さんの声に、二人共へたり込んでしまう。


「魔力の消費が激しいので、無理をしないようにしてください。」


そう言ってお母さんはスタスタと屋敷に戻っていく。


「はぁ…、流石のクリスも…、はぁ…この訓練は…きつかったか…。」


「それは…そうよ…、 ふぅ…でも…、充実してきてる気がするわね。」


お互いに互いを見て笑うと、二人は体を引きずるように、屋敷に戻って行った。

共に入浴して、ベッドに倒れ込んだアル様を軽くマッサージした後、

自室に戻り、そのままベッドに倒れ込む。


「こんなに疲れてたら…、アル様にセクハラする余裕が無いわね…。

………、もっと鍛えないと……。」


(あれ…?私…、なんでこんな…に…、……したいん…だ………)


自分の呟きに疑問を持つが、疲れから来る睡魔に負けそのまま眠りに就く。



――――



―――半年後―――。


それからも身体強化を使用した状態で訓練を続け、

なんとか消化出来る様になってきていた。


少し前から、押し合いを組手に変更して訓練を続けて、

大体は私が勝ち越しているけれど、

煩悩から生じる隙を突かれて負けることも、 ままあったりする……。


(組手だとあんまりセクハラする隙がないのよね……。)


そして今日から、木剣を使った訓練をするようだ。


「今日から、木剣を使用しての訓練をします。

走り込みも、木剣を持ったまま行いますのでそのつもりで。

木剣とは言え、武器を使用しての訓練になりますので、気を引き締めてください。」


お母さんの言葉に私は木剣を手にして軽く素振りをしてみると、

アル様も、私を見よう見真似でこちらをチラチラ確認しながら振り始める。


(………、なにこれアル様可愛いっ!?。)


そんな事を思っていると、お母さんがアル様の背後に回り手を添える。


「もっと腋を締めて両手で持ち、一振り一振りを、丁寧にやりましょう。」


そう言ってアル様の身体を矯正しながらゆっくりと動かして行く様子を見ると、

お母さんの巨乳がアル様の後頭部に押し付けられて形を変え、

アル様はそれを意識しているようだった。


それを目撃した私の心は一瞬のうちに凪ぐ。


(………、アル様……、アル様も大きいのが良いの!?そうなの!?)


そして沸々と湧き上がる感情の奔流に任せて、振るった剣が大きく乱れてしまう。



「……、アル様? 集中出来て居ませんね?

もう一度ゆっくりと動かして下さい。

クリス、貴方も剣の動きが乱れてますよ。」


お母さんの指摘に慌てて、素振りに集中しなおす。



―――――



そんな日々が続き、木剣を使った訓練を毎日欠かさず行っていたある日。


「そろそろ木剣を使った模擬戦をしてみましょうか」


お母さんの提案で、私達は初めての木剣を使った模擬戦をする事になった。


「それでは、今日の訓練は模擬戦をして終わりにしましょう。」


アル様が構えるのに合わせて、私も木剣を手にして構える。

お互い見合って…、 そして……、

2人が飛び出したのはほぼ同時だった。


アル様は間合いを潰すように踏み込み左から右への横薙ぎで斬り掛かってくる。


(アル様の動きが良く見える…。)


「甘いわよ…、フッ!」


その一撃を読んだ私は無意識に小さく呟くと軽く息を吐き、

アル様の横薙ぎを跳ね上げ、がら空きになった胴にスパンッ!と軽く振り抜く。


「うぐぅ…っ…。」


綺麗に胴で受ける事になったアル様は、

衝撃で横に仰け反り尻もちをついてしまう。


「はい!そこまで!」


お母さんの声で模擬戦が終わり、アル様は荒い息を吐いて座り込んでいた…。


(少し強かったかしら…? 今すぐ介抱してあげたいっ!)


「初めてにしては、二人とも良い動きでしたが…、

アル様は…、また動きが単調になってましたね…。


クリスはまだ余裕が有りそうね? 剣の扱いが上手くなってきたわ。」


(はっ!? イケない、いけない。)


続けてマリーがそう言うと、クリスは褒められて笑顔を見せる。


「2人ともよく頑張っています。 これからも訓練を怠らずに頑張りましょう。」


そう言って、お母さんは屋敷に戻っていくが、

下を向いて座ったままのアル様に手を貸して風呂にに連れて行く。


(落ち込んでるアル様を御慰めしなければっ!)



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