第38話 パンドラの掟



翌日、アルとクリスはカタリナを連れて冒険者ギルドに来ていた。


「あ、アル君、ちょうど良かったわ。 話があるのよ。」


ルティアに呼ばれて、アルがカウンターに向かう。


「おはようございます。ルティアさん。」


「おはよう、アル君。あのね…、

明日でギルドを休職して明後日から冒険者になるわ。」


「そうなんですか、わかりました。」


「それでね……、アル君のパーティーに入れて欲しいんだけど…、

まだ入れてくれる…?」


少し身じろぎして上目遣い気味に聞いて来る、

ルティアのロケットおっぱいがユサっと揺れる。

アル眼球に謎の力の負荷がかかり、視線が下がりそうになるが、

必死に堪えて、視線がブレブレにながらも、笑顔で返事する。


「もちろん。待ってましたよっ!これからよろしくお願いします。」


「そう、良かった……。こちらこそよろしくね!」


ルティアは、はにかんだ笑顔でアルに応える。


「ルティアさん、いよいよですね。」


アルと一緒に居たクリスも嬉しそうに声をかける。


「えぇ、明後日からよろしくね。それじゃ、仕事に戻るわね。」


「はい、また明後日。」


ルティアは、アル達に笑顔で手を振りながら自分の席に戻る。


「あ、アル兄さま、ど…どう言うことなのです?」


カタリナがアルに恐る恐る聞いてくる。


「あぁ、カタリナは知らないか。

もうずっと前から、ルティアさんをパーティーに誘ってたんだよ。

でも、受付嬢の仕事の都合もあるからと、加入は先延ばしになってたんだ。」


「そ、そうだったのですね。」


カタリナは納得したのか、それ以上は何も聞かなかった。


「じゃあ、今日、明日は、森でいつも通りにやっておこうか。」


「そうね、わかったわ。」 「は、はいっ!」


クリスとカタリナが返事をする。


その後、南の森での探索を翌日もこなして、ルティアが加入する日になる。



―――――



場所はルティアの家の前、

アルはクリスと2人で家の前にやってきて居た。


「あら、早いわね……。おはようっ」


ルティアが家から出て来る。


「おはよう、ルティアさん。」

「おはようございます。」


「ルティアさん、ギルドで登録だけして、

一度全員で集まって準備しようと思いますけど、それで良いですか?」


「えぇ、良いわよ。」


3人はギルドに向かって歩き出した。

ルティアは、アルとクリスを微笑ましく見ながら歩く。


ギルドに到着すると、空いてる受付に直行する。


「すいません、パーティー登録をお願いします。」


空いてる受付嬢に声を掛けると、こちらをみた受付嬢が、ルティアを見て驚く。


「ルティアさんっ!?」


「はいっ、ミーシャ、私は今日から冒険者として活動するので、

よろしくお願いしますね。」


「…わかりました。では、こちらの紙に記入をお願いします。」


ルティアは受付嬢から書類を渡され、サインをする。


「これでお願いします。」


そう言って用紙を渡すとミーシャさんが内容を確認する。


「パーティー【パンドラ】に参入ですね。

リーダーはアルさん、メンバーはクリスさん、カタリナさん、

そこに、ルティアさんが加入ですね。」


「はい。」


「わかりました。パーティーの加入処理は終わりました。」


「ありがとうございました。」


「じゃぁ、ミーシャまたねっ!」


ルティアが受付嬢のミーシャに手を振り、

3人は受付から離れそのままギルドを出ると、屋敷へ向かう。


「ルティアさん、冒険者の装備って揃ってるんですか?」


「まぁ、一応…、最低限はあるわよ。」


ルティアはアルの質問に答えるが、ちょっと不安そうだ。


「それじゃ、うちに帰ったら、倉庫を漁ってみようか。」


「そうね、そうしましょうか。」


そう言って3人は屋敷に戻って来た。


屋敷の入り口まで来ると、庭で訓練して居たであろうカタリナがこちらを見つけて小走りで走って来る。

その様子がもう主人の帰りを待ち侘びた子犬にしか見えなかった。


「あ…アル兄様!お帰りなさい!」


カタリナが笑顔で3人を迎える。


「うん、ただいま、カタリナ。」


アルは子犬を愛でる様に頭を撫でる。

ルティアはその様子を見て啞然とする。


(やだ!なに?この子! 可愛いんだけど…!)


ルティアが2人を見て悶えてると、クリスが近寄って来る。


「ルティアさん、言い忘れてたのだけれど…、パンドラには掟があるの。

パンドラのメンバーは、メイド服着用が義務なのよ。」


「そ、そうなの……?」


ルティアは笑顔を引きつらせながらクリスとカタリナに視線を向けると、

クリスはいつも通りだが、確かにカタリナもメイド服を着用している。


「おーい…、クリスぅ…、ルティアさんにサラっと嘘を教えるんじゃ無いよ!」


「そんなっ!アル兄様!嘘ではありませんよ!」


「ぇえ…?」


2人の会話を聞いてたアルがカタリナの頭を撫でながらツッコミを入れると、

予想外にも、カタリナから反論され動揺する。


「そうよ。 嘘では無いわ。言ってなかっただけだもの。」


そう言ってクリスはルティアに耳打ちする。


「アルは…、メイド服を着てるとテンション上がるわよ…。」


「………。 私…、着るわっ!」


ルティアはクリスの言葉を聞くと、即答で答える。


「え…?いや……、

無理しないで「無理じゃないわよ!着たいのよっ!」あ…はい…。」


「うふふ、ありがとう。」


ルティアの勢いにアルは押されて、承諾してしまうと、

ルティアは嬉しそうにカタリナと一緒に屋敷に入っていく。

そんな様子を見ていたクリスが、若干引いて居た。


「まさか…、あの一言で即決するとは…、どんだけアルの事を好きなのよ…。」


「クリスは…、一体ルティアさんに何を吹き込んだんだ…。」


「あら…?私はアルの性癖を言っただけよ?」


そう言ってクリスも、屋敷に入って行き、

呆然として残されたアルはポツリと呟く。


「………、やめろぅ…。」



―――――



翌日、 屋敷の倉庫を一人で漁るアルが居た。


「お…? 良いものがあった…。」


アルが、そう言って取り出したのは、白に近いグレーのロングコートの様な形状のローブだ。


「これを…、ルティアさんに羽織って貰おう…。」


何故アルは、わざわざそんな物を探して居たのかは、少し時を遡る。



―――――



アルを置いて、屋敷に入った三人は、屋敷内にある使用人用詰め所に居た。

その場を仕切る様にクリスが話始める。


「さて、ルティアさんのメイド服のコンセプトなんだけれど、

私は、アルの専属メイドで、カティはメイド見習いなのね。」


「クリスちゃんは、アル君の専属だったのね。」


「そうですわね。

因みに私は、アイゼンブルグ家のメイド長を務めている、マリーです。」


ルティアがクリスの言葉に納得していると、いつの間にかそこに居たマリーが、

肯定し、ルティアに自己紹介を始めた。


「あ、初めまして、ルティアと申します。」


「はい、よろしくお願いしますね。」

それでは本題ですが、お2人は、アル様の事はどう思われます?」


「も、もちろん、アル兄さまの事は大好きですっ!」


「私も非常に好ましく思っています。」


マリーの質問に二人が即答する。

そんな二人をニコニコと笑顔で見ながらマリーは続ける。


「そうですか……。まぁ、カティは、そうだと判っていましたけど…、

わかりました…。 これからも宜しくお願いします。」


「あ、はい…、こちらこそお願いします。」


マリーとルティアはお互いに頭を下げていたが、

クリスがコホンッと咳払いをして、話を戻す。


「私のは、標準メイド服の形に、専属なので、開いた首周りと胸元や袖口が、少々フリルが多くなってます。」


「なるほど、色気を控えめに出してる感じね。」


「そうですね。そして、カティのは、メイド見習い(子供用)なので、ワンピースタイプでスカートの丈が少し短めです。


「カタリナちゃんに似合ってて可愛いわね。」


「え、えへへ~」


「お母さんのは、メイド長仕様で、胸元など、素肌の露出を控えめにした、フレアロングスカートになって居ます。」


「清楚なイメージを保ちながら、大人の色気を感じさせますね。」


「ウフフ、ありがとうございます。」


「それで…、ルティアさんは、

使用人では無いから、身の回りの世話や、掃除をして貰う必要が無いのよ。」


「………、なるほど…?」


「そこで…、このメイド服を着て貰おうかと思ってます。」


クリスが取り出したメイド服は、

首周りから胸元に掛けて大きく開き、申し訳程度の肩袖に、

腰元迄ありそうな大きなスリットの入ったタイトなロングスカートのメイド服だった。

そしてそれを3人がかりでルティアに着せていく。

色気を前面に押し出したようなメイド服を、

某・不〇子の様なボディーを持つルティアは完全に着こなす。


ルティアはそれを着て、自分を見ながら気になる事を言う。


「ちょっと…、胸元が大きく開いてて…、

胸を強調し過ぎて「あ、アル兄さまが好きですね。」……良いわね。」


「少し…、タイトなロングスカートって…、

お尻を強調し過「アル様が喜びますね。」……良いわね。」


「ちょっとスリットが長すぎて…、

少し動くと下着が「アルの視線を釘付けにするわね。」……これにするわ。」


「あぅ…」


カタリナが困った顔で声を漏らすと、

クリスとマリーは視線を合わせて同時に思う。


(ルティアさん、チョロいわね…。)(ルティアさん、ちょろいですわね…。)


気を取り直してクリスは命名する。


「ルティアさんのメイドコンセプトは、名付けて『エロメイド』よ。」


「そ、その名付けは、要らなかったけど…判りました。」


「わ、私は、ルティアさん服良いと思いますよ……。き、着てみたいです。」


ルティアが、ちょっとヒキながらも了解すると、カタリナが羨ましそうに見る。


「カティは、もうちょっと大きくなってからですねぇ…。」


マリーが、カタリナの頭を撫でながら言い、

クリスとルティアも微笑ましそうに見る。


「さぁ、アルに見せに行きましょう!」


そう言ってクリスはルティアの手を引いて、屋敷の一室の扉を開く。

その部屋の中で、アルが椅子に座っていたが、

4人で入るとアルも立ち上がり、ルティアを見て視線を逸らしつつ言う。


「ルティアさん…、そのメイド服…似合ってますね…。」


そのの反応を見たルティアは、アルに引かれたと思って少し涙目になる。

そんなルティアにクリスは耳打ちする。


「ルティアさん…、アルの股間を見てください。

あれは、引いてるんじゃなくて、興奮してるのを隠そうとしてるだけです。」


ルティアは、アルの股間をみると確かに膨張している。

そしてアルの視線は謎の力と、戦っており、グリグリと動いていた。


「……あれ?これ、喜んでるって事?」


「そうです。あの反応は、ルティアさんのエロメイドに喜んでますよ。」


そう言ってクリスはアルの元へ歩いていく。


「それで……、その服で冒険に行くんですか……。」


少し辛そうなアルに、クリスはニヤリとして返答する。


「ええそうよ、冒険者仕様のメイド服で、

魔力を流せば強度が上がるように、改良もしてあるから完璧よ。」


「そうですか……、それならば安心…なのかな…?

おい…クリス、メイド服って言えば何でも有りだと思ってないだろうな?」


「あら? アルは全裸より着衣、チラ見えとかポロリの方が好きでしょ?」


「………。なんで正確に把握してるんだよ…。」


アルはとりあえず納得しかけて、クリスに文句を言うが、論破されてしまう。

改めてルティアをみるが、エロ過ぎて直視できずに目を反らしてしまう。

そんな様子にマリーはカティに仕事を言いつけて退室させると、


アルを3人で取り押さえて、順番に魔力注入されていった。



―――――



そして時は、アルが倉庫を漁って居るときに戻る。


アルは発見した、コートタイプのローブを持って、ルティアの所に行く。

そこにはクリスとカタリナも居た。


「ルティアさん、これ着て下さい。」


「え?メイド服じゃダメなの?」


アルが差し出したローブを見たルティアは驚く。


「いや、そのメイド服のままだと、絶対怪我をするんで…、俺が…。

せめて上からこれを羽織ってくれないと、危ないんですよ。俺が…。」


「アルが興奮するから?」


「クリス…、絶対解ってて言ってるだろ…。」


顔を赤くして抗議するアルにルティアはクスッと笑い、ローブを受け取る。


「判りました。それじゃあ、冒険の時は、これを上からは羽織るわね。」


そう言って、エロメイド服の上からコートを羽織ってくれるルティア。


(露出の多い服の上から、ロングコート…。これはこれでエロい。)


「後、俺が使ってたスタッフを魔法主体になるルティアさんに渡して、

俺はロッドにしようかなと思ってる。」


アルは、そう言って魔法を使う時に使っていたスタッフをルティアに差し出す。


「えぇ……、私が持ってて良いの?」


「俺も魔法メインだけど、近接寄りなのでスタッフだと取り回しが悪かったんですよね。」


「そうなんだ……。ありがとう、使わせてもらうわね。」


ルティアは大事そうに受け取ると、自前のマジックバックにしまい込む。


こうして全員の装備の確認してい行き準備がある程度整った。


「これからの予定なんだけど、4人で北東のダンジョンに行こうと思うんだ。」


アルは、今後の行動予定を皆に話した。


「まずはダンジョンで連携の練習しながら魔物に慣れてもらって、

そのまま進めるところまで進んでみたいと思うんだ。」


「そうね。私はそれで良いと思うわ。」


「わ、私、まだ自信ないですが……、つ、着いていきます。!」


「進めるところまで進むって事は、野営込みになるのね?」


「そうですね。なので村で食材を買ってから行こうと思います。」

「了解、それで良いわ。」


エレナ母さんの挨拶して、

いつの間にか現れたマリーさんとエレナの2人に見送られ出立する。

そのままアル達は、村の市場へ買い出しに行き、村を出た。

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