第29話 初めてのダンジョン

前話のあらすじ。


ルティアの家でお泊りした。

アルがとうとう精通したため、

そのまま、クリスとルティアに魔力注入☆


冒険者ギルドで、盗賊団出没注意のお知らせと、

ダンジョンの調査が終わり一般開放のお知らせを受ける。


実家に帰って、母のエレナとマリーとクリスに魔力注入☆

そして新しい朝を迎える。


――――――――――――




翌朝目を覚ますと、既に3人は目を覚ましていた。


「おはよう、アル。」


「おはようございます、アル様。」


「アル、おはよう、こっちに着て、お茶を飲みなさいな。」


クリス、マリー、エレナの順で声が掛かる。


「あぁ、おはよう、3人共もう起きてたんだね。」


エレナとクリスは薄いローブ姿で、マリーはメイド服を着ている。


「ではお茶を用意いたしますね。」


マリーがお茶を持ってきてそれを4人で楽しむ。


「ねぇ、アル。」


「なんだクリス?」


「朝まで激しくしてしまったけど大丈夫だったかしら?」


「あぁ、大丈夫だよ。少し寝たら、体力も回復したみたいだ。」


クリスは心配そうに聞いてきたが、返事をすると、はにかむ様に笑顔になった。


(犯し…じゃない、守りたい、この笑顔。)


エレナとマリーはそんな様子に微笑み、アルを優しく見つめていた。


ドアがノックされると部屋の外から声が聞こえてくる。


「失礼します。朝食の用意が整いましたのでお持ちしました。」


クリスが家を出る様になってから、新しく雇ったメイドだろうか、朝食をのせたワゴンをマリーに受け渡し退室していった。

そのまま4人で朝食を食べる。


「アル、3人とも妊娠した場合どうするの?」


アルはエレナの質問に食事をとめて考え込む。


「そうですね…、妊娠した場合は、頑張って責任を取るつもりはありますが…、

妊娠はしてませんね。」


「そうなの? 凄く激しく出されたから、できたかもって…」


アルは断言する様に言うが、不思議そうにエレナは返事を返す。


「クリスは知っているんですが、俺には魔力注入と言うスキルがありまして、

精液を魔力に変換して、相手へ付与するといった効果なんです。

その副次効果で避妊にもなるんです。」


「なるほど…、そうだったのですね…。」


マリーは納得した様に呟く。エレナは昨日のことを思い出して、確信したような表情をしていた。


「なるほど、昨日のアレはその効果だったのね。

アルに出されてから、魔力量が増えていたみたいで、不思議だったのよ。」


エレナは納得した様に何度も頷く。


「付与された魔力は時間と共に減少するらしいですが、一部は根付くらしいので、

何度もすると、総量が増えていくと思いますね。」


「出されたときの快感の波も、その効果なのでしょうか?」


アルの言葉にマリーが質問を続けてくる。


「あぁ…、俺の精液を注ぎ込むと…、

魔力に変換する際に催淫効果も出るようです…、その効果じゃないでしょうか。」


「やっぱりあれは、そういう事だったのね。」


「………、エレナ様…、やはり…。」


「ええ…、使えるわね…。」


エレナとマリーが視線を合わせて、なにやら納得してる横で、

クリスは不思議そうな顔をして問い掛ける。


「エレナ様、おかあさん、普通はそうじゃないの?」


アルはクリスの純粋な疑問に答えようとするが、エレナが代わりに答える。


「クリス、普通はそういう事にはならないのよ。」


エレナがそういうと、マリーが同意して言う。


「普通は、精液で満たされる感覚はありますが、

あのように快感の波が何度も押し寄せるような事にはなりませんね。

あの感覚…、凄く気持ちいいし癖になりそう…。」


マリーはうっとりとしながら呟く

「確かに……、

アレは私も初めて経験したけど…、正直…、快楽に溺れそうになったわね…。」


エレナも同意した様に、頬を染めて呟く。


「そうだったんだ…。

私はアルとしかしてないから、あれが普通なんだと思ってました…。」


クリスも少し照れたように答える。


「まぁなんにせよ、全員妊娠してない様で良かったわ…。

私も妊娠してたら、ジョシュアに説明が大変だったもの。」


「確かに…、わたくしも、モンドへの説明は困っていましたわね…。」


エレナとマリーは一安心と言った感じで言うと、クリスも続く。


「私はアルとの子供は欲しいですけど、

身籠ったらアルの冒険に付いて行けなくなりますね。」


「それは確かにそうね、

クリスが妊娠したら、1年は冒険はさせる訳にはいかないわね…。」


クリスの言葉にエレナは同意を示す。

最後の方の会話にはアルは黙って居る事しか出来なかった。


「まぁ、その辺はまた今度考えるとして、朝食を頂きましょう。」


エレナに促されて4人は朝食を楽しんだ。

その後アルとクリスはそれぞれ出発の準備を始める。



―――



アルも準備が終わり玄関へと向かうと、既に皆も集まっていた。


「お待たせしました、それでは行ってきますね!」


アルとクリスがエレナとマリーに言うと、

エレナは、いつもの様なドレス姿で貴族夫人といった感じでカッコイイ。


「ええ、行ってらっしゃい、気を付けるのよ。

それと…、近くに居るんだから、もう少し頻繁に帰ってきなさい。」


「判りました。 なるべく顔を見せる様にしますね。」


マリーはエレナのそばに控えると、礼を示す。


「お気を付けて。お帰りをお待ちしております。」


エレナとマリーの二人から口付けを貰い、家を出る。


――――


笑顔で手を振り屋敷を出ると、ひとまず冒険者ギルドに向って歩いた。

ダンジョンに行く前に、ルティアさんに一言告げておこうと思ったからだ。


ギルドに到着し中に入ると、ルティアさんが立っていた。


「おはようございます。」


アルは朝の挨拶をかわす。


「おはよう、アル君とクリスちゃん。朝早くからどうしたの?」


「はい、今日からしばらく北東ダンジョンへ行くので、その報告をしにきました。」


その言葉に周囲の冒険者が反応する。


「ほう…、噂のダンジョンか!」


「例の……黒髪メ……金…坊ちゃん…、どれ程の実力かな?」


「例のダンジョンか…、行ってみたいな…。」


そんな冒険者たちの言葉が途切れ途切れに聞こえてくる。

ルティアさんはそんな冒険者たちを横目で見ながら答える。


「ああ、あの北東ダンジョンね。

アル君達なら大丈夫だと思うけど、引き際を間違えないでね。」


「はい、油断しないように気を付けて行ってきます。」


「ルティアさん、行ってくるわね。」


クリスもいつもの調子で返事をすると、ルティアさんは微笑む。


「クリスちゃんもアル君をお願いね。」


「えぇ、任されたわ!。」


クリスは自信満々に返事をする。


「では、行ってきます。」


二人は挨拶をしてギルドを後にする。


冒険者ギルドを出て、ダンジョンへ向かう前に雑貨屋に立ち寄ったり、

屋台で買い食いをしてから、北東ダンジョンの入口へとやってきた。



―――――



北東ダンジョンの入口には仮設の小屋が建てられていて、

ギルド職員が冒険者カードの確認や、 入場時間や人数などの確認をしていた。

アルとクリスは順番を待ちカードを提示して中に入る。

入口は、灯りも無く暗く、足元もおぼつかないような下り坂になっていた。


中は通路のようになっており、幅も3mほどの広さだ。

中に入ると、壁が所々極僅かに薄っすら発光していて、完全な暗闇ではなく、

暗闇に目が慣れれば辛うじて行動出来そうな明るさだった。。


「行動は出来そうだけど、安全確保のために、灯りを常用するか。ライト、ライト」

アルは薄暗い中で躓いても行けないと思い、生活魔法のライトを使用する。

創り出された光源はアルの頭上、洞窟の天井付近に浮かび上がりアルを追尾する様に動く。

同様にクリスの頭上にもライトを配置する。

ライトの光は、直視しても眩しくない程度に明るく、周囲を照らし出す。


「これで見やすいな。」


「そうね。…だけど、遠くから私たちの居場所が判る様になるから、

考え物かもしれないわね。」


「そうだなぁ…。 でも、暗がりで行動して、

いきなり至近距離で気付くより、遠目に判る方がマシじゃないかな?

しばらくこのまま進んで、状況を見るか…。」


「そうね、判ったわ。」


その後、しばらく進むと、ゴブリンの声と気配が近寄ってくるのをクリスが察知した。


「アル、ゴブリンが3匹近づいてくる。」


「分かった。この場で迎え撃つ。」


「了解よ。」


アルとクリスが迎撃ポジションに着くとゴブリンがやってくる。

見た目は森に居たのと変わらないようだと思い、構える。

視認できる距離までゴブリンが近寄ってきた時に、クリスが声を出す。


「私がいくわ。」


「任せた。」


クリスは腰に差してるショートソードの柄を握り宣言すると、

鞘から抜きつつ駆け出し、一気に距離を詰め、

振りかぶったショートソードを右袈裟斬りに振り抜く。


先頭のゴブリンを一閃で切り捨てたクリスは、

振り抜いた勢いのまま、体を捻り、左足の廻し蹴りで、

切り込まれて棒立ちになっていた、2匹目のゴブリンの側頭部を蹴りぬいて、

ダンジョンの壁に打ち付ける。


最後、残ったゴブリンはクリスを認識して、手に持っていたこん棒を振り上げ、威嚇する様に声をあげる。 そこに、一歩踏み込んだクリスが切っ先をその胸に突き刺す。


「グギャ!? グ…」


胸に突き刺さったことでゴブリンは威嚇が悲鳴に変わり、力なく倒れる。

最初に絶命した一匹目のゴブリンから順に、靄になり消えていく。


極小さな石をアルが拾い、ライトの光にかざして透かして見ると、石の中で靄が動いてる様に見える。


「魔石かぁ、小さくて良く判らないが、地上のヤツと差は無い感じだな。」




「そうね、 私もダンジョンのを見るのは初めてだわ。」


クリスはマジッグバックから小袋を取り出し、石を入れる。

そのまま、ゆっくりと前進しつつ索敵を行い奥へと進むがゴブリンに出くわすことはなかった。


「…………。居ないな…。」


そう呟いたとき、クリスの真上から、何かが降り掛かろうとしてるのが見えた。


「クリス危ない!」


アルは叫びながらクリスへ飛び込み、

抱きしめたまま、押し倒す様に前方に転がる。


2人は急いで立ち上がり振り返ると、さっきまでクリスが居た位置に、

大人の腰の高さぐらいの、ブヨブヨと蠢く粘液の様な魔物が居た。


「こいつが、スライムか…。」

(某クエストのスライムと違って、キモイ方の奴か…)


「クリス、こいつの核をどうにかすれば、倒せるみたいだが、

粘液は武具を腐食させるらしいから、

武器でやるなら魔力を纏わせて保護しないとダメだな。

取り敢えず、魔力視で核を補足しながら、やってみるよ。」


アルはそう言うと魔力視で核の位置を補足しながら、右手に魔力を集め始める。


(粘液の中で核が動き回ってる様だが、これならどうだ!)

「アイスアロー、5連!」


アルの放ったアイスアローが、粘液に突き刺さると、その周囲をパキパキと音を立てて凍らせていく。

粘液の中を動き回っていた核が、凍り付いて行く粘液でその動きを止めた。


「核の動きが鈍った、クリス今だ!」


アルの声と共に、クリスは前に踏み出すとショートソードを突き出す。

粘液に突き刺さったショートソードに伝わる手ごたえをクリスが感じた瞬間、

核を砕かれたスライムが蒸発して靄となって消えていった。

スライムの居た場所に、ゴブリンのより一回り大きい魔石が残されていた。


「ゴブリンの魔石より大きいって事は、スライムの方が単体では強いのかな?

普通は魔法のみでやっつけるみたいだしなぁ。」


「その様ね、スライムは粘液のせいで斬撃等の攻撃は、

殆ど効かないし、核が小さくて狙い難い。

アルみたいに凍らせられれば、楽なんでしょうけど…、

普通は厄介でしょうね…。」


アルの言葉にクリスは考察する。


「そう言えばスライム、落ちてくるまで全然気づかなかったな。」


「そうね、動いてない時は気配察知にも、引っ掛からないのかもしれないわね。」


「そうなると…、魔力察知で、警戒した方が良いか…。」


アルは顎に手を当てて、今後の探索を考えた後、クリスを見る。


「クリス、今後は、メインで気配察知を頼む。

俺は気配察知が使えないから、魔力察知で周囲を探るよ。」


「ええ、わかったわ、任せて。」


二人はそう言うと、先へ進むことにした。


その後もゴブリンやスライムと遭遇するも、クリスが危なげなく討伐して進む。

やはり、動いてない時のスライムは気配察知で見逃しやすいようで、

魔力察知でフォローしていく。

クリスはスライムにも慣れてきたのか、

凍らせる必要もなく、一撃で核を破壊できるようになっていた。

一人で、危なげなく処理していくメイド服のクリスを見て、

落ちた魔石を拾ってバッグに仕舞うだけのアルが呟く。


「うちのクリスさんが…、……優秀過ぎる件に付いて…。」


アルの呟きを聞いたクリスが、後ろを歩くアルをジト目で見ながら言う。


「なにバカな事言ってるの? 私一人で対処出来なくなったらアルの出番よ。

貴方が居るから…、私が動けるんだから…。」


「あ…、はい…。」


クリスの語尾がだんだん小さくなるが、しっかり聞き取れたアルは恥ずかしくなり、話を終わらせた。

その後も、ゴブリンやスライムが出てくる度に、

クリスが討伐し、アルが魔石を拾った。

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