第26話 依頼報告と素材



行きよりものんびり帰り、5時間程でブルク村に到着した。


時刻は昼下がり、もう2時間もすれば日が落ちてくるだろう頃合いに、

冒険者ギルドに入りギルド内を見渡す。


依頼終わりっぽい冒険者がチラホラ寛いでる中、

眼鏡の受付嬢のルティアさんと目が合うと、

書類整理をしていた手を止めて、笑顔で出迎えてくれた。


「アルさん!クリスさん!おかえりなさい!」


「「ただいま戻りました。」」


「報告は、こちらで聞きますね。」


ルティアさんは、そう言ってカウンターから出て来て、2人を奥の個室に案内して、椅子に座るように促す。


2人は促されるまま個室に入り、椅子に座ると、ルティアさんが向かいに座り、

直後に紙の束を持った受付嬢の制服を着た女性が

ルティアさんの後ろの机の椅子に座り、ルティアさんが話し始める。


「では…、まずは…、この地図で調査範囲を示してもらえますか?」


「えーと…っ、ここが南西の村で、その南の森で…、この範囲ぐらいかな?

それで、このラインぐらいで森の雰囲気が、様変わりするんですが、

……理由は後で説明しますが、この辺りから深層側へ、おそらく中層ですかね。

そちらへ少し進入しました。」


アルは地図を指差し、地図をなぞりながら、大体の範囲を説明する。


「中層に…、はい…、問題ありません。続けて下さい。」


ルティアさんは、地図を見ながらそう言ったので、アルは続けて話す。


「南西の村の南門から、森に入り、そのまま奥まで進みました。

進んでいくと、森の雰囲気が変わる境界線の様な物を感じ、

そこを浅い部分と中層との境目だと判断し、そこから東側周辺を調査しました。」


探索ルートを地図上で捕捉しながら、言葉を続ける。


「初日はソコで、調査を終了し、翌日に、境界から、西側を調査した後、

この辺りから深部側へ侵入して、大体この辺りを探索して戻りました。」


そこで、言葉を区切り、ゴブリンとオークの魔石を一つづつ出して言う。


「討伐した魔物は、全て合わせて、ゴブリンが82体、オーク7体です。

討伐証明の魔石は後程すべて提出しますね。」


アルは地図上を指差しながら説明を続ける。


「深部側へ侵入した理由ですが、

初日の探索でこの辺りに来た時に、

深部側の森から、ゴブリンが逃げるように浅部に出てきました。

その直後、棍棒持ちオーク4体が出て来た為、これを討伐。

その後、南西の村に戻りこの日の探索終了です。


村長に途中経過として報告した所、

村長の話ではここ数年、オークを見たことが無いという話でした。」


アルがそう言うと、ルティアさんは頷き言う。


「確かに、南西の村に周辺でここ数年はオークの目撃報告はありませんね。」


「次に2日目です。浅層の未探索範囲を午前中ぐらいで探索後、前日にオークに遭遇したこの辺りから深部側へ侵入、大体この辺りの中層付近で、

杖持ちオークと棍棒持ちオーク2体と遭遇、これを討伐しt」


「っ! ちょっと! 待って下さい!」


「っ! ……何か不備が有りましたか…?」


ルティアさんが慌てた様子で、

話を遮ってくるので、何か不備が有ったのかと心配になる。


「アルさん、オークシャーマンと遭遇したんですか?」


「えっと…、……杖持ちオークの事ですか?」

「はい、その個体です。」


「えっと…、はい…、……遭遇したので討伐しました…。」


「……遮ってしまい申し訳ありません…。続けて下さい。」


慌てた様子のルティアだったが、

アルとの温度差を感じ、冷静になり報告を続ける様に言う。


「はい…、………えっと…、オーク達を討伐後、しばらくその周囲を探索して、

異常はなさそうだったので、探索を打ち切り帰還して村長に報告しました。」


「これは村長からお預かりした書類です。」


アルが報告を終え、

クリスが預かった手紙をルティアに渡すとその場で開き目を通して行く。


「……ありがとうございます。依頼完了を受理します。」


ルティアさんは手紙を女性に渡す。


「それでは魔石等の換金をしていきましょうか。」


ルティアさんが、そう言うと、後ろに控えていた女性に指示を出して、

魔物の魔石をその受付嬢に全て提出する。


そして、戻って来た受付嬢から受け取った2つの袋を机の上に置くと口を開く。


「では次に報酬をお渡ししますね。」

そう言って、大小の袋を一袋ずつ机に置くと説明を始める。


「まず小さい方の袋ですが、これは依頼達成報酬で、銀貨8枚が入っております。

そして大きい方の袋ですが、これはゴブリンの魔石82個で銅貨82枚、

オークの魔石6個で大銅貨2枚の6体分で12枚となっております。

そしてオークシャーマンの魔石が銀貨1枚です。

以上ですが、振込みにしますか?」


「はい、僕とクリスで半分で入金して下さい。」


貰った袋をルティアさんに預けると女性が受け取り再度手続きに退室した。


「それで、ルティアさん。 さっき杖持ちオーク…、

オークシャーマンが気になってたみたいですが、何か理由があったんですか?」


ルティアさんは頷き口を開く。


「えぇ…、まず、そもそもとして…、

オークは、単独のオークで、Eランク冒険者2〜3人で相手するのが、

一般的と言われてます。


オークが4〜5匹になると、

Dランク冒険者の3〜4人のパーティーで比較的安全に対処できると言われてます。


「な、なるほど…。」


「そして杖持ったオークシャーマンは、平均5体以上のオークを引き連れていて、

Cランク冒険者で3ー4人、Dランクなら5〜6以上で対処しないと、

危ないと言われてます。」


ルティアの説明にクリスが納得した様に言う。


「それだと今回は…、偶然にも、ゴブリン達が囮になって、

オークシャーマンの群れを、分断した形になってた見たいね。」


「おそらく…、そういう事でしょうね。」


「確かに…、あの杖オーク、魔法を相殺して来たりして、厄介だったからなぁ。」


「そもそもの話、

Fランクの2人で、取り巻き込みのシャーマンを討伐してるのがおかしいのよ? 

他所に話しても、信じて貰えないわよ。 私なら信じないもの。

今更だけど、無理しないでね…?」


ルティアの念押しにアルが頷いてると、クリスが思い出した様に声を上げる。


「そう言えば、オークの素材は買い取って貰えますか?」


ルティアさんは笑顔で答える。


「ええ、勿論よ。あちらに解体場がありますので、そちらへ行きましょうか。」


「あ、ルティアさん、ちょっと待ってください、

そのままだと、持って帰れなかったので、ある程度切り分けてあるんですよ。」


アルがそう言うと、ルティアさんは驚きの声を上げる。


「え? そうなんですか?」


「はい、オークは大きいので、そのままだと、持って帰れなかったので、

クリスと2人で解体しました。」


ルティアさんは感心したように頷いて言う。


「なるほど、お肉以外の素材はどこが有りますか?」


「オークの牙と、えーっと…、………、コレ…、です…。」


アルはオークの牙を出した後、語尾が小さくなりながらも、恐る恐る、

オークの逸物を取り出すが、ルティアは平気な顔をして、

オークの逸物を鷲掴みすると、眼鏡をクイッと直して、目の前に掲げ観察した。


「これも凍らせてあるんですね。おかげで鮮度も良いので、良い値段付きますよ♪

牙と逸物はどうしますか?ギルドで買取します?」


ルティアさんは、逸物を顔の横に持ち上げニッコリと微笑みながらアルに言う。


(………、テンション上がってるんだろうけど…、絵面が酷い…。)

「お、お願いします。」


「はい、承りました! 後程、査定してから、お支払いしますね。」


「は、はい。」


アルは、引き気味に返事をすると、

ルティアさんは、ササッと素材をまとめていく。


「そう言えば、お肉なんですけど…、

この凍らせた状態なら、

ギルドに売るより、お店の方が高く買い取ってくれますよ?」


内緒話の様に、声のトーンを落とし、前屈みになって、教えてくれるルティアさん。

机に押し付けられて、圧迫された御胸様が苦しそうです。救出してあげたい。


人命救助の精神で、ガン見してると、クリスに足を蹴られた。 痛い…。


「お店の伝手が無いから、買ってくれるところを、探すのに苦労しますね。」


悩みながら言うと、ルティアさんが声のトーンを落としたままで言う。


「今日は私、もうすぐお仕事終わるので…、良ければお店紹介しますよ?」


「本当ですか? 助かります。」


アルが、即座に食いつき、クリスが言う。


「それなら…、直接紹介してもらった方が、話が早そうなので、

お仕事が終わったら、一緒にその店に行きませんか?」


「ええ、良いですね!是非行きましょう!」


ルティアさんは、嬉しそうに手を叩いて言う。

そんなルティアさんを見て二人は、顔を見合わせて笑うのだった。


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