第22話 調査依頼。



(さて、そろそろ良い時間経ったかな。もう俺もみんなも汗だくだしなぁ。)


アルはそう考えて、クリスに声を掛ける。


「おーい!そろそろ終わりにしようー!」


すると、2人は打ち合いを止めてこちらを向き返事をする。


「ええ…、そうね。」


「ん…、……わかった。」


2人は返事をしてこちらに歩いてくると、ライザが口を開く。


「私達の模擬戦、見ててどうだった?」


そう聞くと、アルは笑いながら答える。


「凄い良かったよ。2人とも良い動きだったね。」


2人は褒められて少し照れながら、お互い顔を見合わせる。


「……それにしても…、……クリス強い…。」


ライザがそう言うと、クリスも同意する様に頷く。


「ライザも凄かったわよ。

アルを相手にしてたら、100本ぐらいは取ってたぐらいに、本気を出したわ。」


「ん…、……でも…、……負けた。」


「おい…、そこで俺を、引き合いに出さないでくれよ…。」


ライザは少し残念そうだけど楽しそうに言うと、アルが抗議入れる。


「また機会があればやりましょう。」


クリスがそう言うと、ライザは嬉しそうに頷く。


(うんうん、仲良き事は美しきかな。)


アルは満足そうに2人のやり取りを見ていると全員の姿に気付く。


(ブハッ!みんな汗だくで服が透けてるじゃないか。)


ケイは下着を付けてないのか薄っすらピンクのポッチが見えていて、

ライザは服が破れてポロリしそうになって居る。

アルは、慌ててみんなから視線を逸らして口を開く。


「と…、とりあえず全員集まってっ!」


アルはそう叫ぶと、みんなを近くに呼び集める。汗と汚れを飛ばす様にイメージして。


「クリーン、……からの、ブリーズ!」


アルが魔法を使うと、全員の服や髪が綺麗になり汚れが落ちる。


(クリーンで汚れを浮かせて、ブリーズで飛ばして落としたけど、

なんか…、みんな…、……良い匂いだな。)


アルは、みんなから香る良い匂いをクンカクンカして、少しドキドキしていると、

クリスが呟く。


「……アルのえっち…。」


「ええ!?」


アルが驚いていると、ケイが口を開く。


「あはは、アルは私達の服や下着を見てドキドキしてるんでしょ?」


「うぐ…」

(しょうがないじゃないか!男の子なんだものっ!)


心の中で言い訳していると、ケイが追い打ちを掛けてくる。


「じゃぁ、おねーさんがお礼におっぱい見せてあげよっかなー。」


「ん…、……それなら私も…。」


「ええ…、ちょ、ちょっと…「ちょ、ちょっとケイっ!ライザもっ!

アル君が、困ってるからっ!」」


ケイとライザが服を捲るそぶりを見せ、

アルが戸惑いつつも、内心で喜びそうになった所で、アミが止める。

ストップが入ったことで、

アルの上がりかけたテンションが、スンッっと墜落する。


「そうね…。アルが喜ん……困るから止めてもらいましょうか。」


クリスは、アルの内心を正確に分析するが、アミに同意する。

そんな時、眼鏡の受付嬢のルティアさんが声を掛けてきた。


「皆さーん、けっこう時間が経ってますけど、大丈夫ですか?。

訓練は大事ですけど、無理はいけませんよ。」


「あ…、はい。大丈夫です。」


アルはそう言うと、クリスが口を開く。


「そうね…、そろそろ解散しましょうか。」


「ん…、……わかった。」


ライザはそう言うと、みんなを見回して口を開く。


「……じゃあ…、……また…。」


「アルさん、クリスちゃんまたねっ!

私達はイード村に帰るけど、また逢ったら宜しくね。」


「アル君にクリスちゃん、改めて…、助けてくれてありがとう。

協力できることがあれば、いつでも力になるよ。それじゃまたねっ!。」



「はい、こちらこそ、またお願いするよ。」


続いてアミ、ケイの順で、挨拶をして返事をすると、3人は去って行った。


アルとクリスも、片づけをして、

冒険者ギルドを出ようとしたところで、ルティアに呼び止められる。


「アル君、クリスちゃん、【パンドラ】のお二人は、

ランクアップの基準を満たしてると、承認されましたので、

更新の為、ギルドカードの提出お願いします。」


「あ、はい。お願いします。」


アルがそう言うと、ルティアはカードを魔道具にセットして更新する。


「………これでOKです。ギルドランク【F】に、昇格おめでとうございます!

一応言っておきますと…、

10歳以下の方は、なかなかGからFへの承認が、降りないんです。」


「え…? そうなんですか?」 


「そうなのね…、GからFなんて直ぐだと思ってたわ。」


ルティアは苦笑いを浮かべながら答える。


「ええ、一応規則的には大丈夫なんですけど、

10歳以下の方は、お使い依頼等の街中での依頼を受ける方が多いので、

依頼達成数等の基準を満たして、本部に申請しても、

否決されることが多いのです。」


「なるほど、そういう事ですか。」

(割と真っ当な理由だったな。)


アルは納得したように頷く。


「パーティー【パンドラ】さんは、常設依頼とは言え、

村の外に出て薬草を集め、ゴブリンを複数匹討伐していたのと、

今回の異常発生の発見の貢献と、適切な対応が評価されたのだと思います。」


ルティアさんは、声のトーンを落とし、そう評価基準を説明してくれた。


「あ、この話は一応非公開なので、他言無用でお願いしますね。

お二人だから、大丈夫だと思ってますけど。」


小声で言って、唇に人差し指を当てて可愛くウィンクしてくるルティアさん。


(やだ可愛い、綺麗なくせに可愛いとかズルイ…。)


アルがそんな事を考えていると、クリスが口を開いた。


「ええ、わかったわ。」


「はい、ありがとうございます。それではまたのお越しをお待ちしていますねっ!」


ルティアさんはそう言うと、笑顔で送り出してくれた。


アルとクリスは、冒険者ギルドを出て宿屋に向かうのだった。



―――



次の日、宿屋の食堂で朝食をとりながら2人は会話をしていた。


「さて、今日はどうする?」


アルがそう聞くと、クリスは少し考えて口を開く。


「そうね…、とりあえず、冒険者ギルドに行って、

依頼をチェックしてみ見ましょうか?」


「そうだな。何か良い依頼があれば受けてみるか」


アルは、そう返事をすると朝食をたいらげる。


「じゃあ、行こうか」


2人は席から立ち上がり、宿屋の食堂を後に冒険者ギルドに向かった。


――――――



冒険者ギルド



アルとクリスが冒険者ギルドに入るとギルドは賑わっていた。


「うーん、この時間は混んでるなぁ。」


アルがそう呟くと、クリスも同意するように頷く。


「それに…、昨日の討伐隊の人達が、帰ってきてる様ね。」


「あぁ…、なるほど。」

(確かに、怪我した人とかもチラホラ居るなぁ)


2人がそんな事を会話してると、眼鏡の受付嬢のルティアさんが声を掛けてくる。


「あ、アルさんとクリスさんっ!おはようございます。」


ルティアさんが元気よく挨拶をすると、2人も挨拶を返す。


「「おはようございます。」」


2人が揃って挨拶を返すと、ルティアは嬉しそうに口を開く。


「今日はどういったご用件でしょうか?」


「随分と人が多いですけど、討伐隊でも戻ってきたんですか?」


アルがそう聞くと、ルティアは苦笑いを浮かべて答える。


「あ、はい、昨日の討伐隊が帰ってきてまして、

森の掃討は完了したとの報告を聞いてます。」


「あ、そうなんですね。」


アルは納得して頷くと、ルティアさんは続けて口を開く。


「ええ、ただ…、洞窟の方…、

こちらはどうやら、新しいダンジョンだったようで…、

引き続きゴブリンの掃討と、調査を合わせて行う予定ですね。」


「なるほど、それでこんなに人が居るんですね。」


「はい、そういう事ですね…。」


ルティアさんがそう答えると、アルは後ろに居たクリスに視線を向ける。


(どうする?)

(そうね…、良いんじゃない?)


アルが視線で問いかけると、クリスも視線交わし、頷いて返事をする。

そんな2人のやり取りを見ていた、ルティアさんは察した様に口を開く。


「あの…、お二人はダンジョンの調査には、参加できませんよ…?」


ルティアさんの言葉に、アルとクリスの首がグリンと向き直る。


「えっ? ダメなんですか?」


「はい…、元々、ダンジョンの調査にはEランク以上っと、制限があるんです。

あとパーティー人数も4人以上に限られます。


調査が終わった後なら、その制限も解除される可能性も有りますけど、

それも調査次第ですねぇ。」


「なるほど…、確かにFランクの2人じゃ参加できないか…。」


「残念ね。けど…、更に子供じゃ当然ね。」


2人はそう言い残念そうにする。


「まあ、そういう訳なので、ダンジョン調査は、他の冒険者に任せてくださいっ!

ダンジョンは素材も少しは取れますけど、魔石の回収がしやすいので、場所によっては大人気ですよ。」


アルはルティアの言葉に興味を覚え質問を重ねる。


「それは何か理由があるんですか?」


「ダンジョンの魔物は、ダンジョン内で倒されると、消滅して、

魔石を高確率で落とすそうなんです。 

ですので、倒した魔物の体内から取り出す必要が無いのです。

それと偶に素材の一部も落とす様で、これをドロップと言いますね。」


「へぇ~!」


ルティアの説明に、瞳をキラキラさせながら聞いている様子を見て、

クリスとルティアは、『まるで子供みたいだな』っという感想を抱き、

『あぁ子供だったわ』と思い直した。


「またダンジョンに、入場できるようになったら、お知らせしますね。」


ルティアさんはそう言うと、右手の人差し指を立ててウィンクする。


(……可愛い)


アルがそう思って頷くその様子をクリスはジト目で見て居た。

続けてルティアさんが資料の束を取り出して言う。


「それでお二人は…、何か依頼をお探し…と、いう事で、宜しいですか?」


「はい、何か良い依頼があれば…と、思ってまして。」


アルの言葉に、ルティアが資料を捲り始め、捲る度にゆさゆさと揺れる胸を、

アルは目で追いかけていた。

そんなアルをクリスがジト目で見て居ると、ルティアさんが口を開く。


「んー…、これなんてどうでしょうか?」


ルティアさんが、そう言いながら資料の束から抜き出したのは、

南西の村の近くにある森の調査依頼書だった。


「これは?」


アルがそう尋ねると、ルティアさんは笑顔で答える。


「はい、この依頼は定期的に、領主様から発行される依頼でして、

領内の各村の周辺調査する依頼ですね。


今回は南西の村の、南側の森の浅い部分に、ゴブリンが巣を作ってないか、

または危険な流れの魔物が居ないかを、調査して報告して貰います。

可能であれば処理、危険過ぎたり、規模が大き過ぎたりした場合は、

対策を立てる為の情報を持ち帰ってもらう…と、言うものです。」


(なるほど、父様が定期的に、調査依頼を出してるのか…)


アルがそんな事を考えていると、ルティアさんが続けて口を開く。


「この依頼は、領主側の発行ですから、報酬は良いと思いますが、

素行の宜しくない方には、回せませんので依頼板には、貼り出してないんです。」


「なるほど、じゃあ…、この依頼はランク制限もないのか。」


アルがそう呟くと、ルティアさんは少し困った様な笑顔で言う。


「はい、この依頼はランクよりも、素行と能力を重視してまして、

きちんと調査をしてくれて、ある程度自衛能力があり、

危険な時には撤退の判断を下せる。

と、言った具合に、他にも判断基準は有りますが、

ギルド側で判断して、直接お声掛けさせて頂いてます。」


続けてルティアは言う。


「通常であれば【パンドラ】さんには回せませんが、

そこは私が大丈夫だと判断して紹介させて頂いてます。」


「なるほど、そういう事か。」


アルは納得すると、クリスに視線を向ける。すると、クリスも頷いて答える。


「そうね、わかったわ。その依頼受けさせて頂くわね。」


「そうだな、ルティアさんの期待を、裏切らないようにしないとな。」


「ありがとうございます。では手続きをしますので、お待ちくださいね。」


ルティアさんは手続きを始めるのだった。

立ったり座ったりと、動く度にゆさゆさと揺れる胸を、

アルは視線だけで追いかけていた。


クリスのジト目に気付かずに……。


ルティアは、見られてる事には気付いてるが、

咎める所か、少し余分に揺らして見たりして、

アルの反応を楽しみながら、笑みを浮かべ作業を続けた。




――――――


明日の12時に投稿します。

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